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第623回 【研究紹介】生体電気信号に基づくゼブラフィッシュの情動推定

2021.07.02

生体システム論研究室では,ホームページの「研究紹介」で最近の研究トピックスの紹介をおこなっています.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research

感性ブレイングループでは曽 智先生を中心にゼブラフィッシュの研究に取り組んでいますが,ゼブラフィッシュチームの研究成果であるScientific Reports (SCI, IF=3.998)に掲載された論文内容を「研究紹介」ページにアップしました.この論文は,2017年度に博士課程前期を修了した松野 一輝君の修士論文の内容に対応します.感性ブレイングループのみなさん,おめでとうございます!

日本語:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research/kansei-brain-group/16636
英語:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research/en-kansei-brain-group/16638

<論文内容>
魚類の恐怖や不安,快などの情動状態は,一般的にビデオによる行動解析で評価されています.これに対して,我々は水槽の底に設置した126個の電極を用いて呼吸波と呼ばれる生体電気信号を測定できるシステムを提案し,カメラレスで運動と呼吸のリアルタイム解析を実現してきました.本研究では,提案システムで得られた運動指標と呼吸指標を組み合わせてゼブラフィッシュ(Danio rerio)の情動状態の識別を試みました.実験では,警報フェロモンとエタノールを用いて,恐怖/不安状態と快状態をそれぞれ誘起しました.計測された生体電気信号を解析した結果,ゼブラフィッシュの情動状態は運動指標と呼吸指標の主成分空間上で表現できることが明らかになりました.次に,本研究室で開発された統計モデルを内包するニューラルネットLog-linearized Gaussian mixture networkを用い,5秒ごとに3つの情動状態を識別し,識別精度の指標であるFスコアを求めました.その結果,通常状態は0.84,恐怖・不安状態は0.76,快状態は0.59という中から高程度のFスコアが得られることを確認しました.これらの結果は,生理的指標と運動指標を組み合わせることで魚の情動状態を推定できる可能性を示しています.

<関連文献情報>
Measurement of Emotional States of Zebrafish through Integrated Analysis of Motion and Respiration Using Bioelectric Signals
Zu Soh, Motoki Matsuno, Masayuki Yoshida, Akira Furui, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 11, Article number: 187, doi.org/10.1038/s41598-020-80578-6, Published online: 08 January 2021. (SCI, IF=3.998)