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第160回 今年こそ(?)-早期論文作成のすすめ- (その2)

2008.06.16

研究を進めていく際には,

という部分と全体の問題を同時に考慮する必要があります.

日々の課題はどうしても後者に関する問題解決が主となり,部分を積み上げていくことのみに気をとられがちですが,部分を寄せ集めても全体にたどり着くわけではなく,研究の大前提である前者については意外に考察があいまいなままになっていることがあります.
論文の締め切り間際に慌てないためにも,頭の中やスライド,あるいは話し言葉のレベルで考えている研究全体の構成を,具体的,かつ詳細に検討し,早い時期に書き言葉の形で論文化してみてはいかがでしょうか.

  1. 余裕を持ったスケジュールで早目に着手.
    研究結果が揃う前でも論文執筆開始.
  2. 目次,流れ,ページ割を決定.
    論文全体のあらすじをおおよそ決定する.
  3. 従来研究として引用する文献の整理と見直し.
    必要に応じてサーベイを追加.
    参考文献のイントロをチェックし,従来研究の流れや自分の研究のオリジナリティを最終確認.
  4. 論文の狙いとそれに対応する結論を明確にし,最も主張したいことをまとめる.
    3~4文程度で,アブストラクト風に.
  5. 「はじめに」を作成する.
    研究の必要性,従来研究の動向,従来研究の問題点,それを解決するための核となるアイデア,本論文の内容,本論文の成果(従来研究でできなかったことが解決できるか)といったポイントを明確にし,オリジナリティが十分かどうか,きちんと筋が通っているかどうかをチェックする.
    必要に応じて3. から5. を繰り返す.
  6. 提案する方法や開発するシステムの明確化.
    研究のポイントを踏まえ,具体的な理論やアイデアを説明する.
  7. 6. の妥当性や特徴を客観的に説明するために必要な実験計画と予想される結果.実験結果からはっきり言えることをきちんと把握しておく必要あり.
  8. 6. の有用性を証明するための実験計画と予想される成果.
    できるだけ現実的な場面を想定し,従来法との比較や統計的検定などを用いて提案法の有用性を示す.

以上の内容を早い時期にまとめ,必要に応じて提案する方法や開発するシステムを改良したり,実験計画を変更したりすれば,自分の研究のポイントを明確にした状態で研究に取り組むことができると思います.

オリジナリティを強調する重要なポイントはひとつで十分です.
その代わり,そのポイントについては圧倒的な結果を示したいですね.
早目に論文作成に着手し,今年こそ(?)修士論文,卒業論文の早期完成を達成しましょう.
そして,その論文を学会誌や学術雑誌に掲載してもらえるよう,ぜひがんばってください!