科学研究費助成事業(科研費)の国際共同研究加速基金(海外連携研究)は,学術研究の発展に必要な国際共同研究を実施することにより,独創的,先駆的な研究を格段に発展させることを目的とするもので,国際共同研究の基盤の構築や更なる強化,さらには国際的に活躍できる若手研究者の養成を目指しています.
2023年度の国際共同研究加速基金(海外連携研究)に以下の研究課題が採択されました.これまで筋電グループを中心に取り組んできた乳幼児発達研究を臨床研究や国際研究に応用するという内容です.
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2023年度国際共同研究加速基金(海外連携研究)(R5~R10年度)
「自閉スペクトラム症児の乳幼児期身体運動発達研究と早期スクリーニング技術開発」
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23KK0203/
・研究代表者:土居 裕和
・研究分担者:辻 敏夫,島谷 康司,古居 彬,雲居 玄道,許 自強
・配分額:20,800千円(間接経費含む)
・研究概要:
自閉スペクトラム症(ASD; Autism Spectrum Disorder)は,世界的に有病率が上昇の一途を辿っている発達障害である.ASDの治療法は未確立だが早期発見・早期介入により予後が改善することが知られているため,ASD早期スクリーニング技術開発が重要課題となっている.本研究では,日仏の研究者から構成される国際共同研究体制によりASD遺伝的ハイリスク児を縦断追跡することで,
(i) ASD児における身体運動と運動制御に関与する神経生理機能の初期発達過程の解明,
(ii) 発達初期の身体運動・生体情報に基づく,ASD早期スクリーニング技術開発
を実現する.
日本側は,独自の乳児期身体運動マーカーレス解析・生体信号解析技術を有する.一方の仏側国際共同研究者らは世界的にも数少ないASDハイリスク児縦断研究フィールドを確立している他,情報技術を用いたASDの客観的症状評価で先駆的業績をあげている.問題意識・専門領域を共有する両国の研究チームが互いの研究資源を共有することでASD研究・臨床を飛躍的に発展させるとともに,本研究期間終了後も長期にわたって利用可能な認知神経発達科学・生体医工学の国際共同研究拠点を確立する.
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本研究の海外パートナーであるソルボンヌ大学ではASDハイリスク児の縦断研究フィールドを確立しており,ASD児における母子関係の初期発達等の分野で大きな成果を挙げています.ソルボンヌ大学が推進する小児精神医学研究に,日本側独自の乳幼児身体運動・生体情報の計測・解析ノウハウを導入することでASD研究を一層発展させることが期待できます.
しっかりと研究を進め,最終的には臨床現場だけでなく日常生活において役に立つような革新的な技術を確立したいと思っています.どうぞよろしくお願いします.