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第601回 生命の不思議を“ピンポイント照射”で明らかに
~マイクロビーム照射を用いて脳神経系の発生や運動機能を解明~

2020.12.18

生体システム論研究室の修了生で,現在,国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学部門高崎量子応用研究所プロジェクト「マイクロビーム生物研究」で主幹研究員を務めている鈴木芳代さんらとの共同研究で,感性ブレイングループの曽智先生と修了生の山下 浩生君が取り組んでいた研究論文がBiology誌の特集号“Brain Damage and Repair: From Molecular Effects to CNS Disorders(脳の損傷と修復: その分子効果から中枢神経系における障害まで)”に掲載され,2020年12月4日に群馬県庁の記者クラブ(刀水クラブ)において記者発表を行いました.

生命の不思議を“ピンポイント照射”で明らかに
~マイクロビーム照射を用いて脳神経系の発生や運動機能を解明~
2020年12月5日 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構ホームページ
https://www.qst.go.jp/site/press/46413.html
2020年12月5日 広島大学ホームページ
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/61821
https://www.hiroshima-u.ac.jp/adse/news/61891
2020年12月7日 東京大学大学院新領域創成科学研究科ホームページ
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/3787.html

■本研究成果のポイント:
・厚みがあるメダカや線虫の個体の局部を、神経機能に影響しないように麻酔をかけずに、さまざまな照射サイズで刺激できるマイクロビーム局所照射技術を開発
・メダカ初期胚で、損傷を受けた細胞の割合や数が脳神経系の発生過程の中断を決定していることや、線虫の全身屈曲運動が中枢神経から独立したメカニズムでも制御されていることを明らかに
・マイクロビームが、既存の技術では実現できなかった未知の生命現象の解明に有効なことを実証

■掲載論文:
Targeted central nervous system irradiation of Caenorhabditis elegans induces a limited effect on motility
Michiyo Suzuki, Zu Soh, Hiroki Yamashita, Toshio Tsuji, and Tomoo Funayama
Biology, volume 9, issue 9, 289, DOI 10.3390/biology9090289, Published: 14 September 2020 (SCI, IF=3.796)
URL: https://www.mdpi.com/2079-7737/9/9/289
PDF: https://www.mdpi.com/2079-7737/9/9/289/pdf

また,以下のテレビニュースや新聞,ネットニュースで取り上げられました.

生体細胞 正確に照射
~重粒子線マイクロビーム技術改良
~高崎量子研 生命現象解明に活用
上毛新聞 12月6日朝刊

量研・東大・広島大、生物の脳神経系の発生制御や全身の運動制御のメカニズムの一端を解明することに成功
日本経済新聞ホームページ 2020年12月5日
https://r.nikkei.com/article/DGXLRSP601247_04122020000000
https://release.nikkei.co.jp/attach/601247/01_202012041439.pdf

今後は,感性グループのD3の坂本一馬君が取り組んでいるように,本論文の成果とコネクトーム(connectome)に基づく人工ニューラルネットワークの機械学習シミュレーションを組み合わせることにより,線虫の神経回路の機能の解析を進め,生物の脳神経回路のしくみに迫れればと思っています.