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第697回 乳児自発運動を構成する『基底運動』の発見と発達障害の超早期スクリーニングへの挑戦

2023.07.07

生体システム論研究室筋電グループを中心に取り組んできた乳児自発運動解析に関する研究が科学研究費補助金(以下,科研費)の「挑戦的研究(開拓)」に採択されました.

科研費は,人文学,社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり,基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」であり,ピアレビューによる審査を経て独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです.
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/

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2023年度科学研究費補助金 挑戦的研究(開拓)(R5~R8年度)
研究課題名「乳児自発運動を構成する『基底運動』の発見と発達障害の超早期スクリーニングへの挑戦」
■研究代表者:辻 敏夫
■研究分担者:古居 彬,曽 智,島谷 康司, 土居 裕和, 秋山 倫之,竹内 章人
■配分額(予定):25,610千円(直接経費:19,700千円,間接経費:5,910千円)

■研究概要:
世界的に発達障害児の数は増加傾向にあり,その症状の改善には早期介入が必要不可欠である.乳児期の自発運動には中枢神経系の発達特徴が現れるため,これを評価することで早期に発達障害を発見できる可能性があるが,現状の自発運動評価はと特別なライセンスを有する専門家の目視観察が必要であり,全ての児に対して検査を実施することは不可能で一般の臨床には普及していない.そこで本研究では運動学と情報科学を融合したアプローチにより,自発運動を構成する根本的な運動因子,いわば『基底運動』の発見と抽出に挑戦する.そして自発運動を包括的に評価可能な新手法を創出し,発達障害の超早期スクリーニングの実現というパラダイムシフトを目指す.まず,ビデオカメラとマットレス内蔵の音響センサを用い,乳児の自発運動を非拘束/非接触に計測可能な新しいマルチセンシング手法を確立する.次に,独自の深層潜在空間モデルと統計的因子分解に基づき,乳児の基底運動を特定する機械学習法を開発する.そして,基底運動の経時変化と発達障害との関係を明らかにするとともに,基底運動評価インデックスを提案し,世界初の超早期発達障害診断支援システムの実現を目指す.
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これまで筋電グループやMEグループで取り組んできたいくつかの研究テーマを総括するような研究内容になっています.しっかりと研究を進め,最終的には臨床現場だけでなく,日常生活において役に立つような革新的な技術を確立したいと思っています.どうぞよろしくお願いします.