本研究室では学会での研究発表に積極的に取り組んでおり,国内外で開催される学術講演会において毎年30〜40件の学会発表を行っています.
学会にはその分野の専門家や他大学の研究者が数多く参加しており,貴重な意見や最新の情報を得ることができます.
また,若手研究者や学生にとっては自分自身を成長させるための経験にもなり,外部の研究機関の研究者と知り合いになって自分の世界を拡げるチャンスでもあります.
先週,研究室のメンバーが以下の学会で研究発表を行いました.
・ 発達神経科学学会第5回大会
・ 第25回計測自動制御学会中国支部学術講演会
以下に発表者が作成した発表議事録を掲載します.研究がある程度進んだ人は,積極的に学会発表に挑戦するとよいと思います.
【学会情報】
学会名称: 日本発達神経科学学会第5回大会
開催日程: 2016年11月26日(土)-27日(日)
開催場所: 東京大学本郷キャンパス 武田先端知ビル
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発表者:川嶋 克明
動画像解析に基づく乳幼児ハイハイ動作の経時的発達評価
【質疑応答】
Q1. ビデオカメラの位置は決まっているのか.
A1. はい,ビデオカメラの位置と向きは固定しており,撮影は毎回同じ環境で行っています.
Q2. 評価指標はどのように決めたのか.
A2. 医学的知見や理学療法士の方の意見を基に決定しました.
Q3. 被験者の中に障害児は含まれているのか.
A3. はい,被験者16人の内2名が医師により障害を疑われています.今後は障害児と健常児の比較を行っていく予定です.
Q4. 今回の結果は従来知見と一致しているのか.
A4. まだ,従来知見との比較は行えていませんが,理学療法士の方の所見とはおおよそ一致しています.
【感想】
2回目のポスター発表ということもあり,リラックスして発表をすることができました.また,今回の学会では多くの専門家の方々とお話することができ,今後の課題も明確になりました.
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発表者:木下 直樹
新生児General Movements評価支援システムの精度検証
【質疑応答】
Q1. 斜めから撮影した動画像でも解析はできるのか.
A1. 解析はできます.しかし,右半身が胴体に隠れるなどして,正確な評価指標値は得ることができないので真上から撮影する必要があります.
Q2. 評価指標はどのように決定したのか.
A2. 医学的知見をもとに決定しました.
Q3. 各GMsでどの評価指標が大きく影響するか解析しているのか.
A3. 現時点では解析はできておりません.医師にそのような情報を提示できれば有用であるため,今後解析を進めていきたいと考えています.
Q4. 実際の医療現場で利用できるレベルに達しているのか.
A4. 現状では,達していません.異常運動の識別率が90%以上になれば医療現場で利用できると考えています.
Q5. 発達が進んだ児にも利用できるシステムなのか.
A5. いいえ,本システムはGMsを対象としており,GMsが消滅した児には利用できません.
【感想】
初めての学会で緊張しましたが,自分の研究成果を発表することができ良い経験となりました.ただ質問に答える際に,言葉がつまり返答が少し遅くなった時があったので,今後の発表では改善していきたいと思います.
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【学会情報】
学会名称: 第25回計測自動制御学会中国支部学術講演会
開催日程: 2016年11月26日(土)
開催場所: 広島大学東広島キャンパス 教育学部
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発表者:延川 智範
確率ニューラルネットを用いた体調急変予測法の提案
【質疑応答】
Q1. 学習時間を考慮した理由はなぜか.
A1. 今は研究段階であるため計算コストを考慮した解析を行いました.しかしながら実際には学習時間よりも識別精度が重要であるため,今後はパラメータ選定法の再検討を行なう必要があると考えています.
Q2. 体調急変を起こした生体信号をみると,より簡単なモデルでも予測が行えるのではないか.
A2. おっしゃる通りで今回の波形に関しては簡単なモデルでも予測が可能であるといえます.そのため今後は被験者数を増加することで一見して分からない潜在的な異常パターンでも予測可能かどうか検討していきたいと考えております.
【感想】
初めての学会発表でしたが,おおむね普段通りの発表ができました.しかしながら,質疑応答は少し緊張してしまったため,今後はより端的に回答できるようにしたいです.
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発表者:稲葉 知彦
加圧測定方式自動血圧計を利用した非駆血収縮期血圧推定法
【質疑応答】
Q1.最適化をする意味はなにか
A1.方程式の最適解によって,最高血圧を求めております.
Q2.最適解の探索に時間がかかるのではないか.
A2.現在の手法では時間がかかるため,計算手法を変えることによる時間短縮などを検討しております.
Q3.最適解が得られない場合があるのか.また最適解である判断はどう行うのか
A3.大域的最適解が得られず,局所解が求まる場合があります.また今回は大域解であるかは判断せず,一回目の算出値を推定値としております.
Q4.血管剛性の実測値はどのように計測しているか
A4.血圧計で測定した最高血圧を用いて推定された剛性値を実測値としております.
【感想】
初めての発表であったため緊張して少し早口で話してしまい,発表時間が余る結果となった.今回は質疑に対して,短く意図を捉えた回答が行えなかったため,今後気を付けていきたい.
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発表者:田中 敬士
オシロメトリック法を利用した非侵襲血管粘性計測に基づく動脈硬化ハイリスク群のスクリーニング
【質疑応答】
Q1.駆血をしない識別のため,微弱な範囲でしか評価できていないのではないか.
A1.ezFMDに比べ血圧計測の回数は少ないことでの情報量の減少は考えられますが,駆血自体には情報が含まれていないため影響はないと考えております.
Q2.病院にあるような血圧計で実験を行なっているが,家庭にあるような血圧計との違いはあるのか.
A2.サンプリング周波数などの違いによる影響は考えられます.しかし,どちらの血圧計も計測原理はオシロメトリック法であるため,スクリーニングは可能と考えております.
Q3.健常群とハイリスク群の年齢差は問題ないのか.
A3.年齢も動脈硬化のリスクファクターの一つと考えられており,現在のシステムでは,リスクの有無による識別しか行えておりません.そのため今後,年齢が揃うように被験者を集めることを検討しております.
【感想】
ゆっくり話すことを意識していたが,時間を気にしてしまい早口になってしまった.時間を気にせず発表できるスライドの作成を心掛けたい.質問に対しては,返答に情報量を増やし,もっと詳しく回答できるようにしたい.
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発表者: 萩山 直紀
脈拍触診が可能な電磁誘導型簡易連続血圧計の開発
【質疑応答】
Q1. 被験者のデータを事前に得ておく必要はないのか.
A1. 本実験ではleave-one-subject-out交差検証を用いており,その結果高い相関を得られておりますので現時点ではその必要はないと考えています.
Q2. 較正モデルは他の部位で適用しても上手く較正できるのか.
A2. 現在足での計測を行っておりますが,波形がやや乱れることを確認しており,そのまま適用することは難しいと考えています.
Q3. Hammerstein-Wienerモデルを使用した理由は何か.
A3. 非線形性を表現できるモデルであるためです.
【感想】
初めての学会発表であったが,概ね普段通りに発表できた.意識はしていたが少し早口であったので,次回はゆとりを持った分かりやすい発表にしたい.
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発表者:江藤 慎太郎
3Dプリンタを利用した5指駆動型筋電義手の開発とバイオミメティック制御の導入
【質疑応答】
Q1.インピーダンスフィルタにおける慣性,粘性,剛性のパラメータはハンドの固さと関係しているのか.
A1.いいえ.パラメータは人腕の慣性,粘性,剛性とトルク間の関係を実験より測定したものを利用しており,ハンドの固さとは関係ありません.
Q2.手を回転させた状態での握りなど,筋電センサの位置が本来とずれるが問題ないか.
A2.現状では識別に問題が生じると考えられます.ただし,LLGMNでは動作のあいまいさの指標を算出することができるため,誤動作を防止することもできます.
【感想】
単に質問に答えるだけで,質問者の本当に聞きたいことを判断する前に回答してしまった.もう少し落ち着いて対応したい.
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発表者:古居 彬
信号強度依存ノイズを利用したリアルタイム人工筋電位信号生成法の提案と無線通信への応用
【質疑応答】
Q1.人工筋電信号において,周波数情報はどの程度再現可能なのか.
A1.今回の発表内容では,計測信号の周波数情報の再現は考慮できておりません.
Q2.周波数成分を再現するために,今後どのような工夫を考えているのか.
A2.筋電センサ側で周波数情報も取得して送信できれば,再生成の際に利用できると考えております.
Q3.今回の研究成果を今後どのように応用していくのか.
A3.多数の筋電センサを用いた無線の筋電義手制御などに応用していきたいと考えております.
【感想】
実際に筋電センサを用いたデモを行うことができたため,聞き手の興味を引くような発表ができたと思う.デモの際に多少のトラブルが生じたが,普段通り落ち着いた発表ができた.少し発表時間を超過してしまったので,
次回からは短い時間で自分の研究の魅力が伝えられるような発表を心がけたいと思う.
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発表者:橘高 允伸
筋電義手トレーニングへの応用を目的とした没入型VR環境下における人間のリーチング運動の解析
【質疑応答】
Q1.没入型環境下でのシステムでは頭をよく動かしていたが,リーチング運動やトレーニングへの影響はあるか.
A1.没入型VR環境下ではVR酔いする場合があるので,長時間のタスクを行う場合には影響が出てくると考えております.
Q2.位置認識が難しいとはどういうことか.
A2.軌跡データで,上からリーチング軌跡を見ると比較的真っ直ぐリーチングを行えていますが,横から見ると軌跡が曲線になっており特に奥行きの認識が難しいと考えています.
【感想】
発表は概ね普段通りにできましたが,時間を気にして途中で早口になった部分があったと感じた.参加セッションでは全体的に質問が少なかったが,自分の発表についても質問が少なく寂しく感じたので,もっと自分の研究を魅力的に紹介できるような研究発表にしていきたい.
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発表者:笠原拓也
腹腔鏡手術における全天球画像の有効性の検証
【質疑応答】
Q1. 被験者は医学生でなくて良いのか.
A1. 医学生でない人も腹腔鏡手術に慣れていないという点で医学生と同じであると考えています.
Q2. 従来の腹腔鏡とHMDを繋げることは可能か.またそのシステムと比べてどの様に有用なのか.
A2. 可能です.視野が広くなる点において有用だと考えています.
Q3. ダヴィンチと比べてどの様に有用なのか.
A3. 視野が広い点で有用だと考えています.加えてダヴィンチは保険が効かないため手術代が高く,7件に1件機材トラブルが起きていることから,人による手術が多く行われています.
Q4. 広視野角は腹腔鏡手術において必要なのか.
A4. 手術の初めの病変を視認する際に有用だと考えています.
【コメント】
C1.首振りよりも目線で視野を変えられたら有用だと思うので検討してみてください.
【感想】
発表は,丁寧に説明することができたと思います.質疑応答は,質問の意図が分からない時があったのでこれからそのような場合には無理に回答せず,質問者に質問内容を確認しようと思いました.
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発表者:静野大樹
透明疑似指を利用した触感テクスチャ評価装置の開発
【質疑応答】
Q1.手以外の部分でも接触面は計測できるのか?
A1.同様の方法で撮影可能です.
Q2.接触面変化のみで評価できるのか?
A2.詳細な評価には接触面だけでなく,複合的な指標から評価が必要です.
Q3.ゲルの押さえつける力は何N?押付力により感性の変化はあるのか?
A3.2Nです.押付力により感性も変わってくるため,力を変化させた場合での検証も行いたいです.
【感想】
発表に関して,はじめはゆっくり喋ることができていて良かったと思うが,後半になるに連れて少し早口になってしまった.今後は最後までペースを崩さないことを意識して発表を行いたい.触覚に対してまだまだ勉強不足な点もあるので,今一度知識を深めたいと感じた.
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発表者:関塚良太
バーチャルリアリティを用いた油圧ショベルの操作トレーニングシステム
【質疑応答】
Q1.全天球カメラの映像では立体視することができないのではないか.
A1.今回の提案システムでは立体視することはできません.
Q2.実機とラジコンでは動特性が異なるが,再現する必要はないのか.
A2.本システムはレバーをどう倒すとどう油圧ショベル動作するかを確認するなど初期的な操作訓練を目的としているため,動特性の差異はそれほど問題にはならないと考えています.
Q3.レバーにフィードバックは返ってくるのか.
A3.今回のシステムではフィードバックは返ってきませんが,今後実装することを考えています.
Q4.ジョイスティックではなくもっと直観的な操作が行えるデバイスの方がいいのではないか.
A4.実際の油圧ショベルを直観的な操作が行えるデバイスで操作する研究は行われていますが,使いやすさの点ではレバーより優れているものの,疲れやすさの点ではレバーに劣っているため,現在の油圧ショベルはレバー方式が主流です.そのため,本システムではジョイスティックを使用しております.
Q5.提案システムの評価はしたのか.
A5.今回はシステムを作っただけであり,評価はしていません.今後,本システムの実用性を検証していきたいと考えております.
【感想】
発表については,特に詰まることなく話すことができたが,練習の時よりも発表時間が短かったので,もう少しゆっくり話せれば良かったかと思った.質問については,自分なりに考えてちゃんと答えることはできたと思うが,予想していなかった質問もあったので,それをこれからの研究に活かせればと思った.
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発表者:常安孝輔
空気圧ゴム人工筋を利用した建設作業支援スーツ
【質疑応答】
Q1.装置の支援は疲労を軽減するのか,それともより重い物を持てるようになるのか.
A1.装置着用により,主に脊柱起立筋の筋負担が軽減されていることがわかりました.よって,疲労を軽減することができると考えています.
Q2.筋電位や重心動揺の標準偏差の測定結果については,検定をするべきではないか.
A2.今後,被験者を増やし,検定を行っていこうと考えています.
Q3.従来の人工筋を用いたアシストスーツと比べて新規性は何か.
A3.人工筋を用いたアシストスーツはON/OFFの制御のみでした.本研究ではPWM制御によりON/OFFを繰り返すことにより,人工筋をON/OFF以外の状態にすることを可能にしました.
Q4.人工筋の制御方法を詳しく教えてほしい.
A4.伸縮量センサにより着用者の姿勢を検知し,姿勢に合わせて高速弁のON/OFFを制御することにより,人工筋を制御しています.
【感想】
質疑応答で,応答に戸惑ってしまう場合が多かった.今後の発表時にきちんと応答できるように今回の経験を活かして生きたい.
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発表者:松野 一輝
小型魚類の呼吸波を用いたオンラインカメラレス遊泳運動計測システムの開発
【質疑応答】
Q1. 温度変化による呼吸回数の変動はないのか.
A1. 従来研究において,温度変化による魚の呼吸回数の検証は行われていないものと考えられます.
Q2. 水温が変化してもシステムの有効性には影響しないのか.
A2. 実験条件において,水温は一定に保っていないため,水温が変化してもシステムの精度は保たれると考えられます.
Q3. 魚一匹だけの行動と魚群についての行動について、それぞれ分析した方がいいのか.
A3. 今回は一匹だけのものについて結果をお見せしましたが,魚群における評価指標の結果は変化する可能性が考えられますので,今後魚群における結果についても検証していきたいと思います.
【感想】
初の学会発表でしたが,程よい緊張感をもって発表できた.しかし,時間を意識して早口になってしまったため,今後は時間にもう少し余裕を持つような発表資料にしていきたい.