研究紹介

末梢血管剛性は痛み関連領野の脳活動と主観疼痛強度に正相関する

メディカルエンジニアリンググループ

過去数十年にわたり,数多くのPETやfMRI研究で痛覚に関連する脳活動が計測され,Pain matrixという疼痛刺激に対して特異的に応答する脳ネットワークが発見されました.本研究では,22人の被験者に対して4段階の痛み刺激を与え,fMRI環境下で脳活動,生体信号(連続血圧,指尖容積脈波,心電位),および,主観評価を計測しました.そして,生体信号から末梢交感神経活動の指標である指尖の末梢血管剛性βartを求め,脳活動とβartが共変する脳領域をパラメトリックモジュレーション解析により同定しました.その結果,Pain matrixに含まれる外側・内側前頭前野と腹側・背側前帯状皮質はβartと有意に相関する活動を示すことが明らかになりました.また,βartと刺激強度の間にはr = 0.44 (p < 0.001),βartと疼痛強度の主観評価の間にはr = 0.43 (p < 0.001)という中程度の有意な相関があることを発見しました.これらの結果は,末梢血管剛性により疼痛を客観評価できる可能性を示しています.

関連文献情報

Peripheral Arterial Stiffness During Electrocutaneous Stimulation is Positively Correlated with Pain-related Brain Activity and Subjective Pain Intensity: An fMRI Study
Toshio Tsuji, Fumiya Arikuni, Takafumi Sasaoka, Shin Suyama, Takashi Akiyoshi, Zu Soh, Harutoyo Hirano, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Masao Yoshizumi, Atsuo Yoshino, and Shigeto Yamawaki
Scientific Reports, volume 11, Article number: 4425, doi.org/10.1038/s41598-021-83833-6, Published online: 24 February 2021. (SCI, IF=3.998)