Yuichi Kurita, Biological Systems Engineering Lab.
確率共鳴現象を用いた触覚知覚感度向上デバイス
研究背景確率共鳴(Stochastic Resonance)現象とは,非線形のシステムにおいて,ノイズにより微弱な信号の検知能力が向上する現象であり,人間の視覚,聴覚などの知覚能力も確率共鳴により向上することが知られています. 触覚においても,知覚できないぎりぎりの強度の振動を指先などに与えることにより,触覚知覚感度が向上することが確認されています. 触覚知覚感度向上デバイスは,精緻な操作が必要だったり,疾患や環境の影響により知覚感度が鈍ったりするような状況において役立つことが期待されます. そこで我々は,Sensorimotor enhancerとしてウェアラブルデバイス化や,医療用機器への応用を行っています.
研究内容概要
我々は,これまでに指先装着型のプロトタイプや,や低侵襲手術用外科鉗子への応用を行っています.
振動発生器を指先または鉗子に装着することできわめて微少な物理振動を発生させ,それにより皮膚内の触覚受容器を振動させます.
タッチテスト,二点弁別閾テスト,表面粗さ知覚テストなどの結果,最大で20%程度の触知覚感度の向上が見られることを確認しています.
注目すべきは,確率共鳴ではいっさいのセンシングを必要としない点です.
これにより振動子をひとつ装着するだけ,というきわめてシンプルな構成でデバイスを製作できます.
代表的な特許・論文
- Yuichi Kurita, Minoru Shinohara, and Jun Ueda, Wearable Sensorimotor Enhancer for Fingertip using Stochastic Resonance Effect, IEEE Transactions on Human-Machine Systems, Vol. 43, Issue 3, pp. 333-337, May 2013
- Yamato Sueda, Minoru Hattori, Hideki Ohdan, Hiroyuki Egi, Hiroyuki Sawada, Jun Ueda, Toshio Tsuji and Yuichi Kurita, Improvement of tactile sensitivity by stochastic resonance effect - Applications to surgical grasping forceps -, 35th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC'13), pp.4601-4604, Osaka, Japan, July 3-7, 2013
- 栗田雄一, 末田大和, 辻敏夫, 服部稔, 澤田紘幸, 惠木浩之, 大段秀樹, 竹村裕, 上田淳, 確率共鳴現象を利用した触覚知覚感度向上に関する研究−加算ネットワークモデルに基づく知覚向上効果の考察− 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2013 講演論文集,2A1-A14(1)-(4),2013.5.23-25