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第16回 博士課程後期への進学 ?博士号取得への道?

2004.12.08

先日,たまたま研究室外のある方から博士課程後期進学の相談を受けましたので,今日は博士学位の話をしたいと思います.

現在,博士課程後期3年次に在籍しているBu君と武田君の博士号の審査が始まっています.
複雑システム工学専攻では,11月,または12月の初旬から,学位の実質的な審査を開始します.
一般的な基準は,学術雑誌等への掲載論文3編(掲載決定を含む)+国際会議発表論文3編程度です.
事情によって,若干,変動することもありますが,このレベルをクリアすればほぼ確実に学位審査を始めることができます.
次のステップは,12月中旬から下旬に行われる「予備審査」です.
主査,副査,および専攻の教員が参加し,審査会が行われます.
内容は,自分の研究をまとめた学位論文の内容に関する研究発表+質疑応答です.
この予備審査に合格すると,本審査がはじまり,公聴会,研究科教授会での審議を経て,3月末の学位記授与式にて博士(工学)の学位が授与されます.

学術雑誌等への掲載論文3編というのがかなり高いハードルになりますが,卒業論文や修士論文の内容も
学会に投稿可能ですので,B4やM1の間から研究テーマを決めて取り組めば十分可能なレベルでしょう.
また国際会議発表論文3編については,財政的な援助が受けられないとかなりのコストを要しますが,国内で開催される国際会議を狙えばほとんどの場合,研究室の研究費から旅費を支給することができます.
英会話能力さえ,身に着けていれば比較的,容易に達成できると思います.

もし,将来の仕事として研究職を希望するのであれば,博士号の取得を考えてみるといいと思います.
将来,大学や高専,公立の研究所等での研究者を目指す場合は,博士学位取得が必須条件になりつつあります.
また例外はありますが,修士修了の人が企業の研究所に配属されるケースは年々,少なくなってきています.
博士修了であれば,希望する研究所で面接をする場合が多いので,入社前に配属される研究所を自分で選択することができる可能性が高いと思います.
すでに企業に勤務されている人が博士号取得を目指すケースも増えてきています.
その場合は,社会人特別選抜というシステムがありますが,働きながら学位取得を目指すのは一般的にはなかなかたいへんなことですね.

もちろん,博士号を取得できたからといって,それだけで将来が保障されるわけではありません.
研究を通じて獲得した自分自身の能力,スキル,経験などをフルに活用して,自分自
身で将来の道を切り開いていくことになります.
もちろんどのような道に進んでも同じことが言えると思いますが,かなりたいへんなことも経験するでしょう.
また,条件の良い研究職につきたければ,当然,博士号取得基準(学術雑誌等への掲載論文3編(掲載決定を含む)+国際会議発表論文3編)を超える研究業績が望ましいです.
どんな仕事でも同じかもしれませんが,いろんな意味で常に他人と比較され,時間と戦うことが要求されます.
ただ,自分が行った研究の結果,論文がacceptされたり,世の中の役に立つような成果が挙がったりしたときの,喜びややりがい,達成感は,ほかに比較するものがないほど大きいです.

結局,自分自身の価値観(どのようなことにやりがいを感じ,どのような仕事が好きかということ)が重要だと思います.
私自身もそうですが,決められた仕事をこなすだけでなく,常に自分自身で新しい研究を進めていくことができるのに,大きな魅力を感じる人もいるでしょう.
そういう人は研究者を目指すのがいいと思います.

広島大学だけでなく,他大学でも博士課程後期進学率は高まりつつあり,日本もいずれアメリカのように一人前の研究者としてふるまうには「Dr.」という称号が必要不可欠になると予想されます.
いいか悪いかの議論は別にして,大学院部局化以来,時代がそういう方向に向かっていることはたしかでしょう.

日本学術振興会の特別研究員や21世紀COEのリサーチ・アシスタントなどに採用されれば,給料をもらって研究することも可能です.
研究が好きで,将来,自分の力で新しい研究がしてみたい人は,博士課程後期進学のことを考えてみるのもいいと思います.