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コラム

第724回 生体システム論研究室ホームページ2024

2024.04.19

新メンバーを迎え,研究室ホームページを2024年度バージョンに更新しました.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/

研究室ホームページの最上部と最下部には,以下に示す7つのメニュー項目が用意されています.

■研究室概要:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/about
生体システム論研究室とは
研究室の特色
5つの研究テーマ
研究グループ
研究業績
共同研究
倫理委員会承認済み研究
■メンバー:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/people
教員
協力教員
秘書
共同研究者
博士課程後期
博士課程前期
学部生
インターンシップ生
■研究紹介:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research
代表的な研究の紹介
■研究業績:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications
国際学術雑誌
国内学術雑誌
国際会議
国内講演会
著書(英語)
著書(日本語)
解説
博士学位論文
修士論文
卒業論文
招待講演
受賞
記事
放送
展示会・見学会
特許
所属学会
学会等委員・役員
■プロジェクト:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/project
現在進行中のプロジェクト
過去のプロジェクト
■ニュース:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news
更新履歴
トピックス
コラム
■スケジュール:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/cal

生体システム論研究室ではホームページから研究室に関する情報をできるだけ多く発信したいと考えており,授業期間中に実施している全体ゼミのあとに掲載内容の更新を行っています.研究室ホームページの管理・運営は,筋電グループM2の李 昊南君が担当してくれています.全体ゼミ議事録でお知らせしたニュースのうち公開可能な情報は李君がホームページにアップしてくれ,ホームページ全体が研究室のインターネットアーカイブとして機能しています.

特に,研究業績のページではこれまでに発表した研究論文(学術雑誌論文,国際会議発表論文),解説,記事,book chapterなどの情報を閲覧することが可能で,生体システム論研究室の過去の研究成果の全貌をオンラインで参照することができます.一部の研究論文についてはPDFをダウンロードすることもできますので,研究室に新加入したメンバーにとっては自分の研究テーマに関連する過去の論文を調べるときにたいへん便利です.また,右上にある検索窓を使ってキーワードで検索すれば,そのキーワードを含むすべての研究業績情報を一覧することができます.研究室外の方も自由に閲覧可能で,生体システム論に関連した研究に取り組んでおられる方々の参考になればと思っています.

生体システム論研究室ホームページに関してお気づきの点,修正点等の情報がありましたらぜひお知らせください.今年度もさまざまな研究室情報を発信できればと思っています.

第723回 令和5年度(2023年度)生体システム論研究室卒業式/修了式

2024.04.12

令和5年度(2023年度)広島大学学位記授与式(卒業式,修了式)は,2024年3月23日11時から東広島運動公園にて行われました.2023年度の卒業・修了生は,学部2,343人,専攻科13人,大学院1,345人,合計3,701人(うち留学生283人)でした.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/82157
https://www.facebook.com/HiroshimaUniv/videos/1091256218745448/

午後からはまず広島大学サタケメモリアルホールにおいて,工学部第二類(電気電子・システム情報系)・大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム合同の学位記授与式と祝賀会が行われました.その後,広島大学おもしろラボにおいて生体システム論研究室の学位記授与式を行いました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/memorialhall/about
https://omolab-en.hiroshima-u.ac.jp/

生体システム論研究室の学位記授与式では,卒業生,修了生に卒業証書/修了証書が授与され,和やかな雰囲気で卒業式/修了式を行うことができました.

お祝いの花束を贈ってくださった本研究室修了生の鈴木芳代さん(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構),会場の準備を一手に引き受けてくださった野口友枝さん,豊田紀子さんに感謝します.

卒業生,修了生のみなさんがそれぞれの道で活躍されることを祈っています!

第722回 生体システム論研究室,2024年度(令和6年度)のキックオフ!!

2024.04.05

生体システム論研究室,2024年度(令和6年度)のキックオフ!!

広島大学生体システム論研究室は2024年度全体ゼミを開始しました.
2020年からはじまったコロナ禍もようやく終息し,今年に入って日経平均株価が1989年のバブル期につけた史上最高値を更新するなど,日本経済も活気を取り戻しつつあるようです.生体システム論研究室も研究室メンバー全員で力を合わせて,活発に研究・教育活動に取り組んでいきたいと思います.

2024年3月23日に令和5年度(2023年度)広島大学学位記授与式(卒業式)が行われ,本研究室から博士課程後期2名,博士課程前期9名,学部8名の計19名が修了・卒業しました.
まず,博士課程後期修了生の高橋 秀暢さん,Priyanka Ramasamyさんには博士(工学)の学位が授与されました.高橋さんは引き続き広島国際大学保健医療学部医療技術学科で教育・研究活動に取り組みます.Priyankaさんは栗田研究室の研究員として研究を続ける予定です.

次に博士課程前期修了生には修士(工学)の学位が授与されました.修了生の金子 健太郎君,木村 友哉君,小濵 遼平君,齋藤 環希さん,福田隼也君,干場 滉太君,松浦 詩乃さん,松瀬 亮汰君,丸子 紗季さんは,就職のためそれぞれの勤務地に旅立ちました.

学部卒業生の井上 勝矢君,大本 僚輝君,岡部 陸君,木吉 達哉君,斎藤 颯君,野中 啓太郎君,藤原 幸多朗君,宮崎 裕貴君には学士(工学)の学位が授与されました.全員,本学大学院先進理工系科学研究科博士課程前期に進学し,引き続き生体システム論研究室で研究を継続します.

また,2022年10月から本研究室の研究員,2023年4月からは選抜助教(特任助教)を務めていた許 自強先生が就職のため中国に帰国しました.今後は上海の大学で研究・教育活動を開始しますが,本研究室でも協力教員として研究活動を継続する予定です.

研究室を離れた人たちとちょうど入れ替わるようにして,新しいメンバーが本研究室に加入しました.
まず博士課程前期には周 贇豪君(山口大学卒業),菊池 一生君(弘前大学卒業),胡 馨予さん(中国青島理工大学卒業)の3名が入学しました.周君はMEグループ,胡さん,菊池君はヒューマンモデリンググループに所属して研究活動を開始します.

そして13名の学部4年生が研究室に配属されました.まず辻・曽研究室には,倉岡 優作君,谷﨑 恭祐君,中山 凱世君,永島 悠佑君,東谷 悠吾君,松田 怜君,松原 正裕君,家成 瑛久君の8名が,また栗田研究室には岩原 栞太君,河辺 旺佳君,寺本 陽向君,中野 裕一君,森川 夏未さんの5名が配属されました.

2024年度も素晴らしいメンバーが研究室に集まってくれました.最初はいろいろと戸惑うこともあるかと思いますが,臆することなく何事にも積極的に取り組んでいくとよいでしょう.研究生活を通じて,新しい経験が力となって蓄積されていくことを実感できると思います.各研究グループのみなさん,共同研究者のみなさん,サポートをよろしくお願いします.

2024年度の研究室メンバー構成は,教員3名,協力教員3名,秘書2名,博士課程後期学生11名,博士課程前期学生25名,工学部生13名の計57名となりました.今年度もメンバー全員が切磋琢磨しながらオリジナリティに溢れた魅力的な研究に取り組み,少しでも世の中の役に立つような研究成果を発信していければと思っています.

2024年度もどうぞよろしくお願いします!

第721回 2023年度全体ゼミは今日で終了しました

2024.02.29

2024年2月13日に卒業論文発表会,2月14日に博士論文発表会,2月20日に修士論文発表会が終了し,今日の全体ゼミが2023年度最終回となりました.

 

#卒業論文発表会,修士論文発表会については以下のページをご覧ください.

卒業論文発表会:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17864

修士論文発表会:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17884

 

卒業生,修了生のみなさんには心から祝福を送ります.研究室でのみなさんの成長には,若い力の限りない可能性を感じました.これからも視野を広く持ってさらなる挑戦を続けていってください.想定外の困難にも負けない強い意志で素晴らしい未来を切り拓いていかれることを祈っています.

 

2023年度は長く続いたパンデミックもようやく終焉し,久しぶりに通常の生活に戻れた一年となりました.生体システム論研究室も例年通り活発に活動することができ,就職活動,入試などの学生の活動も充実した年になりました.研究室メンバーや研究協力者の皆様をはじめ,生体システム論研究室の運営に関わってくださったすべての方々に改めて厚く御礼申し上げます.

 

今日で2023年度全体ゼミは終了しましたが,2024年度卒業研究テーマ説明会が2月29日(木)に行われ,研究室公開が3月1日(金)に予定されています.また,3月14日(火)10:00には新しい4年生が研究室に配属され,新年度に向けての活動を開始します.4月5日(金)からは2024年度の全体ゼミを開始する予定です.

 

2024年度も引き続き,どうぞよろしくお願いします!

 

第720回 2023年度修士論文発表会

2024.02.20

2023年度広島大学大学院先進理工系科学研究科先進理工系科学専攻電気システム制御プログラム修士論文発表会が2月20日に行われ,本研究室から9名のM2が発表を行いました.
全員,非常に魅力的な研究内容と研究発表で,M2の最後を飾るにふさわしい素晴らしい発表会でした.質疑応答の内容もよかったと思います.
発表者と研究題目は以下のとおりです(発表順).

丸子 紗季
Development of a zebrafish ventilatory signal measurement system
(ゼブラフィッシュの呼吸波計測システムの開発)

金子 健太郎
Cardiac and Upper Limb Autonomic Responses to γ-Undecalactone Odor are Significantly Related to Pleasantness and High Arousal Evaluations
(-ウンデカラクトン臭に対する心臓と上肢の自律神経反応は快度と活性度に有意に相関する)

小濵 遼平
Non-invasive measurement of peripheral sympathetic nerve activity and its relationship to peripheral arterial stiffness
(末梢交感神経活動の非侵襲計測と末梢血管剛性との関係解析)

木村 友哉
Analysis of Human Brain Networks in Maneuvering Steering Wheel : An fMRI Study
(ハンドル操舵時の脳ネットワーク解析:fMRI研究)

齋藤 環希
Measurement and Evaluation of Baroreflex Function in Stroke Patients Using Peripheral Arterial Stiffness
(末梢血管剛性を用いた脳卒中患者における圧受容器反射感受性の解析と評価)

干場 滉太
A Machine Learning-based Screening Method for Driving Aptitude in Post-stroke Individuals Using Cognitive-motor Function Tests and Brain Lesion Location
(認知運動機能検査と脳損傷部位を用いた機械学習に基づく脳卒中患者の運転適性評価)

福田 隼也
Scale Mixture-based Classification Layer for Deep Neural Networks and Application to Bio-signal Classification
(ディープニューラルネットワークのための尺度混合分類レイヤと生体信号分類への応用)

松瀬 亮汰
Myoelectric Prosthetic Hand Control using Dynamic Setpoints Based on Speed of Muscle Force
(筋力速度に基づく動的セットポイントを導入した筋電義手制御)

松浦 詩乃
Estimation of FIM values using machine learning based on movement measurements
(運動計測に基づく機械学習を用いたFIM値推定)

各研究テーマは来年度以降も継続して取り組んでいく予定です.各自,研究内容をもう一度よく整理し,研究室を離れる人は引き継ぎ資料をしっかりまとめておくとよいでしょう.

修論発表会,おつかれさまでした!!

第719回 2023年度卒業論文発表会

2024.02.13

2023年度広島大学工学部第二類電気システム情報プログラム卒業論文発表会が2月13日に行われ,本研究室からは4年生8名が1年間の研究成果を発表しました.

発表者と研究題目は以下のとおりです(発表順).

宮崎 裕貴
二次元テクスチャデータからの振動生成による触感再生

木吉 達哉
持ち上げ動作アシストにおける振動付与が力知覚変化に与える影響の考察

井上 勝矢
視覚と力覚の同時提示による手指トレーニング支援システムが自己効力感に与える影響

藤原 幸多朗
視野の拡大・縮小に対応して操作性が変化する遠隔操作システム

岡部 陸
脳卒中患者を対象とした自覚的垂直位・体幹機能・脳画像の機械学習解析

斎藤 颯
予期を伴う疼痛刺激に対する脳ネットワークと末梢血管剛性の相互作用:fMRI研究

野中 啓太郎
生分解圧電センサを用いたイヤホン型生体情報モニタリングデバイスの開発

大本 僚輝
快臭と不快臭に対する主観評価と自律神経活動の関係解析

4年生全員,研究内容もプレゼンテーションも質疑応答もすべて素晴らしく,最高レベルの卒論発表会だったと思います.もちろん,研究としての課題は残っていると思いますので,各自,自分自身の研究内容や質疑応答をよく精査し,今後の課題を明確にしておくとよいでしょう.次の研究発表の機会にはさらに良い発表ができると思います.

これまで日々指導をしてくださった各グループの先生方や先輩たちに感謝しつつ,自分の研究に自信と誇りを持ち,より高いレベルの卒業論文完成を目指して引き続きがんばってください.

卒業論文発表会,おつかれさまでした!!

第718回 2023年度論文発表会

2024.02.09

2024年もあっと言う間に約1ヶ月が過ぎ,卒業・修了の季節が近づいてきました.2023年度の卒業論文発表会は2月13日(火)に,修士論文発表会は2月20日(火)に,博士論文発表会は2月14日(水)にそれぞれ開催されることになりました.

■卒業論文発表会:8名発表予定
場所:A1-141, Teams
日時:2月13日(火) 13:00-14:20

■修士論文発表会:9名発表予定
場所:A1-141, Teams
日時:2月20日(火) 12:45-15:00

■博士論文発表会(公聴会):1名発表
場所:A1-141, Teams
日時:2月14日(火) 10:30-11:30

卒業論文発表会については学部3年生も聴講可能ですので,研究室配属の参考になると思います.また,生体システム論研究室研究室メンバーはすべての発表会を聴講可能ですので,ぜひご参加ください.

発表準備を行う際には,
・研究の意義,目的
・従来研究とその問題点
・自分の研究のセールスポイント(独創性・新規性・有用性):どのような工夫を行ったのか
・研究結果:何ができたのか
・今後の課題
などについて整理し,簡潔に説明できるようまとめておきましょう.
また発表スライドを作成する際には,発表のストーリが分かりやすく,かつ魅力的で説得力があるかどうか,グループゼミ等でよく確認しておくとよいでしょう.

学生生活の総決算にふさわしい内容の論文発表会となるよう,ラストスパートでがんばってください!

第717回 【研究紹介】心肺バイパス中に発生するマイクロバブルの数は,吸引血流量,静脈リザーバーレベル,灌流血流量,ヘマトクリットレベル,血液温度から機械学習的に推定可能

2024.02.02

広島大学生体システム論研究室では約10年前から人工心肺に関する研究を開始し,博士課程修了生の岡原 重幸先生(純真学園大学保健医療学部教授),高橋 秀暢先生(広島国際大学保健医療学部講師),宮本 聡史さん(広島大学病院診療支援部臨床工学部門部門長),吉野 将さん(広島大学病院診療支援部臨床工学部門)らとともに,血液粘度推定,人工心肺装置の自動制御,血中マイクロバブル発生数の推定などの研究課題に取り組んできました.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17715

今回新たに,曽 智先生,古居 彬先生とともに人工心肺中のマイクロバブル発生数の機械学習による推定に成功し,IEEE Open Journal of Engineering in Medicine and Biologyに論文がアクセプトされました.

この論文は宮本 聡史さんの博士学位論文の一部になる予定です.今後も本研究チームとともに研究を継続し,臨床での研究成果につなげていければと思っています.ひきつづきよろしくお願いします.

The number of microbubbles generated during cardiopulmonary bypass can be estimated using machine learning from suction flow rate, venous reservoir level, perfusion flow rate, hematocrit level, and blood temperature
Satoshi Miyamoto, Zu Soh, Shigeyuki Okahara, Akira Furui, Taiichi Takasaki, Keijiro Katayama, Shinya Takahashi, and Toshio Tsuji
IEEE Open Journal of Engineering in Medicine and Biology, DOI: 10.1109/OJEMB.2024.3350922. (ESCI, IF=5.8)
URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/10382573
PDF: https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=10382573

<論文内容>
Goal: Microbubbles (MBs) are known to occur within the circuits of cardiopulmonary bypass (CPB) systems, and higher-order dysfunction after cardiac surgery may be caused by MBs as well as atheroma dispersal associated with cannula insertion. As complete MB elimination is not possible, monitoring MB count rates is critical. We propose an online detection system with a neural network-based model to estimate MB count rate using five parameters: suction flow rate, venous reservoir level, perfusion flow rate, hematocrit level, and blood temperature. Methods: Perfusion experiments were performed using an actual CPB circuit, and MB count rates were measured using the five varying parameters. Results: Bland–Altman analysis indicated a high estimation accuracy (R2>0.95, p<0.001) with no significant systematic error. In clinical practice, although the inclusion of clinical procedures slightly decreased the estimation accuracy, a high coefficient of determination for 30 clinical cases (R2=0.8576) was achieved between measured and estimated MB count rates. Conclusions: Our results highlight the potential of this system to improve patient outcomes and reduce MB-associated complication risk.

目的:マイクロバブル(MB)は心肺バイパスシステムの回路内で発生することが知られており,心臓手術後の高次脳機能障害はカニューレ挿入に伴うアテロームの飛散だけでなく,MBによっても引き起こされる可能性がある.MBを完全に除去することは不可能であるため,MBカウント率のモニタリングは極めて重要である.我々は,吸引血流量,静脈リザーバーレベル,灌流血流量,ヘマトクリットレベル,血液温度の5つのパラメータを用いてMBカウントレートを推定するという新たなニューラルネットワークベースのモデルを用いたオンライン検出システムを提案する.
方法:実際のCPB回路を用いて灌流実験を行い,5つのパラメータを変化させてMBカウント率を測定した.
結果:Bland-Altman分析の結果,推定精度は高く(R2>0.95,p<0.001),有意な系統誤差は認められなかった.臨床においては,臨床手技を含めると推定精度は若干低下するものの,30症例のMBカウント率の測定値と推定値の間に高い決定係数(R2=0.8576)が得られた.
結論:本論文の結果は,このシステムが患者の転帰を改善し,MBに関連した合併症のリスクを減少させる可能性を強く示している.

第716回 【研究紹介】感覚刺激に対する末梢交感神経活性化を末梢血管剛性インデックスで非侵襲評価

2024.01.26

生体システム論研究室MEグループでは末梢血管剛性インデックスによる新しい交感神経活動評価法の研究に取り組んでいますが,Frontiers in Physiologyに新たな論文が掲載されました.この論文は,MEグループの修了生である穴井 怜志君の修士研究を許 自強先生が発展させたものです.おめでとうございます!

引き続き,末梢血管剛性インデックスを用いて人間の自律神経系を非侵襲的に評価する研究を進めていきたいと思っています.よろしくお願いします.

Noninvasive Characterization of Peripheral Sympathetic Activation across Sensory Stimuli Using a Peripheral Arterial Stiffness Index
Ziqiang Xu, Reiji Anai, Harutoyo Hirano, Zu Soh and Toshio Tsuji
Frontiers in Physiology (Computational Physiology and Medicine), 14:1294239, DOI: 10.3389/fphys.2023.1294239, PUBLISHED 08 January 2024. (SCI, IF=4.0)
URL: https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphys.2023.1294239/full
PDF: https://www.readcube.com/articles/10.3389/fphys.2023.1294239

<論文内容>
The peripheral arterial stiffness index has been proposed and validated as a noninvasive measure quantifying stimulus intensity based on amplitude changes induced by sympathetic innervation of vascular tone. However, its temporal response characteristics remain unclear, thus hindering continuous and accurate monitoring of the dynamic process of sympathetic activation. This paper presents a study aimed at modeling the transient response of the index across sensory stimuli to characterize the corresponding peripheral sympathetic activation.
The index was measured using a continuous arterial pressure monitor and a pulse oximeter during experiments with local pain and local cooling stimuli designed to elicit different patterns of sympathetic activation. The corresponding response of the index was modeled to clarify its transient response characteristics across stimuli.
The constructed transfer function accurately depicted the transient response of the index to local pain and local cooling stimuli (Fit percentage: 78.4% ± 11.00% and 79.92% ± 8.79%). Differences in dead time (1.17 ± 0.67 and 0.99 ± 0.56 s, p = 0.082), peak time (2.89 ± 0.81 and 2.64 ± 0.68 s, p = 0.006), and rise time (1.81 ± 0.50 and 1.65 ± 0.48 s, p = 0.020) revealed different response patterns of the index across stimuli. The index also accurately characterized similar vasomotor velocities at different normalized peak amplitudes (0.19 ± 0.16 and 0.16 ± 0.19 a.u., p = 0.007).
Our findings flesh out the characterization of peripheral arterial stiffness index responses to different sensory stimuli and demonstrate its validity in characterizing peripheral sympathetic activation. This study valorizes a noninvasive method to characterize peripheral sympathetic activation, with the potential to use this index to continuously and accurately track sympathetic activators.

末梢血管剛性インデックスは交感神経支配によって誘発される振幅変化に基づいて刺激強度を定量化可能な非侵襲的尺度として提案され,検証されている.しかし,その時間的反応特性は不明であるため,交感神経活性化の動的過程の連続的で正確なモニタリングの妨げとなっている.本論文では,感覚刺激に対する指標の過渡応答をモデル化し,対応する末梢交感神経の活性化を評価することを目的とした.
交感神経活性化の異なるパターンを誘発するようにデザインされた局所疼痛刺激と局所冷却刺激による実験中に,連続血圧モニタとパルスオキシメータを用いて末梢血管剛性インデックスを測定した.刺激に対する応答特性を明らかにするために,末梢血管剛性インデックスの反応を伝達関数でモデル化した.
同定された伝達関数は,局所疼痛刺激および局所冷却刺激に対する指標の過渡応答を正確に描写した(適合率:78.4%±11.00%および79.92%±8.79%).むだ時間(1.17±0.67秒と0.99±0.56秒、p = 0.082),ピーク時間(2.89±0.81秒と2.64±0.68秒,p = 0.006),立ち上がり時間(1.81±0.50秒と1.65±0.48秒,p = 0.020)の違いから,刺激によって末梢血管剛性インデックスの反応パターンが異なることが明らかになった.この指標はまた,異なる正規化ピーク振幅(0.19±0.16および0.16±0.19 a.u.,p = 0.007)において,同様の血管運動速度を正確に特徴付けた.
我々の所見は,異なる感覚刺激に対する末梢血管剛性反応の特徴をより具体化し,末梢交感神経活性化の特徴付けにおける有効性を実証した.この研究は末梢の交感神経活性化を特徴づける非侵襲的な方法を評価するものであり,この指標を用いて交感神経活性化因子を継続的かつ正確に追跡できる可能性がある.

──これまでの末梢血管剛性インデックスに関する主要な研究成果─────

Prediction of blood pressure changes during surgical incision using the minimum evoked current of vascular stiffness value under sevoflurane anesthesia
Daiki Shorin, Satoshi Kamiya, Ryuji Nakamura, Ayaka Ishibashi, Noboru Saeki, Toshio Tsuji, and Yasuo M. Tsutsumi
Scientific Reports, volume 13, Article number: 20486, doi:10.1038/s41598-023-46942-y, Published online: 22 November 2023. (SCI, IF=4.6)

Beat-to-beat Estimation of Peripheral Arterial Stiffness from Local PWV for Quantitative Evaluation of Sympathetic Nervous System Activity
Ziqiang Xu, Toshiki Sakagawa, Akira Furui, Shumma Jomyo, Masanori Morita, Masamichi Ando, and Toshio Tsuji
IEEE Transactions on Biomedical Engineering, Volume: 69, Issue: 9, pp. 2806-2816, Digital Object Identifier: 10.1109/TBME.2022.3154398 , September 2022 (SCI, IF=4.756)

Prediction of blood pressure change during surgical incision under opioid analgesia using sympathetic response evoking threshold
Satoshi Kamiya, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Takashi Kondo, Hirotsugu Miyoshi, Soushi Narasaki, Atsushi Morio, Masashi Kawamoto, Harutoyo Hirano, Toshio Tsuji, and Yasuo M Tsutsumi
Scientific Reports, volume 11, Article number: 9558, doi.org/10.1038/s41598-021-87636-7, Published online: 5 May 2021. (SCI, IF=3.998)

Cardiorespiratory Synchronisation and Systolic Blood Pressure Correlation of Peripheral Arterial Stiffness During Endoscopic Thoracic Sympathectomy
Toshifumi Muneyasu, Harutoyo Hirano, Akira Furui, Zu Soh, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Yoshiyuki Okada, Masashi Kawamoto, Masao Yoshizumi, Atsuo Yoshino, Takafumi Sasaoka, Shigeto Yamawaki, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 11, Article number: 5966, doi.org/10.1038/s41598-021-85299-y, Published online: 16 March 2021. (SCI, IF=3.998)

Peripheral Arterial Stiffness During Electrocutaneous Stimulation is Positively Correlated with Pain-related Brain Activity and Subjective Pain Intensity: An fMRI Study
Toshio Tsuji, Fumiya Arikuni, Takafumi Sasaoka, Shin Suyama, Takashi Akiyoshi, Zu Soh, Harutoyo Hirano, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Masao Yoshizumi, Atsuo Yoshino, and Shigeto Yamawaki
Scientific Reports, volume 11, Article number: 4425, doi.org/10.1038/s41598-021-83833-6, Published online: 24 February 2021. (SCI, IF=3.998)

Estimation of Arterial Viscosity Based on an Oscillometric Method and Its Application in Evaluating the Vascular Endothelial Function
Hiroshi Tanaka, Akihisa Mito, Harutoyo Hirano, Zu Soh, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Yukihito Higashi, Masao Yoshizumi, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 9, Article number: 2609, doi:10.1038/s41598-019-38776-4, Published online: 22 February 2019. (SCI, IF=4.259)

A new arterial mechanical property indicator reflecting differences in invasive stimulus intensity induced by alteration of remifentanil concentration during laryngoscopy
Kensuke Yanabe, Ryuji Nakamura, Noboro Saeki, Elbegzaya Sukhdorj, Abdugheni Kutluk, Hiroki Hirano, Harutoyo Hirano, Masao Yoshizumi, Toshio Tsuji, and Masashi Kawamoto
Minerva Anestesiologica, Volume: 84, Issue: 3, pp. 311-318, DOI: 10.23736/S0375-9393.17.11796-7, Published: MAR, 2018. (SCI, IF=2.623)

Quantitative Evaluation of Pain during Electrocutaneous Stimulation using a Log-Linearized Peripheral Arterial Viscoelastic Model
Hiroki Matsubara, Hiroki Hirano, Harutoyo Hirano, Zu Soh, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Masao Yoshizumi, Atsuo Yoshino, Takafumi Sasaoka, Shigeto Yamawaki, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 8, Article number: 3091, doi:10.1038/s41598-018-21223-11, Published online: 15 February 2018 (SCI, IF=4.259).

Alteration of Arterial Mechanical Impedance Greater than that of Photoplethysmogram and Laser Doppler Flowmetry during Endoscopic Thoracic Sympathectomy
Elbegzaya Sukhdorj, Ryuji Nakamura, Noboro Saeki, Kensuke Yanabe, Abdugheni Kutluk, Hiroki Hirano, Harutoyo Hirano, Toshio Tsuji, and Masashi Kawamoto
Journal of Medical and Biological Engineering, Volume 37, Issue 6, pp. 820-825, DOI: 10.1007/s40846-017-0246-0, DEC 2017 (SCI, IF=1.018)
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第715回 英語論文

2024.01.19

2024年もあっという間に1月下旬となり,修士論文の提出締め切りが近づいています.修士論文の作成時や国際学術雑誌,国際会議への論文投稿時には,論文を英語で執筆することが必要になります.もちろん,自力で英語論文を執筆する能力を身につけることが大切なのは言うまでもありませんが,とはいえいきなり英語論文を執筆するのはかなりの困難を伴うと思います.

最近,deep learningに基づく優秀な機械翻訳アプリ,英文校正アプリを手軽に利用することが可能になりました.これらのアプリをうまく使いこなせば,結果的に自らの英語能力の向上につながりますし,先生方に英語原稿を提出する前に英文のクオリティをアップすることが可能になります.

すでによく知られているとは思いますが,以下にいくつかのアプリと関連記事を引用しておきます.

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1.機械翻訳アプリ

■DeepL翻訳:科学技術論文に強く,微妙なニュアンスのある翻訳ができるという評価を受けているスタンダードアプリ.非常にレベルの高い英訳が可能ですし,先行研究サーベイをするときには英文和訳機能も便利です.有料版も比較的安価に設定されており,また30日間無料(いつでもキャンセル可能)なので,手軽に利用することができます.
https://www.deepl.com/ja/translator

■Google翻訳:よく知られている機械翻訳アプリ.無料です.
https://translate.google.co.jp/?hl=ja

#Google Scholarを利用すれば,特定の言い回しや単語が他の学術論文で使われているかどうかを手軽にチェックすることができます.Googleの検索演算子やワイルドカードを使えばさまざまな検索が可能です.たとえば,日本人の著者だけが使っているような言い回しは避ける,適切な前置詞を見つけるなどの使い方が可能になります.
https://scholar.google.com/

2.英文作成・校正アプリ

■DeepL Write:DeepLベースの英文校正アプリです.英語(アメリカ)を選べば自動で校正してくれます.
https://www.deepl.com/write

■ChatGPT:人間の発話をシミュレートしてユーザと自然なやり取りをするチャットボットのモデルで,オープンAIによって開発されました.
https://openai.com/blog/chatgpt
https://note.com/kan_hatakeyama/n/ncc312ff6a23d

■Grammarly:優れた自動校正アプリとして有名です.Wordに埋め込むこともできます.
https://app.grammarly.com/
https://www.path-to-success.net/grammarly

■AI校正の比較
https://eibun-hikaku.net/topics/ai_checker.html

3.参考情報

・以下の記事では,DeepLとGrammarlyを利用した英語論文作成法が紹介されています.
https://eanesth.exblog.jp/240618090/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000090606.html

・英文の要約文を作成するアプリもいろいろ使えそうです.
https://www.ntt.com/shines/posts/b-t_20201111.html

・「最近ものすごく優秀な修士就活生が増えている」
https://togetter.com/li/1758185
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以上をまとめると,

日本語論文の文章作成(自分の研究と流れが似ているような英語論文を参考にしながら執筆&推敲)
⇒DeepLで英文変換
(機械翻訳で日本語に戻したときに意味が通じるよう元の日本語論文を修正)
⇒DeepL WriteやGrammarlyなどで校正
⇒専門用語や言い回しをGoogle Scholarでチェック(日本人しか使っていないような言い回しは避け,native speakerが使用しているような言い回しを使う)

というような流れで作業を進めていけば,自力で英作文するよりも容易に英語論文を作成することが可能です.学術雑誌投稿論文についても,研究室内の英語能力の高い人が最終チェックをすれば,高額の英文校正サービスは不要になりそうです.

もちろん,機械翻訳アプリや英文校正アプリによって提示された英文が適当かどうか判断できるだけの基本的な科学英語力を身に着けていることが必須条件で,そのためには普段からできるだけ多くの英語論文を読んでおくことが大切です.また,英語化よりも研究内容の新規性/独創性を明確にすること,日本語論文のストーリ/文章構成の完成度が高いことなどがはるかに重要であることは言うまでもありませんが,便利なアプリを上手に,そして正しく利用して英語論文の作成を進めるとよいでしょう.

英語論文完成を目指してがんばってください!

第714回 2024年,今年もよろしくお願いします!

2024.01.12

今日から2024年(令和6年)の全体ゼミを開始しました.

2024年は大地震と航空機事故という前代未聞の年明けとなってしまいましたが,私たち生体システム論研究室ではこれまでと同じように高いレベルの研究・教育活動を目指して自分たちができる活動を継続していければと思います.地震や事故で犠牲になられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに,被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます.

今年も2月下旬まで,博士論文,修士論文,卒業論文の作成と各論文発表会が予定されており,研究室は一年でもっとも忙しい時期を迎えます.各自,体調に十分に気をつけながら,余裕をもったスケジュールで論文作成や発表準備を進めていくとよいでしょう.国際的なトップジャーナルに掲載されるような魅力にあふれた研究論文の完成を目指して,ラストスパートでがんばってください!

本年もどうぞよろしくお願いいたします.

第713回 Happy Xmas 2023

2023.12.22

2023年の生体システム論研究室全体ゼミは,12月22日開催の第29回が最後となりました.年内の研究打ち合わせをいくつか予定していますが,2023年の活動は今日でほぼ終了です.

毎年,国際学術雑誌論文を10編発表することを目標にして活動していますが,2023年はこの目標を達成することができ,活発に研究,教育に取り組むことができました.一方で,個人的には体調を崩してしまい,長期入院や新しい診療科の受診を経験することとなり慌ただしい一年でしたが,研究に役立つ新しい気づきや発見もありそれなりに充実した時間を過ごすことができました.

以下に2023年の生体システム論研究室の研究業績をまとめておきます.

国際学術雑誌論文: 11編(インパクトファクタ合計値38.441)
国際会議論文: 2編
国内学会発表: 3件
博士学位論文: 1編
受賞: 6件(学生の各種受賞を含む)
招待講演: 1件
特許: 国内特許登録2件, 米国特許登録1件, 国内特許出願1件,国際特許出願1件

■過去5年間の年間インパクトファクタ合計値と論文数:
2023: 38.441(11編)
2022: 30.090(7編)
2021: 48.442(11編)
2020: 46.312(12編)
2019: 44.131(8編)

このような研究成果をあげることができたのは,研究室スタッフ,学生諸君,多くの共同研究者・研究協力者の皆様をはじめ,本研究室を支えてくださったすべての人たちのおかげです.ここに改めて御礼申し上げます.

本研究室に関わってくださっているすべてのみなさんにとって,2024年が素晴らしい年になることを祈っています.来年もどうぞよろしくお願いします!

We wish you a very merry Christmas and a happy new year!

第712回 2023年度国際共同研究加速基金(海外連携研究)
「自閉スペクトラム症児の乳幼児期身体運動発達研究と早期スクリーニング技術開発」

2023.12.15

科学研究費助成事業(科研費)の国際共同研究加速基金(海外連携研究)は,学術研究の発展に必要な国際共同研究を実施することにより,独創的,先駆的な研究を格段に発展させることを目的とするもので,国際共同研究の基盤の構築や更なる強化,さらには国際的に活躍できる若手研究者の養成を目指しています.

2023年度の国際共同研究加速基金(海外連携研究)に以下の研究課題が採択されました.これまで筋電グループを中心に取り組んできた乳幼児発達研究を臨床研究や国際研究に応用するという内容です.

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2023年度国際共同研究加速基金(海外連携研究)(R5~R10年度)
「自閉スペクトラム症児の乳幼児期身体運動発達研究と早期スクリーニング技術開発」
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23KK0203/

・研究代表者:土居 裕和
・研究分担者:辻 敏夫,島谷 康司,古居 彬,雲居 玄道,許 自強
・配分額:20,800千円(間接経費含む)
・研究概要:
自閉スペクトラム症(ASD; Autism Spectrum Disorder)は,世界的に有病率が上昇の一途を辿っている発達障害である.ASDの治療法は未確立だが早期発見・早期介入により予後が改善することが知られているため,ASD早期スクリーニング技術開発が重要課題となっている.本研究では,日仏の研究者から構成される国際共同研究体制によりASD遺伝的ハイリスク児を縦断追跡することで,
(i) ASD児における身体運動と運動制御に関与する神経生理機能の初期発達過程の解明,
(ii) 発達初期の身体運動・生体情報に基づく,ASD早期スクリーニング技術開発
を実現する.
日本側は,独自の乳児期身体運動マーカーレス解析・生体信号解析技術を有する.一方の仏側国際共同研究者らは世界的にも数少ないASDハイリスク児縦断研究フィールドを確立している他,情報技術を用いたASDの客観的症状評価で先駆的業績をあげている.問題意識・専門領域を共有する両国の研究チームが互いの研究資源を共有することでASD研究・臨床を飛躍的に発展させるとともに,本研究期間終了後も長期にわたって利用可能な認知神経発達科学・生体医工学の国際共同研究拠点を確立する.
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本研究の海外パートナーであるソルボンヌ大学ではASDハイリスク児の縦断研究フィールドを確立しており,ASD児における母子関係の初期発達等の分野で大きな成果を挙げています.ソルボンヌ大学が推進する小児精神医学研究に,日本側独自の乳幼児身体運動・生体情報の計測・解析ノウハウを導入することでASD研究を一層発展させることが期待できます.

しっかりと研究を進め,最終的には臨床現場だけでなく日常生活において役に立つような革新的な技術を確立したいと思っています.どうぞよろしくお願いします.

第711回 【研究紹介】垂直方向の動体視力は水平方向の動体視力より有意に低い

2023.12.08

先週に続いて「高次脳機能研究会」の研究成果です.(株)日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタの神鳥 明彦さん,マクセル(株)の水口 寛彦さんらとともに,さまざまな方向の動体視力を計測可能な装置を新たに開発し,垂直方向の動体視力が水平方向の動体視力より有意に低いことを発見しました.この研究は感性ブレイングループの修了生の立原 蒼生君の修士論文の一部を発展させたもので,曽 智先生を中心に論文作成を行い,Scientific Reports誌に掲載されました.

Vertical Dynamic Visual Acuity is Significantly Lower than Horizontal Dynamic Visual Acuity
Aoi Tachihara, Zu Soh, Tomohiko Mizuguchi, Akihiko Kandori, Seiji Hama, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 13, Article number: 20999, doi:10.1038/s41598-023-48292, Published online: 28 November 2023. (SCI, IF=4.6)
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-023-48292-1
PDF: https://www.nature.com/articles/s41598-023-48292-1.pdf

今後も動体視力に関する研究を進め,最終的には臨床応用できればと思っています.ひきつづきよろしくお願いします.

<論文内容>
Dynamic visual acuity (DVA) is crucial for the perception of moving objects. While traditional DVA assessment tools predominantly focus on horizontal movements, the evaluation of vertical DVA remains unstandardized. Consequently, the disparities between vertical and horizontal DVAs are yet to be thoroughly investigated. Therefore, we designed a system capable of conducting multi-directional DVA tests and eye movement measurements. During the experiments, the participants identified the gap direction of the Landolt-C ring moving either horizontally or vertically. The speed of movement decelerated from its maximum as a high-speed infrared camera captured the pupil movements of the left eye at 500 fps. We conducted tests on 15 healthy university students (aged 22.7 ± 1.2 years) and measured vertical and horizontal DVAs five times each. DVA was deduced from the Landolt-C ring speed with accurate gap direction responses, and eye movement was assessed based on the total gaze movement distance. The results revealed superior DVA and eye movement in the horizontal direction compared with the vertical direction (p < 0.001). This highlights the anisotropic characteristics of DVA and eye movement. The proposed system has the potential for multi-directional dynamic vision evaluation and training in clinical scenarios.

動体視力(DVA)は,動いている物体の知覚において極めて重要である.従来のDVA評価ツールは主に水平方向の動きに焦点を当てており,垂直方向のDVAの評価に関してはまだ標準化されていない.そのため,垂直方向のDVAと水平方向のDVAの差異についてはまだ十分に検討されていない.そこで本研究では多方向のDVA検査と眼球運動の測定が可能なシステムを開発した.実験では,ランドルト環が水平または垂直に移動するときのギャップ方向を被験者に知覚させた.移動速度は最大から減速し,高速赤外線カメラで左目の瞳孔の動きを500fpsで撮影した.15人の健康な大学生(22.7±1.2歳)を対象に検査を行い,垂直方向と水平方向のDVAをそれぞれ5回ずつ測定した.DVAは正確なギャップ方向反応を伴うLandolt-Cリング速度から推定し,眼球運動は全視線移動距離から評価した.その結果,水平方向のDVAと眼球運動は垂直方向に比べて優位に優れていた(p < 0.001).このことは,DVAと眼球運動の異方的特性を浮き彫りにしている.提案システムは,臨床場面における多方向の動体視力評価やトレーニングに応用できる可能性がある.

第710回 【研究紹介】脳卒中後遺症患者の自動車運転に必要な運動認知機能を機械学習により同定

2023.12.01

広島大学生体システム論研究室ではMEグループ,筋電グループ,感性ブレイングループを中心に高次脳機能解析とリハビリテーション応用に関する研究に取り組んでおり,独自に開発した機械学習アルゴリズムや脳画像解析法を用いて高次脳機能と脳損傷の関係解析を進めています.

この研究は「高次脳機能研究会」として展開しており,広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター,日比野病院の濱 聖司先生,(株)日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタの神鳥 明彦さん,マクセル(株)の水口 寛彦さんらとの医工連携・産学連携研究です.また,科学技術振興機構(JST)の「研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP 令和4年度産学共同(育成型)(2022~2024年度)」にも採択されています.

今回新たに,脳卒中後遺症患者の自動車運転に必要な運動認知機能を機械学習解析により同定することに成功し,Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation誌に論文が掲載されました.この論文は修了生の田淵 元太君(MEグループ)の修士論文を古居先生,許先生が中心となって発展させたものです.

Motor-cognitive functions required for driving in post-stroke individuals identified via machine-learning analysis
Genta Tabuchi, Akira Furui, Seiji Hama, Akiko Yanagawa, Koji Shimonaga, Ziqiang Xu, Zu Soh, Harutoyo Hirano, and Toshio Tsuji
Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation, 20, Article number: 139, doi:10.1186/s12984-023-01263-z, 18 October 2023.  (SCI, IF=5.1)
URL: https://jneuroengrehab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12984-023-01263-z
PDF: https://jneuroengrehab.biomedcentral.com/counter/pdf/10.1186/s12984-023-01263-z.pdf

今後も臨床応用を意識した研究成果をまとめていければと思っています.ひきつづきよろしくお願いします.

<論文内容>
Background: People who were previously hospitalised with stroke may have difficulty operating a motor vehicle, and their driving aptitude needs to be evaluated to prevent traffic accidents in today’s car-based society. Although the association between motor-cognitive functions and driving aptitude has been extensively studied, motor-cognitive functions required for driving have not been elucidated.
Methods: In this paper, we propose a machine-learning algorithm that introduces sparse regularization to automatically select driving aptitude-related indices from 65 input indices obtained from 10 tests of motor-cognitive function conducted on 55 participants with stroke. Indices related to driving aptitude and their required tests can be identified based on the output probability of the presence or absence of driving aptitude to provide evidence for identifying subjects who must undergo the on-road driving test. We also analyzed the importance of the indices of motor-cognitive function tests in evaluating driving aptitude to further clarify the relationship between motor-cognitive function
and driving aptitude.
Results: The experimental results showed that the proposed method achieved predictive evaluation of the presence or absence of driving aptitude with high accuracy (area under curve 0.946) and identified a group of indices of motor-cognitive function tests that are strongly related to driving aptitude.
Conclusions: The proposed method is able to effectively and accurately unravel driving-related motor-cognitive functions from a panoply of test results, allowing for autonomous evaluation of driving aptitude in post-stroke individuals. This has the potential to reduce the number of screening tests required and the corresponding clinical workload, further improving personal and public safety and the quality of life of individuals with stroke.

背景:脳卒中で入院経験のある人は自動車の運転が困難となる可能性があり,今日の車社会における交通事故を防止するためには,脳卒中後遺症患者の運転適性を評価する必要がある.これまでに運動認知機能と運転適性との関連は広く研究されているが,運転に必要な運動認知機能については明らかにされていない.
方法:本論文では,脳卒中患者55名を対象に実施した10種類の運動認知機能検査から得られた65項目の入力指標から,運転適性に関連する指標を自動的に選択するためにスパース正則化を導入した機械学習アルゴリズムを提案する.運転適性の有無の出力確率に基づいて運転適性に関連する指標とその必要な検査を同定することで,路上運転試験を受けるべき被験者を特定するためのエビデンスを提供することができる.また,運転適性評価における運動認知機能検査の指標の重要性を分析し,運動認知機能と運転適性の関係を明らかにした.
結果:実験の結果,提案手法は高い精度(AUC=0.946)で運転適性の有無の予測評価を達成し,運転適性と強く関連する運動認知機能検査の指標群を同定した.
結論:提案された方法は多様な検査結果から運転に関連する運動認知機能を効果的かつ正確に解明することができ,脳卒中後遺症者の運転適性を自動的に評価することを可能にする.これにより,必要なスクリーニング検査の回数とそれに伴う臨床的負担を軽減し,個人と公共の安全,および脳卒中患者の生活の質をさらに向上させる可能性がある.

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#「高次脳機能研究会」に関連するこれまでの研究成果は以下の通りです.

<国際学術雑誌論文>
Predicting ischemic stroke after carotid artery stenting based on proximal calcification and the jellyfish sign
Nobuhiko Ichinose, Seiji Hama, Toshio Tsuji, Zu Soh, Hideaki Hayashi, Yoshihiro Kiura, Shigeyuki Sakamoto, Takahito Okazaki, Daizo Ishii, Katsuhiro Shinagawa, and Kaoru Kurisu
Journal of Neurosurgery, Vol. 128, No. 5, Pages 1280-1288, May 2018, Published online July 7, 2017; DOI: 10.3171/2017.1.JNS162379. (SCI, IF=4.059)

Relationships between Motor and Cognitive functions and Subsequent Post-stroke Mood Disorders Revealed by Machine Learning Analysis
Seiji Hama, Kazumasa Yoshimura, Akiko Yanagawa, Koji Shimonaga, Akira Furui, Zu Soh, Shinya Nishino, Harutoyo Hirano, Shigeto Yamawaki, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 10, Article number: 19571, doi.org/10.1038/s41598-020-76429-z, Published online: 11 November 2020. (SCI, IF=3.998)

Lesions in the Right Rolandic Operculum are Associated with Self-rating Affective and Apathetic Depressive Symptoms for Post-stroke Patients
Stephanie Sutoko, Hirokazu Atsumori, Akiko Obata, Tsukasa Funane, Akihiko Kandori, Koji Shimonaga, Seiji Hama, Shigeto Yamawaki, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 10, Article number: 20264, doi.org/10.1038/s41598-020-77136-5, Published online: 20 November 2020. (SCI, IF=3.998)

The right hemisphere is important for driving-related cognitive function after stroke
Koji Shimonaga, Seiji Hama, Toshio Tsuji, Kazumasa Yoshimura, Shinya Nishino, Akiko Yanagawa, Zu Soh, Toshinori Matsushige, Tatsuya Mizoue, Keiichi Onoda, Hidehisa Yamashita, Shigeto Yamawaki, and Kaoru Kurisu
Neurosurgical Review, vol. 44, pp.977-985, doi.org/10.1007/s10143-020-01272-9, Published online: 11 March, 2020, 2021 (SCI, IF=2.654)

Increased cerebrovascular reactivity in selected brain regions after extracranial-intracranial bypass improves the speed and accuracy of visual cancellation in patients with severe steno-occlusive disease: A preliminary study
Koji Shimonaga, Seiji Hama, Akira Furui, Akiko Yanagawa, Akihiko Kandori, Hirokazu Atsumori, Shigeto Yamawaki, Toshinori Matsushige, and Toshio Tsuji
Neurosurgical Review, 45, pages 2257-2268, doi.org/10.1007/s10143-021-01720-0 , Published online: 30 January 2022, Issue Date: June 2022  (SCI, IF=3.042)

Projection of damaged visual and language regions on low Trail Making Test Part-B performance in stroke patients
Ayako Nishimura, Stephanie Sutoko, Masashi Kiguchi, Hirokazu Atsumori, Akiko Obata, Tsukasa Funane, Akihiko Kandori, Tomohiko Mizuguchi, Koji Shimonaga, Seiji Hama, and Toshio Tsuji
Frontiers in Neurology, Volume 13, Article 853942, doi: 10.3389/fneur.2022.853942 , published: 02 June 20 (SCI, IF=4.003)

Artificially-reconstructed brain images with stroke lesions from non-imaging data: modeling in categorized patients based on lesion occurrence and sparsity
Stephanie Sutoko, Hirokazu Atsumori, Akiko Obata, Ayako Nishimura, Tsukasa Funane, Masashi Kiguchi, Akihiko Kandori, Koji Shimonaga, Seiji Hama, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 12, Article number: 10116, doi.org/10.1038/s41598-022-14249-z , Published online: 16 June 2022. (SCI, IF=4.996)

<国際会議>
Pen-point Trajectory Analysis During Trail Making Test Based on a Time Base Generator Model
Hiroto Sakai, Akira Furui, Seiji Hama, Akiko Yanagawa, Koki Kubo, Yutaro Morisako, Yuki Orino, Maho Hamai, Kasumi Fujita, Tomohiko Mizuguchi, Akihiko Kandori, and Toshio Tsuji
Proceedings of 43rd Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC’21), pp. 6215?6219, Virtual Conference due to COVID-19, Nov 1?5, 2021.
Estimation of Brain Lesions: Insights From Non-imaging Data

Stephanie Sutoko, Hirokazu Atsumori, Akiko Obata, Ayako Nishimura, Tsukasa Funane, Akihiko Kandori, Koji Shimonaga, Seiji Hama, and Toshio Tsuji
Proceedings of 43rd Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC’21), p. 5296, Virtual Conference due to COVID-19, Nov 1?5, 2021.

<特許>
情報処理システム
日本国特許出願 2019-173257, 特開2021-49064, 特許第7250279号
舟根 司, 敦森 洋和, 神鳥 明彦, 小幡 亜希子, 西村 彩子, 小松佑人, 沼田 崇志, 濱 聖司, 辻 敏夫
2019年9月24日出願, 2021年4月1日公開, 2023年3月24日登録

生体計測システム及び方法
日本国特許出願 特願2019-192398, 特開2021-65393, 特許第7181533
西村 彩子, 敦森 洋和, 舟根 司, 神鳥 明彦, 中村 泰明,小幡 亜希子, 小松 佑人, 濱 聖司, 辻 敏夫
2019年10月23日出願, 2021年4月30日公開, 2022年11月22日登録

Information Processing System
U. S. Patent Application No. 16/935,778, Publication No. US-2021-0090460-A 1
Tsukasa FUNANE, Hirokazu ATSUMORI, Akihiko KANDORI, Akiko OBATA, Ayako NISHIMURA, Yuto KOMATSU, Takashi NUMATA, Seiji HAMA, and Toshio TSUJI
Application Date: July 22, 2020, Publication Date: March 25, 2021

BIOMETRIC SYSTEM AND METHOD
U. S. Patent Application No. 17/074,345, Publication No. US 11,744,486 B2
Ayako NISHIMURA, Hirokazu ATSUMORI, Tsukasa FUNANE, Akihiko KANDORI, Yasuaki NAKAMURA, Akiko OBATA, Yuto KOMATSU, Seiji HAMA, and Toshio TSUJI
Application Date: October 19, 2020, Publication Date: Sep. 5, 2023

情報処理システム
日本国特許出願 特願2021-34537 特開2022-134989
敦森 洋和, ストコ ステファニー, 小幡 亜希子, 西村 彩子, 舟根 司, 神鳥 明彦, 辻 敏夫, 濱 聖司
2021年3月4日出願, 2022年9月15日公開

嚥下能力評価装置及びプログラム
日本国特許出願 特願2023-154158
濱 聖司, 辻 敏夫
2023年9月21日出願
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第709回 2023年度広島大学大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム 修士論文中間発表会(M1)

2023.11.24

2023年11月10,17, 24日の3日間,M1の修士論文中間発表会を行いました.

2020年度に設置された広島大学大学院先進理工系科学研究科では,M1の修士論文中間発表が義務付けられています.中間発表の目的は,入学後の早い時期に研究のゴールを明確にするとともに,自分の研究の意義,特徴,新規性,独創性などをわかりやすく説明できるようにすることにあり,M1にとっては修士研究を進めていくうえでのマイルストーンとなります.また,今後の就職活動に向けて,自分の研究のセールスポイントを整理する丁度よい機会にもなったのではと思います.

今年度は,M1の13名が発表を行いました.全員,魅力的な研究内容で,非常にレベルの高いM1修士論文中間発表会となりました.もう少しで学術雑誌に論文投稿ができそうな新規性,独創性の高い研究発表が多く,よかったと思います.それぞれの今後の課題をよく整理し,一つずつ課題を解決していくとよいでしょう.

M1のみなさん,おつかれさまでした!

第708回 2023年度広島大学大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム 修士論文中間発表会(M2)

2023.11.17

11月14日(火)に電気システム制御プログラムの修士論文中間発表会が行われ,生体システム論研究室からはM2の9名が研究発表を行いました.

今年度は対面式とリモート式を併用したハイブリッド開催となりましたが,全員,非常に魅力的な研究内容で,充実した修論中間発表会となりました.全体ゼミでの発表練習から発表内容が大きく改善した人が多く,修士論文全体のストーリの整理という意味でも有意義な中間発表会だったと思います.また,質疑応答に関してもほぼ的確な回答が行えており,堂々とした発表態度もよかったと思います.

研究の進捗状況はそれぞれで異なりますが,今回の予稿・発表スライドの作成作業を通じて自分の修士論文の完成形をはっきりイメージすることができたのではと思います.今後は修士論文の早期完成を目指し,以下の点を改善していくとよいでしょう.

(1) 新規性・独創性を明確にし,従来研究との差異を強調するような工夫を強化する
(2) 論文のストーリを明確にし,必要に応じて従来研究のサーベイを追加する
(3) 実験やシミュレーションを改善,充実させ,研究の有用性をさらに明確にし従来研究との比較結果を示す
(4) 残された課題を箇条書きにし,具体的に解決策を検討する

早いもので2023年も残すところあと約一月半となりました.体調に十分に気をつけながらラストスパートでがんばってください.
修論中間発表会,おつかれさまでした!!

第707回 博士論文発表会(公聴会)

2023.11.10

8月頃からD3の高橋 秀暢さん(MEグループ,広島国際大学講師)の博士学位審査が始まっています.先日行われた博士論文作成着手審査と予備審査は合格し,現在,本審査に進んでいます.博士学位論文審査会(公聴会)は以下の予定で開催します.

■博士論文発表会(公聴会)
氏名:高橋 秀暢
学位論文題名:A Study on Automatic Control Methods in the Operation of the Cardiopulmonary Bypass System
(人工心肺システム操作における自動制御法に関する研究)
主査:辻 敏夫教授,副査:石井 抱教授,山本 透教授
日時:2023年11月30日(木) 13:30-14:30
場所:Teams「生体システム論研究室-teams」,「博士論文公聴会」チャネル

高橋さんの論文はこの数年間の研究成果をまとめたもので,素晴らしい内容の学位論文です.公聴会は一般公開しており,どなたでも聴講可能ですので興味のある方はぜひご参加ください.

■関連コラム:
第539回 博士学位への道 (その1)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15530
第540回 博士学位への道 (その2)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15541
第541回 博士学位への道 (その3)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15571
第566回 博士学位への道 (その4)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15966
第567回 博士学位への道 (その5)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15986
第652回 広島大学大学院リサーチフェローシップ
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17240

第706回 卒業アルバム用写真撮影2023

2023.10.31

2023年10月27日に卒業アルバム用の写真撮影を行いました.2024年3月発行予定の広島大学卒業アルバムには,研究室の集合写真,個人写真などが掲載される予定です.

卒業/修了の季節が近づいてきたことを感じさせるイベントでした.幹事を務めてくれたB4の斎藤 颯君,ごくろうさまでした!

#卒業アルバム「研究室紹介」コーナーが掲載されるかどうか不明ですが,生体システム論研究室の紹介を以下に記載しておきます.

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生体システム論研究室
広島大学 大学院先進理工系科学研究科 電気システム制御プログラム

◆研究室紹介:
進化のプロセスを通じて自然界に育まれた生体には,現在の工学技術では実現できないような極めて巧みで高度な生体機能が備わっています.生体システム論研究室では,生体機能の秘密に迫るというサイエンティストの目と人間の役に立つ機械を開発するというエンジニアの目という2つの目で,生体機能の特徴にもとづく新たなシステムやアルゴリズムの開発に取り組んでいます.

◆研究室の歴史:
生体システム論研究室は辻 敏夫教授が2002年4月1日に着任してその活動を開始し,現在は辻 敏夫教授,栗田 雄一教授,曽 智准教授,許 自強特任助教の教員4名と,本研究室修了生の平野 陽豊講師(藤田医科大),古居 彬助教(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 情報科学プログラム)の協力のもと教育研究活動を行っています.
2023年度の研究室メンバーは教員4名,協力教員2名,秘書2名,博士課程後期13名,博士課程前期23名,学部4年生9名,インターンシップ生2名で,2022年度までの卒業生・修了生は学部卒業生200名,博士課程前期修了生196名,博士課程後期修了生33名で,博士学位取得者は39名に上ります.
研究室ホームページ:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/
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第705回 第7期ハイパーヒューマンテクノロジープロジェクト研究センター

2023.10.27

広島大学ハイパーヒューマンテクノロジープロジェクト研究センターの継続設置が承認されました.

ハイパーヒューマンテクノロジープロジェクト研究センターは2003年4月1日に設置され,21世紀COEプログラム応募に向けての基盤作りのため第1期(2003-2007年度)の活動を開始しました.その後,広島大学21世紀COEプログラム「超速ハイパーヒューマン技術が開く新世界」(2004-2008年度)が採択され,第2期(2008-2010年度),第3期(2011-2013年度),第4期(2014-2016年度),第5期(2017-2019年度),第6期(2020-2022年度)を経て,第7期(2023-2025年度)の活動に入りました.

■2023-2025年度 広島大学ハイパーヒューマンテクノロジープロジェクト研究センター

・センター長:
辻 敏夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科)
・研究実施部局:
広島大学大学院先進理工系科学研究科
広島大学大学院医系科学研究科
広島大学病院
https://www.hiroshima-u.ac.jp/prc/center_list
https://www.hiroshima-u.ac.jp/prc/procen_hyperhumantech

・研究目的:
本プロジェクトセンターでは,人間が有する様々な生体機能を解析・モデル化した上で,人間を超えたセンシング/アクチュエーション技術と人間の脳を超えた制御/情報処理技術を組み合わせたハイパーヒューマン理論/技術の研究開発,ならびにその体系化を目指している.最終的には,人間の能力をはるかに超えた認知・行動能力を実現する様々な形態での人工技術の創出を目指し,これまでのエンジニアリングの枠組みを超えた様々な応用,特にメディカル,バイオ,スポーツ,教育,生物分野など,現在も作業の多くが人間の手作業である分野への横断的な応用を目指す.
人間の能力を超えた認知・行動能力を実現するハイパーヒューマンテクノロジーは,18世紀の産業革命における人間の肉体限界をはるかに超えた蒸気機関,20世紀におけるIT革命における人間の計算能力をはるかに超えたコンピュータの出現により産業構造が変わったように,21世紀の産業構造を大きく変革する可能性がある.その意味で,人間の認知・行動能力の限界が大きな障害となっていた多岐にわたる産業分野において,本プロジェクトセンターから世界に先駆け発信されるハイパーヒューマンテクノロジーは大きな技術変革の起爆剤となる可能性がある.

第7期では,医工連携分野,脳・こころ・感性研究分野を中心に推進していく予定で,以下のような研究課題に取り組んでいきます.

(1) ハイパーヒューマンテクノロジーのメディカル,バイオ,産業応用
・新たなバイオミメティック5指駆動型筋電義手の開発
・機械学習に基づく新生児発達障害早期発見システムの開発
・動体視力と重心動揺に基づく脳卒中後リハビリテーション評価支援システムの開発
・非侵襲末梢交感神経活動計測システムの開発
(2) ハイパーヒューマンテクノロジーの脳・こころ・感性応用
・末梢血管剛性に基づく脳/自律神経状態の定量評価
・脳卒中患者の高次脳機能・脳画像・各種障害の関係解析
・匂い刺激に伴う人間の主観・機能的能画像・血管粘弾性の関係解析
・痛み刺激時の脳活動解析と疼痛バイオマーカーの開発
・Scale mixtureモデルに基づくてんかん/睡眠/感情脳波解析
(3) ハイパーヒューマンテクノロジーの実用化研究
・生体信号に基づく新しいヒューマンインタフェース技術の開発
・非侵襲的末梢交感神経活動評価法の実用化
・5指駆動型筋電義手の実用化
・脳卒中患者を対象とした高次脳機能簡易検査法の開発と実用化

これらの研究課題は本研究室の各グループの研究課題でもあり,本研究室のメンバーが広島大学ハイパーヒューマンテクノロジープロジェクト研究センターの活動に大きくかかわっていることになります.

本センターでは,人間の高度で巧みな認知・行動能力に学びつつ,最終的には人間の能力をはるかに超えた新しい技術の創出を目指して,これまでのエンジニアリングの枠組みを超えた横断的研究を展開していきたいと思っています.
引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします.

第704回 M2の進路2023

2023.10.20

政府は2023年度(2024年3月)卒業・修了予定者(学部生,修士学生)の就職・採用活動について,従来と同様に以下のように定めています

・広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
・採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降

2023年7月頃に,生体システム論研究室大学院博士課程前期M2の就職活動はすべて終了しました.内々定先はいずれも日本を代表する企業であり,素晴らしいと思います!

■企業就職:9名
内々定先:
株式会社島津製作所,トヨタ自動車株式会社,マツダ株式会社(3名),三菱電機株式会社,BIPROGY株式会社,株式会社LIXIL,株式会社SHIFT

研究開発職を希望することが多い理系大学院生の就職活動において,最も評価される点は間違いなく研究室で取り組んできた研究活動です.クラブやサークルでの課外活動やアルバイト経歴などはよほどの特徴がない限り,ほとんど考慮されないと言ってよいでしょう.また,コミュニケーション能力は重視されますが,話の内容が論理的かつ魅力的でしっかりしていれば,少しくらい喋りが下手でも大きな問題ではありません.

採用面接で重視される点は,
・学部生/大学院生のときに,研究に真剣かつ自分の問題として能動的に取り組んできたか,
・独創的で新規性のあるアイデアや研究を進めるうえでの工夫を自発的に発想することができるか,
・研究上の困難を自身の力で乗り越えるだけの情熱と精神的な強さを備えているか,
・研究内容をわかりやすく,おもしろく,元気よく,情熱をもって説明することができるか,
・魅力的な特徴や能力を備えているか
といった点だと思います.

来年度の就職活動に向けて,M1の皆さんの活動もすでに始まっているようです.M1だけでなくB4の人たちも,いまのうちにM2の先輩たちの体験談を聞いておくといいですね.

M2のみなさん,本当におつかれさまでした.そして,おめでとうございます!!

第703回 曽先生のお祝いセレモニー

2023.10.13

本研究室の曽 智先生が10月1日付で,広島大学大学院先進理工系科学研究科の助教から准教授に昇任されました.

昇任を祝して,10月6日の2023年度後期第1回全体ゼミでセレモニーを行いました.曽先生,おめでとうございます!今後,益々のご活躍を期待しています!!

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略歴
1982年11月16日,広州に生まれる.2010年広島大学大学院工学研究科博士課程後期修了.2009年~2010年学術振興会特別研究員(DC2),2010年~2013年学術振興会特別研究員(PD).2013年広島大学大学院工学研究院 助教,2023年広島大学大学院先進理工系科学研究科 准教授.
化学物質に対する生物の情報処理メカニズムに着目し,線虫(Caenorhabditis elegans),ゼブラフィッシュ,および,ラットの嗅覚系の数理モデルに関する研究に従事.近年は,人間の生体信号や脳科学に基づく感性工学に関しても興味を持つ.
これまでにYoung Author Award The Fourteenth International Symposium on Artificial Life and Robotics 2009や日本味と匂学会論文賞(2012)などを受賞.

研究業績
英語: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/?s=Zu+Soh
日本語: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/?s=%E6%9B%BD+%E6%99%BA

第702回 2023年度後期全体ゼミを開始しました

2023.10.06

8月4日開催の第17回全体ゼミ(前期最終回)から約2カ月が過ぎ,10月6日から2023年度後期全体ゼミを開始しました.
この間,オープンキャンパス,大学院入試,各種研究会,インターンシップなどいろいろな行事がありましたが,みなさん,有意義な夏休みを過ごせたでしょうか.

8月24, 25日には大学院先進理工系科学研究科入学試験が行われ,博士課程後期10月入学生1名,博士課程前期4月入学生10名(推薦入試6名,一般入試4名)が合格しました.研究室内のB4はもちろん全員合格で,外部から1名が合格しました.みなさん,おめでとうございます!

9月20日には令和5年度広島大学秋季学位記授与式が広島大学サタケメモリアルホールで行われ,博士課程前期のGunarajulu Renganathanさん,Enrique Calderon Sastreさんに修士(工学)の学位が授与されました.
Gunarajuluさんは,10月1日から博士課程後期に進学し,引き続き栗田先生のもとで研究活動を続けます.Enriqueさんは就職のため東広島を離れました.
また,医学部医学科4年の桒田 遼太君,福田 亮真君は生体システム論研究室での「医学研究実習」を終了し,医学部に戻りました.今後の活躍を祈ります.

一方,10月から吉野 将さんが博士課程後期に入学しました.吉野さんは広島大学病院診療支援部臨床工学部門で,臨床工学技士として勤務されています.今後はMEグループに所属し,人工心肺装置の知能化,自動化に関する研究に取り組みます.
また夏休み期間中から,瀬川 晃生君,花本 太一君が呉工業高等専門学校専攻科プロジェクトデザイン工学専攻(電気情報系)からのインターンシップ生として研究室に参加し,曽先生のもとで研究に取り組んでいます.
みなさん,どうぞよろしくお願いします.

これから年末に向けて,修論中間発表会や各種学会・研究会での研究発表等,さまざまな行事が予定されています.
「広島大学生体システム論研究室ならでは」というオリジナリティに溢れた魅力的な研究成果を目指し,全員で協力しながら研究活動を継続していければと思います.

2023年度後期もよろしくお願いします!!

第701回 2023年度前期全体ゼミは終了しました

2023.08.04

7月に開催した卒論中間発表会,修論中間発表会も無事に終了し,生体システム論研究室2023年度前期全体ゼミは今日で終了しました.今年度は私自身が7月に体調を崩し離脱してしまいましたが,栗田先生,曽先生をはじめ,関係のみなさんのおかげでほとんどの行事を問題なく実施することができました.また,いくつかの研究費や論文が採択されるなど,研究面では充実した2023年度前期となりました.学生のみなさんもいろいろとたいへんだったと思いますが,M1,B4の新加入生も研究のスタートアップを順調に進めてくれ,いろいろな面で実りの多い2023年度前期となりました.このあと全体ゼミは10月まで夏休みに入ります.夏休み期間中は各自の状況に合わせて,それぞれ有意義な時間を過ごすとよいでしょう.大学院博士課程入学試験を受験予定のみなさんは,8月24日,25日の大学院入試に向けてしっかりがんばってください!健闘を祈ります.ではみなさん,引き続き感染予防に気をつけながら良い夏休みをお過ごしください!

第700回 卒論中間発表会2023

2023.07.28

7月14日,28日の2日間,2023年度生体システム論研究室卒論中間発表会を開催しました.

生体システム論研究室では,毎年7月に卒論中間発表会を行っています.4年生の卒論テーマが決まったのが4月で,実際に研究テーマに取り組み始めたのは5月頃ですので,7月上旬での中間発表会は時期的にはかなり早い(無茶な?)設定です.しかし,4年生前期の研究活動のマイルストーンとして,あえてこの時期に中間発表会を設定しています.

今年度は,井上 勝矢君,大本 僚輝君,岡部 陸君,木吉 達哉君,斎藤 颯君,野中 啓太郎君,藤原 幸多朗君,宮崎 裕貴君,山本 侑樹君の9名が全体ゼミでの卒論中間発表会で発表してくれました.なお,医学部医学科4年の桒田 遼太君,福田 亮真君は7月10日に開催した第79回血管弾性研究会で研究発表を行ってくれました.

今年度もCOVID-19の影響が残り新加入生の人たちは非常にたいへんだったと思いますが,全員,素晴らしい研究発表で,充実した卒論中間発表会となりました.全力で研究に取り組んだ成果が,研究結果としてだけでなく発表態度や話し方,質疑応答にも目に見える形で表れており,非常に感心しました!

新しいことに挑戦しわずかな期間でこれだけの成果を挙げることができるというのは,各自の能力がいかに高いかという事実を証明したことにほかなりません.自信を持って今後も研究に取り組んでいくとよいでしょう.ただ,各グループの先生や先輩たちの助けがなかったらこれだけの発表はできなかったのではと思います.指導をしてくれた人たちに感謝するとともに,今回の経験を次回の発表に活かせるよう引き続きがんばってください.

学部4年生から大学院にかけての数年間は,新しい知識をまるでスポンジのようにどんどん吸収することができる特別な時期だと思います.研究を始めたばかりの4年生にとっては新しい知識だけでなく,ものごとを進めていくのに必要な実行力を身につける絶好の機会でもあります.今後も,より高いレベルを目指して積極的に行動していくとよいでしょう.

4年生のみなさん,卒論中間発表,おつかれさまでした!

第699回 スマート空調システム開発プロジェクト2023-2026

2023.07.21

2023年4月に令和5年度地方大学・地域産業創生交付金交付対象事業(展開枠)「ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム」(2023~2026年度)が採択されました.生体システム論研究室はMEグループを中心として,本研究室修了生の西川 一男さん(マツダ株式会社技術研究所革新研究創成部門統括研究長兼首席研究員,広島大学デジタルものづくり教育研究センター特任教授, 博士(工学))が指揮する「スマート空調システム開発プロジェクト」に参加します.

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令和5年度地方大学・地域産業創生交付金交付対象事業(展開枠)「ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム」(2023~2026年度)
■参加機関:広島大学,県立広島大学,広島市立大学,マツダ(株),中国経済連合会,広島県商工会議所連合会,(株)広島銀行
■令和5年度交付決定額(令和5年度交付対象事業費):479,253 千円(732,010 千円)
■関連URL:
広島大学 デジタルものづくり教育研究センター
https://hudmerc.hiroshima-u.ac.jp/news/20230428160733673/
内閣府
https://www.chisou.go.jp/sousei/about/daigaku_kouhukin/pdf/230401_saitaku.pdf
広島県
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/247/monodeji.html
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地方大学・地域産業創生交付金は,地域における大学の振興及び雇用機会の創出による若者の修学・就業の促進に関する法律に基づき,地方公共団体が作成する事業計画の実施に要する経費を国が交付するものです.

「スマート空調システム開発プロジェクト」では,EV用空調のエネルギー効率(電費)の向上及び人が快適性を感じることができるパーソナルフィットの空調システムを実現する研究開発を実施します.これまで取り組んできた末梢血管剛性に関する一連の研究において,皮膚交感神経の重要な役割である体温調節機能と末梢血管剛性との関係解析についてはまだ着手できていませんでした.一連の末梢血管剛性研究の締めくくりとして研究に取り組み,最終的には「スマート空調システム」の実現に貢献できればと思っています.

みなさん,どうぞよろしくお願いします.

第698回 科学研究費2023

2023.07.14

生体システム論研究室では,広島大学から支給される運営費交付金だけでなく,学外から多額の研究費を頂いて研究活動を行っています.中でも,文部科学省と日本学術振興会の助成事業である科学研究費は,専門家による審査(ピアレビュー)を経て採否が決定される重要な研究費です.
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/main5_a5.htm
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/

2023年度も各グループの研究テーマに関連して以下の科研費の交付を受けました.

<2023年度新規採択分>

■科学研究費 挑戦的研究(開拓)(R5~R8年度)
乳児自発運動を構成する『基底運動』の発見と発達障害の超早期スクリーニングへの挑戦
研究代表者:辻 敏夫,研究分担者:秋山 倫之, 島谷 康司, 土居 裕和, 竹内 章人, 曽 智,古居 彬
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17722

■科学研究費 基盤研究(B)(R5~R7年度)
筋電位信号に対するもつれ解き表現学習法の提案とロバストな操作インタフェースの実現
研究代表者:古居 彬

■科学研究費 基盤研究(C)(R5~R7年度)
体外循環中の血球形状の定量化:「血液粘度比」の応用展開
研究代表者:岡原 重幸,研究分担者:辻 敏夫,曽 智,宮本 聡史

■科学研究費 基盤研究(C)(R5~R7年度)
磁気センサと振動マイクを用いた嚥下機能測定機器による新たな嚥下訓練の検討
研究代表者:濱本 隆夫,研究分担者:濱 聖司,辻 敏夫

■科学研究費 基盤研究(C)(R5~R8年度)
弾性ソックスによる血管の柔軟性効果の検証:血栓防止用最適化ソックス制作に向けて
研究代表者:森永 浩介,研究分担者:辻 敏夫,中原 正子

<継続分(2022年度以前採択分)>

■科学研究費 基盤研究(A)(R4~R8年度)
非侵襲マイクロニューログラフィ法の創出:血管力学モデルから末梢交感神経活動を復元
研究代表者:辻 敏夫,研究分担者:曽 智,古居 彬
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17261

■科学研究費 基盤研究(C)(R4~R6年度)
行動テストにおける生理指標の同時取得による魚類の情動状態の精密な評価
研究代表者:吉田 将之,研究分担者:曽 智

■科学研究費 基盤研究(B)(R3~R5年度)
人体モデルを用いた筋活性度推定と力覚介入によるオンライン運動感覚伝送
研究代表者:栗田 雄一

■科学研究費 基盤研究(B)(R3~R5年度)
知識埋め込み型ベイズ深層学習の提案と希少データ解析への応用
研究代表者:早志 英朗,研究分担者:古居 彬

■科学研究費 基盤研究(C)(R2~R5年度)
連続血液粘度測定法に基づく人工心肺中のマイクロバブル発生予測のモデル化と臨床応用
研究代表者:宮本 聡史,研究分担者:辻 敏夫,岡原 重幸,古居 彬

■科学研究費 基盤研究(C)(H31~R5年度)
圧流量特性モデルに基づく人工心肺装置操作支援システムの提案
研究代表者: 高橋 秀暢,研究分担者:辻 敏夫,曽 智,岡原 重幸

#過去の科研費採択情報
2022: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17305
2021: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/16808
2020: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/16213
2019: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15647
2018: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/14921
2017: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10916
2016: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10885
2015: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10858
2014: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10833
2013: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10799

厳しい経済情勢にもかかわらず,これらの研究費によってさまざまな実験装置や研究資材を購入したり,国内/国外の学会に参加することができるのはたいへんありがたいことです.私たちは,これらの研究費の原資が国民の税金で賄われていることを忘れずに,研究費を決して無駄にすることがないよう気を引き締めて研究に取り組んでいく責任があります.そして,これらの研究費に見合った新規性・独創性の高い研究成果を社会に還元するため,高いレベルの学術性と実用性を兼ね備えた研究を推進していきたいと考えています.
みなさん,引き続きよろしくお願いします.

第697回 乳児自発運動を構成する『基底運動』の発見と発達障害の超早期スクリーニングへの挑戦

2023.07.07

生体システム論研究室筋電グループを中心に取り組んできた乳児自発運動解析に関する研究が科学研究費補助金(以下,科研費)の「挑戦的研究(開拓)」に採択されました.

科研費は,人文学,社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり,基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」であり,ピアレビューによる審査を経て独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです.
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/

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2023年度科学研究費補助金 挑戦的研究(開拓)(R5~R8年度)
研究課題名「乳児自発運動を構成する『基底運動』の発見と発達障害の超早期スクリーニングへの挑戦」
■研究代表者:辻 敏夫
■研究分担者:古居 彬,曽 智,島谷 康司, 土居 裕和, 秋山 倫之,竹内 章人
■配分額(予定):25,610千円(直接経費:19,700千円,間接経費:5,910千円)

■研究概要:
世界的に発達障害児の数は増加傾向にあり,その症状の改善には早期介入が必要不可欠である.乳児期の自発運動には中枢神経系の発達特徴が現れるため,これを評価することで早期に発達障害を発見できる可能性があるが,現状の自発運動評価はと特別なライセンスを有する専門家の目視観察が必要であり,全ての児に対して検査を実施することは不可能で一般の臨床には普及していない.そこで本研究では運動学と情報科学を融合したアプローチにより,自発運動を構成する根本的な運動因子,いわば『基底運動』の発見と抽出に挑戦する.そして自発運動を包括的に評価可能な新手法を創出し,発達障害の超早期スクリーニングの実現というパラダイムシフトを目指す.まず,ビデオカメラとマットレス内蔵の音響センサを用い,乳児の自発運動を非拘束/非接触に計測可能な新しいマルチセンシング手法を確立する.次に,独自の深層潜在空間モデルと統計的因子分解に基づき,乳児の基底運動を特定する機械学習法を開発する.そして,基底運動の経時変化と発達障害との関係を明らかにするとともに,基底運動評価インデックスを提案し,世界初の超早期発達障害診断支援システムの実現を目指す.
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これまで筋電グループやMEグループで取り組んできたいくつかの研究テーマを総括するような研究内容になっています.しっかりと研究を進め,最終的には臨床現場だけでなく,日常生活において役に立つような革新的な技術を確立したいと思っています.どうぞよろしくお願いします.

第696回 【研究紹介】人工心肺装置における静脈リザーバーレベルと送血側血流量の同時制御の実現

2023.06.30

広島大学生体システム論研究室では約10年前に人工心肺に関する研究を開始し,博士課程修了生の岡原 重幸先生(純真学園大学保健医療学部 准教授),博士課程後期在学中の高橋 秀暢先生(広島国際大学保健医療学部 講師),宮本 聡史さん(広島大学病院診療支援部臨床工学部門 部門長)とともに,血液粘度推定,人工心肺装置の自動制御,血中マイクロバブル発生数の推定などの研究課題に取り組んできました.

—–これまでの研究成果————————————————

■国際学術雑誌(インパクトファクタは論文掲載時の値)

Hydrodynamic characteristics of a membrane oxygenator: modeling of pressure-flow characteristics and their influence on apparent viscosity
Shigeyuki Okahara, Toshio Tsuji, Shinji Ninomiya, Satoshi Miyamoto, Hidenobu Takahashi, Zu Soh and Taijirou Sueda
Perfusion, Vol. 30, pp.478-483, first published on December 2, 2014, doi:10.1177/0267659114562101, September 2015 (SCI, IF=1.442).

A novel blood viscosity estimation method based on pressure-flow characteristics of an oxygenator during cardiopulmonary bypass
Shigeyuki Okahara, Zu Soh, Satoshi Miyamoto, Hidenobu Takahashi, Hideshi Itoh, Shinya Takahashi, Taijiro Sueda and Toshio Tsuji
Artificial Organs, Vol.41, No.3, pp.262-275 (Thoughts & Progress), 2017 (SCI, IF=1.993).

Continuous Blood Viscosity Monitoring System for Cardiopulmonary Bypass Applications
Shigeyuki Okahara, Zu Soh, Satoshi Miyamoto, Hidenobu Takahashi, Shinya Takahashi, Taijiro Sueda and Toshio Tsuji
IEEE Transactions on Biomedical Engineering, Vol.64, No.7, pp. 1503-1512, DOI:10.1109/TBME.2016.2610968 , JULY 2017 (SCI, IF=3.577)

Online Prediction of Normal Blood Viscosity During Cardiopulmonary Bypass Using Hematocrit- and Temperature-Dependent Model
Shigeyuki Okahara, Satoshi Miyamoto, Zu Soh, Hideshi Itoh, Shinya Takahashi, and Toshio Tsuji
IEEE Access, Volume: 8, Issue:1, pp. 5611-5621, Digital Object Identifier: 10.1109/ACCESS.2019.2963355, Date of publication December 31, 2019 (SCI, IF=4.098)

Steady-state Model of Pressure-flow Characteristics Modulated by Occluders in Cardiopulmonary Bypass Systems
Hidenobu Takahashi, Zu Soh, and Toshio Tsuji
IEEE Access, Volume: 8, pp. 220962-220972, Digital Object Identifier: 10.1109/ACCESS.2020.3043470, Date of Publication: 09 December 2020 (SCI, IF=3.745)

Neural network-based modeling of the number of microbubbles generated with four circulation factors in cardiopulmonary bypass
Satoshi Miyamoto, Zu Soh, Shigeyuki Okahara, Akira Furui, Taiichi Takasaki, Keijiro Katayama, Shinya Takahashi, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 11, Article number: 549, doi.org/10.1038/s41598-020-80810-3, Published online: 12 January 2021. (SCI, IF=3.998)

■国際会議

A blood viscosity estimation method based on pressure-flow characteristics of an oxygenator during cardiopulmonary bypass and its clinical application
Shigeyuki Okahara, Toshio Tsuji, Zu Soh, and Taijiro Sueda
Proceedings of 37th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC’15), pp. 5525-5528, Milano, Italy, August 25th-29th, 2015.

Blood Viscosity Monitoring During Cardiopulmonary Bypass Based on Pressure-Flow Characteristics of a Newtonian fluid
Shigeyuki Okahara, Zu Soh, Shinya Takahashi, Taijiro Sueda and Toshio Tsuji
The 38th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC f16), pp. 2331-2334, Orlando, Florida, U.S.A., August 16th-20th, 2016.

Detection of Echinocyte during Perfusion with Oxygenator Based on Continuous Blood Viscosity Monitoring
Shigeyuki Okahara, Toshio Tsuji, Zu Soh, and Satoshi Miyamoto
Proceedings of 40th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC’18), pp. 4448-4451, Honolulu, HI, USA, July 17-21, 2018.

Automatic control of blood flow rate on the arterial-line side during cardiopulmonary bypass
Hidenobu Takahashi, Takuya Kinoshita, Zu Soh, and Toshio Tsuji
Proceedings of 43rd Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC’21), pp. 5011-5014, Virtual Conference due to COVID-19, Nov 1-5, 2021.

Neural Network-based Estimation of Microbubbles Generated in Cardiopulmonary Bypass Circuit: A Clinical Application Study
Satoshi Miyamoto, Zu Soh, Shigeyuki Okahara, Akira Furui, Keijiro Katayama, Taiichi Takasaki, Shinya Takahashi, and Toshio Tsuji
Proceedings of 44th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC’22), DOI: 10.1109/EMBC48229.2022.9871662, Glasgow, United Kingdom, 11-15 July 2022.

■特許

血液循環システムの制御装置、制御方法及びプログラム
日本国特許出願 特願2022-207247
辻 敏夫, 曽 智, 木下 拓矢, 高橋 秀暢
2022年12月23日出願
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今回新たに,曽 智先生,木下 拓矢先生(広島大学大学院先進理工系科学研究科 システム制御論研究室 助教)とともに人工心肺装置における静脈リザーバーレベルと送血側血流量の同時制御に成功し,IEEE Journal of Translational Engineering in Health & Medicineに論文がアクセプトされました.

Simultaneous Control of Venous Reservoir Level and Arterial Flow Rate in Cardiopulmonary Bypass with  a Centrifugal Pump
Hidenobu Takahashi, Takuya Kinoshita, Zu Soh, Shigeyuki Okahara, Satoshi Miyamoto, Shinji Ninomiya, and Toshio Tsuji
IEEE Journal of Translational Engineering in Health & Medicine, Volume: 11, pp.435-440, doi:10.1109/JTEHM.2023.3290951, 30 June 2023. (SCI, IF=3.4)
URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/10168928
PDF: https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=10168928

この論文は高橋先生の博士学位論文の一部になる予定です.今後も本研究チームとともに研究を継続し,臨床での研究成果につなげていければと思っています.ひきつづきよろしくお願いします.

<論文内容>
Cardiopulmonary bypass (CPB) is an indispensable technique in cardiac surgery, providing the ability to temporarily replace cardiopulmonary function and create a bloodless surgical field. Traditionally, the operation of CPB systems has depended on the expertise and experience of skilled perfusionists. In particular, simultaneously controlling the arterial and venous occluders is difficult because the blood flow rate and reservoir level both change, and failure may put the patient’s life at risk. This study proposes an automatic control system with a two-degree-of-freedom model matching controller nested in an I-PD feedback controller to simultaneously regulate the blood flow rate and reservoir level. CPB operations were performed using glycerin and bovine blood as perfusate to simulate flow-up and flow-down phases. The results confirmed that the arterial blood flow rate followed the manually adjusted target venous blood flow rate, with an error of less than 5.32%, and the reservoir level was maintained, with an error of less than 3.44% from the target reservoir level. Then, we assessed the robustness of the control system against disturbances caused by venting/suction of blood. The resulting flow rate error was 5.95%, and the reservoir level error 2.02%. The accuracy of the proposed system is clinically satisfactory and within the allowable error range of 10% or less, meeting the standards set for perfusionists. Moreover, because of the system’s simple configuration, consisting of a camera and notebook PC, the system can easily be integrated with general CPB equipment. This practical design enables seamless adoption in clinical settings. With these advancements, the proposed system represents a significant step towards the automation of CPB.

心肺バイパスは心臓手術において不可欠な手技であり,一時的に心肺機能を代替し,無血の術野を形成する能力を提供する.従来,人工心肺装置の操作は熟練した灌流技師の専門知識と経験に依存していた.特に,動脈と静脈のオクルーダを同時に制御することは,血流量とリザーバーレベルの両方が変化するため困難であり,失敗すれば患者の生命を危険にさらすことになりかねない.本研究では,I-PDフィードバックコントローラに2自由度モデルマッチングコントローラをネストした新たな自動制御システムを提案し,血流量とリザーバレベルを同時に調節する.灌流液としてグリセリンと牛血液を用いて人工心肺操作を行い,フローアップ期とフローダウン期をシミュレートした.その結果,送血血流量は手動で調整した目標脱血血流量に追従し誤差は5.32%以下であり,リザーバーレベルは目標リザーバーレベルから3.44%以下の誤差で維持されることが確認された.次に,血液の排出/吸引によって引き起こされる外乱に対する制御システムのロバスト性を評価した.その結果,流量誤差は5.95%,リザーバレベル誤差は2.02%であった.提案されたシステムの精度は臨床的な許容誤差範囲である10%以内であり,灌流技師の基準を満たすものである.さらに,本システムはカメラとノートPCからなるシンプルな構成であるため,一般的な人工心肺装置と容易に統合することができる.この実用的な設計により,臨床現場でのシームレスな導入が可能となった.これらの進歩により,提案されたシステムは人工心肺操作の自動化に向けた重要な一歩となる.

第695回 はじめての全体ゼミ発表2023

2023.06.23

2023年6月16日,6月23日に開催した全体ゼミで,4年生9名がはじめての研究発表を行いました.

研究室に配属されてまだ約3ヶ月の4年生ですが,全員,はじめての全体ゼミ発表とは思えないほどの充実した研究発表で,堂々とした発表態度にも非常に感心しました.研究内容もよく進んでおり,全力で発表準備に取り組んだ成果が見事に表れていたと思います.

全体ゼミで発表を行う目的は以下の点にあります.

◆研究発表の組み立て方を学ぶこと
◆プレゼンテーション用スライドの作成法を学ぶこと
◆プレゼンテーションでの話し方を学ぶこと
◆人に説明できるレベルにまで研究テーマの理解度を深めること
◆発表できるレベルまで研究を進めること
◆大勢の前で評価されながら研究発表を行うという経験を積むこと
◆予想していないような質問にも臨機応変に対応できる力を養うこと

今年度もすべての研究発表を録画してTeamsにアップロードしています.自分の発表動画を確認しながら,上記の各項目に対する自身の到達度を自己評価しておくとよいでしょう.次回の発表準備をするときにも非常に役立つと思います.

研究発表において最も大切なことは,研究に対する熱意を示すことと自分の能力の高さをアピールすることだと思います.
いずれ聴衆の前で研究発表を行う機会があると思いますが,大きな声で聴衆に語りかけるような発表態度や充実した研究結果,準備に手間をかけたきれいで分かりやすいスライドなどには発表者の熱意を感じます.また,発表内容や質疑応答の中に深い考察や新しいアイデアが含まれているような人には大きな魅力を感じます.発表評価アンケートのコメントも参考にしながら,次回以降もより高いレベルの発表を目指して少しずつ改善していくとよいでしょう.

7月の卒論中間発表会に向けて,引き続きがんばってください!!

第694回 広島大学大学院リサーチフェローシップ2023

2023.06.16

広島大学では,将来の我が国の科学技術・イノベーション創出の重要な担い手となる博士後期課程進学者をサポートするため,「広島大学大学院リサーチフェローシップ制度」,「広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム」,「広島大学女性科学技術フェローシップ制度」を実施しています.
https://fellowship.hiroshima-u.ac.jp/

■大学院リサーチフェローシップ制度
https://fellowship.hiroshima-u.ac.jp/research/

■創発的次世代研究者育成・支援プログラム
https://fellowship.hiroshima-u.ac.jp/next-gen/

■女性科学技術フェローシップ制度
https://www.hiroshima-u.ac.jp/diversity_stem/fellowship

広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラムに応募していたD2の城明 舜磨君が,昨年度に引き続き広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラムの「次世代フェロー(最上位フェロー)」に採用されました.おめでとうございます!

城明 舜磨
広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム 次世代フェロー(最上位フェロー)(2023)

また,一般学生だけでなく社会人学生に対しても授業料相当額が支給される広島大学大学院先進理工系科学研究科研究奨学金制度(返済不要)も用意されており,博士課程の学生が安心して研究に集中できる環境が整えられています.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/adse/syougakukin

大学院博士課程への進学を考えている人にとっては非常に良い制度です.博士課程進学希望者は参考にするとよいでしょう.

第693回 故 三戸 景永君を偲んで

2023.06.09

生体システム論研究室博士課程後期在学中の三戸 景永(みと あきひさ)君が令和5年6月5日にお亡くなりになりました.突然の悲報に接し,生体システム論研究室メンバー一同,言葉を失っています.

三戸君は大学入学後に肺高血圧症を発症し,それから約10年間,治療を続けながら勉学に励んできました.昨年の後半から体調を崩し,肺高血圧症の専門医がおられる岡山医療センターに入院していましたが,治療の甲斐なく帰らぬ人となりました.

三戸君は熱心に勉学に取り組み,入退院を繰り返しながらも健常な学生と同じペースで進級し,2014年に生体システム論研究室に配属されました.学部卒業後,大学院博士課程前期に進学し,修士(工学)の学位を取得後,博士課程後期に進学しました.研究テーマは「圧電センサを利用した非侵襲連続血圧計の開発と生体情報モニタリングへの応用」で,MEグループに所属し,さまざまな研究課題に取り組んできました.また,昨年4月からは広島市役所に就職し,働きながら社会人学生を続けていました.博士学位論文の内容もほぼ完成しており,健康状態さえ問題なければあと少しで博士(工学)の学位を取得できるところでした.

三戸君は難病を患っていたにもかかわらず,非常に明るく前向きな性格で,何事にも研究熱心で人の何倍もの努力を続ける強い意志を持っていました.また優秀なだけでなく,優しく思いやりのある性格で,後輩の世話や研究指導を積極的に行ってくれていました.こんなに早く三戸君の訃報に接することになるとは,本当に痛恨の極みとしか言いようがありません.

6月6日には通夜が,7日には告別式が広島市の平安祭典広島北会館で執り行われました.生体システム論研究室を代表し心より哀悼の意を表しますとともに,謹んでご冥福をお祈りいたします.

広島大学 生体システム論研究室 教授
辻 敏夫

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三戸 景永君研究業績一覧

■卒業論文
電磁誘導を利用した触診可能非侵襲連続血圧計

■修士論文
Unconstrained Monitoring of Biological Signals Using an Aortic Pulse Wave Sensor

■受賞
SICE Annual Conference Young Author’s Award
The SICE (Society of Instrument and Control Engineers) Annual Conference 2019 (SICE 2019)

■国際学術雑誌論文
Estimation of Arterial Viscosity Based on an Oscillometric Method and Its Application in Evaluating the Vascular Endothelial Function
Hiroshi Tanaka, Akihisa Mito, Harutoyo Hirano, Zu Soh, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Yukihito Higashi, Masao Yoshizumi, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 9, Article number: 2609, doi:10.1038/s41598-019-38776-4, Published online: 22 February 2019. (SCI, IF=4.259)

Unconstrained Vital Sign Monitoring System Using an Aortic Pulse Wave Sensor
Naoki Hagiyama, Harutoyo Hirano, Akihisa Mito, Zu Soh, Etsunori Fujita,Yumi Ogura, Shigehiko Kaneko, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi, Kawamoto, Masao Yoshizumi, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 9, Article number: 17475,doi:10.1038/s41598-019-53808-9, Published online: 25 November 2019.(SCI, IF=4.011)

Recurrent Probabilistic Neural Network-based Short-term Prediction for Acute Hypotension and Ventricular Fibrillation
Toshio Tsuji, Tomonori Nobukawa, Akihisa Mito, Harutoyo Hirano, Zu Soh, Ryota Inokuchi, Etsunori Fujita, Yumi Ogura, Shigehiko Kaneko, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, and Masao Yoshizumi
Scientific Reports, volume 10, Article number: 11970, doi:doi.org/10.1038/s41598-020-68627-6, Published online: 20 July 2020. (SCI, IF=4.011)

■国際会議論文
Unconstrained Monitoring of Biological Signals Using an Aortic Pulse Wave Sensor
Naoki Hagiyama, Akihisa Mito, Harutoyo Hirano, Zu Soh, Etsunori Fujita, Yumi Ogura, Ryuichi Uchikawa, Shigehiko Kaneko, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Masao Yoshizumi and Toshio Tsuji
Proceedings of 40th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC’18), pp. 4327-4330, Honolulu, HI, USA, July 17-21, 2018.

Unconstrained Monitoring of Pulse Pressure Waves from the Surface of the Subject’s Back
Akihisa Mito, Harutoyo Hirano, Naoki Hagiyama, Zu Soh, Etsunori Fujita, Yumi Ogura, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Masao Yoshizumi, and Toshio Tsuji
Proceedings of the SICE Annual Conference 2019, pp. 39-44, September 10-13, Hiroshima, Japan, 2019.

■国内学会発表論文
電磁誘導を利用した触診可能連続血圧計測センサの開発
平野 陽豊,三戸 景永,栗田 雄一,神鳥 明彦,佐野 佑子,張 裕華,中村 隆治,佐伯 昇,河本 昌志,吉栖 正生,辻 敏夫
第59回システム制御情報学会研究発表講演会(SCI’15)講演論文集,345-6,2015.

電磁誘導を利用した触診可能非侵襲連続血圧センサの開発:連続血圧較正法の検討
三戸 景永,平野 陽豊,平野 博大,栗田 雄一,神鳥 明彦,佐野 佑子,張 裕華,中村 隆治,佐伯 昇,河本 昌志,吉栖 正生,辻 敏夫
第16回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演(SI2015),SY0011/15,2015-12-15,pp.1152-1154, 2015.

オシロメトリック法に基づく血管粘性推定法の提案と血管内皮機能評価への応用
田中 敬士,三戸 景永,松本 遼,平野 博大,曽 智,栗田 雄一,平野 陽豊,鵜川 貞二,中村 隆治,佐伯 昇,河本 昌志,東 幸仁,吉栖 正生,辻 敏夫
日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス講演会2016講演論文集,1A2-02b6(1)-(4),2016年6月

オシロメトリック法を利用した非侵襲血管粘性計測に基づく動脈硬化ハイリスク群のスクリーニング
田中 敬士,三戸 景永,曽 智,栗田 雄一,平野 陽豊,鵜川 貞二,中村 隆治,佐伯 昇,河本 昌志,東 幸仁,吉栖 正生,辻 敏夫
第25回計測自動制御学会中国支部学術講演会論文集,1C-3 pp.34-35,2016年11月.

脈拍触診が可能な電磁誘導型簡易連続血圧計の開発
萩山 直紀 , 三戸 景永, 栗田 雄一, 平野 陽豊, 神鳥 明彦, 佐野 佑子, 張 裕華, 中村 隆治, 佐伯 昇, 河本 昌志, 吉栖 正生, 辻 敏夫
第25回計測自動制御学会中国支部学術講演会論文集,1C-5 pp.38-39,2016年11月.

電磁誘導を用いた触診可能連続血圧計の開発と足背動脈圧波形計測への応用
平野 陽豊,萩山 直紀,三戸 景永,中村 隆治,佐伯 昇,河本 昌志,吉栖 正生,辻 敏夫
第58回日本脈管学会総会予稿集 Vol.57,Supplement,O-12-2,s158,2017年10月.

背部体表脈波音波を用いた疑似心音と疑似呼吸波形の再生
藤田 悦則, 小倉 由美, 前田 慎一郎, 中島 可南子, 金子 成彦, 平野 陽豊, 萩山 直紀, 三戸 景永, 曽 智, 中村 隆治, 佐伯 昇, 河本 昌志, 辻 敏夫, 吉栖 正生
脈管学, Vol.58, Supplement(第59回日本脈管学会総会予稿集), p. S197, 2018.

椅子型体表脈波計測システムを用いた心拍数と呼吸数の無拘束計測
平野 陽豊,萩山 直紀,三戸 景永,曽 智,藤田 悦則,小倉 由美,内川 竜一,金子 成彦,神谷 諭史,中村 隆治,佐伯 昇,河本 昌志,吉栖 正生,辻 敏夫
脈管学, Vol.58, Supplement(第59回日本脈管学会総会予稿集), p. S131, 2018.

補正粘性インデックスに基づく血管内皮機能評価法の提案
田淵 元太,平野 陽豊,浜崎 健太,三戸 景永, 曽 智,神谷 諭史,中村 隆治,佐伯 昇,河本 昌志,東 幸仁,吉栖 正生,辻 敏夫
第58回日本生体医工学会大会プログラム・抄録集, Vol. 58, 3-PM-PO-B1  PO-B-137, p.303, 2019年6月

筋交感神経活動に基づく人間の疼痛評価
秋吉 駿,古居 彬,平野 陽豊,隅山 慎,棟安 俊文,三戸 景永,曽 智,笹岡 貴史,吉野 敦雄,神谷 諭史,中村 隆治,佐伯 昇,吉栖 正生,河本 昌志,山脇 成人,辻 敏夫
第58回日本生体医工学会大会プログラム・抄録集, Vol. 58, 3-PM-PO-B1 PO-B-138,2019年6月
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第692回 Bsys研究会2023

2023.06.02

生体システム論研究室では,研究分野ごとの研究会を定期的に開催しています.
研究会では,各グループメンバーだけでなく共同研究者の方々を交えてディスカッションを行います.共同研究者は他学部・他大学・病院などの先生方や企業・公的研究機関等の研究者で,その専門分野も電気システム情報分野にとどまらず,医学,脳科学,心理学,保健福祉,生物学など多岐にわたっています.

2023度は主に8つの研究会を開催します.

■筋電義手・バイオリモート研究会
■血管弾性研究会
■COI研究会(末梢血管剛性関連,匂い関連)
■脳波関連研究会
■高次脳機能研究会(生体機能計測関連,脳機能評価関連)
■乳幼児発達研究会
■ゼブラフィッシュ電気生理研究会
■picoleaf研究会(脈波,インタフェース)
■スマートCPB研究会

筋電義手・バイオリモート研究会は発足当時のバイオリモート研究会時代から数えて通算93回(筋電義手研究会は63回),血管弾性研究会は78回開催しています.COI研究会,脳波関連研究会,乳幼児発達研究会,ゼブラフィッシュ電気生理研究会は通算回数は不明ですが,ほぼ毎月開催しています.さらに企業との共同研究会として,日立製作所,マクセルとの高次脳機能研究会,三菱ケミカルとのCOI研究会(匂い関連),生分解圧電フィルムセンサを用いた村田製作所,イアフレドとのpicoleaf研究会,新たな次世代人工心肺装置の開発を目的とした泉工医科工業とのスマートCPB研究会を開催しています.

上記の研究会だけでなく,他にも研究テーマごとに定期的な研究打ち合わせを行っており,いずれも各分野の専門家の先生方と交流ができ,研究会を通じて学界や社会に関する最新の情報を得ることもできる貴重な機会です.

研究会で発表する際には,研究室外の方にもわかりやすく説得力のあるストーリーを組み立てる必要があり,研究発表の良い訓練になります.4年生のみなさんは最初は緊張すると思いますが,慣れれば必ず落ち着いて発表できるようになります.各分野の専門家の先生方と堂々とディスカッションできるようになれば自分に力がついた証拠であり,そのことが自信につながっていくと思います.

各研究会とも学問領域の境界を超えた学際的な研究に取り組んでおり,産学連携や医工連携活動を通じて有意義な研究成果を世の中に発信していければと考えています.

第691回 【研究紹介】ヒトの肺活量を咳嗽音から推定した咳嗽時最大呼気流速 (cough peak flow)を用いて機械学習的に推定する

2023.05.26

広島大学生体システム論研究室では,博士課程修了生の馬屋原 康高先生(広島都市学園大学 健康科学部リハビリテーション学科 教授)を中心に,咳嗽音の評価と応用に関する研究に取り組んできました.

Estimation of Cough Peak Flow Using Cough Sounds
Yasutaka Umayahara, Zu Soh, Kiyokazu Sekikawa, Toshihiro Kawae, Akira Otsuka, and Toshio Tsuji
Sensors 2018, Vol. 18, No. 7, 2381 (1-13) Published online 22 July 2018; DOI: 10.3390/s18072381. (SCI, IF=2.475)

A Mobile Cough Strength Evaluation Device Using Cough Sounds
Yasutaka Umayahara, Zu Soh, Kiyokazu Sekikawa, Toshihiro Kawae, Akira Otsuka, and Toshio Tsuji
Sensors, Vol. 18, Issue. 11, 3810 (pp. 1-13), DOI:10.3390/s18113810, November 2018. (SCI, IF=2.475)

Clinical Significance of Cough Peak Flow and Its Non-contact Measurement via Cough Sounds: A Narrative Review
Yasutaka Umayahara, Zu Soh, Kiyokazu Sekikawa, Toshihiro Kawae, Akira Otsuka, and Toshio Tsuji
Applied Sciences, 10(8), 2782, doi.org/10.3390/app10082782, 17 April 2020. (SCI, IF=2.217)

Ability to Cough Can Be Evaluated through Cough Sounds: An Experimental Investigation of Effects of Microphone Type on Accuracy
Yasutaka Umayahara, Zu Soh, Tomoko Ozaki, Takafumi Murakami, Akira Otsuka, and Toshio Tsuji
Proceedings of the 2017 IEEE/SICE International Symposium on System Integration (SII), pp. 936-941, 2017.

咳嗽力評価の臨床的意義と今後の研究
馬屋原 康高, 関川 清一, 河江 敏広, 曽 智, 大塚 彰, 辻 敏夫
理学療法の臨床と研究, 第28号, pp.9-14, 2019.

咳嗽能力評価装置、咳嗽能力評価システム、咳嗽能力評価方法及びプログラム
日本国特許出願 2018-103992, 特開2019-005562, 特許第7134429号
馬屋原 康高,曽 智,大塚 彰,辻 敏夫
2018年5月30日出願, 2019年1月17日公開, 2022年9月2日登録

今回新たに,咳の音の大きさから肺活量を機械学習的に推定できることを見い出し,Scientific Reports誌に論文が掲載されました.

Cough sound-based estimation of vital capacity via cough peak flow using artificial neural network analysis
Yasutaka Umayahara, Zu Soh, Akira Furui, Kiyokazu Sekikawa, Tsuyoshi Imura, Akira Otsuka and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 12, Article number: 17649, doi:10.1038/s41598-023-35544-3, Published online: 25 May 2023. (SCI, IF=4.996)
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-023-35544-3
PDF: https://www.nature.com/articles/s41598-023-35544-3.pdf

今後も馬屋原先生とともに本技術の社会実装を進め,臨床での研究成果につなげていければと思っています.ひきつづきよろしくお願いします.

<論文内容>
This study presents a novel approach for estimating vital capacity using cough sounds and proposes a neural network-based model that utilizes the reference vital capacity computed using the conventional lambda-mu-sigma method and the cough peak flow computed based on the cough sound pressure level as inputs. A total of 56 samples of cough sounds and vital capacities were collected from 31 young and 25 elderly participants. Model performance was evaluated using squared errors, and statistical tests including the Friedman and Holm tests were conducted to compare the squared errors of the different models. The proposed model achieved a significantly smaller squared error (p<0.001) than the other models. Subsequently, the proposed model and the cough sound-based estimation model were used to detect whether a participant’s vital capacity was lower than the typical lower limit. The proposed model demonstrated a significantly higher area under the receiver operating characteristic curve (0.831, p<0.001) than the other models. These results highlight the effectiveness of the proposed model for screening decreased vital capacity.

本研究では,咳嗽音を用いて肺活量を推定する新しいアプローチを提示し,従来のlambda-mu-sigma法を用いて計算した肺活量と咳音圧レベルを基に計算した咳嗽時最大呼気流速を入力とする機械学習モデルを提案した.若年群31名と高齢群25名から合計56サンプルの咳嗽音と肺活量を収集した.モデルの性能は自乗誤差で評価し,Friedman検定やHolm検定などの統計検定を行い,異なるモデルの自乗誤差を比較した.提案モデルは他のモデルよりも有意に小さな自乗誤差(p<0.001)を達成した.さらに提案モデルを用いて,参加者の肺活量が標準下限値より低いかどうかを検出した.提案モデルでは,他のモデルに比べてROC曲線から求めたAUC値が有意に高い(0.831, p<0.001)ことが示された.これらの結果は,肺活量の低下をスクリーニングする提案モデルの有効性を示している.

第690回 発表評価アンケート2023

2023.05.19

生体システム論研究室では,毎週開催している全体ゼミで学部4年生と大学院博士課程前期学生が研究発表を行っています.

今年度もMicrosoft Teamsによるリモートで全体ゼミを開催しており,毎週金曜日に発表者がプレゼンテーションを行っている様子を研究室内のゼミ室からライブ配信しています.発表者はPowerPointで作成したスライドにより,研究目的,内容,進捗状況,結果,考察などを説明し,聴講者はMicrosoft Formsによりそのプレゼンテーションを評価します.

評価方法はアンケート形式で,Formsの評価項目は以下のとおりです.

1. 視聴覚・情報機器の使い方は効果的でしたか
2. 発表者の声,話し方は聞き取りやすかったですか
3. 理解すべき重要な箇所が強調されるなど,発表の説明はわかりやすかったですか
4. 発表に対する発表者の熱意を感じましたか
5. 研究内容は興味深いものでしたか
6. 前回の発表からの進展に満足しましたか
7. 総合的に判断して,この発表に満足しましたか
8. コメント(自由記述)

1~7の項目に対しては5点,4点,3点,2点,1点の5段階評価としていますので,最高点は35点,最低点は7点です.全体ゼミ終了後,全員のアンケート結果をFormsにより自動集計して,発表者を除く全評価者による評価合計点の平均点を計算し,これを各発表者の総合得点としています.また,総合得点35点を100%,7点を0%として得点率を算出しています.

オール4点が得点率75%ですので,得点率80%以上を優れた発表の目安としています.発表者には総合得点および得点率とともに,記入者名を削除したアンケート結果をフィードバックします.また発表内容をまとめた全体ゼミの議事録の中で,高得点を獲得した優秀発表者を学年ごとに表彰しています.

聴講者による発表評価アンケートを行う目的は大きく分けて以下の2点です.

(1) 発表者に聴講者の感想や意見をフィードバックし,発表内容,研究内容を改善するための手掛かりを与えること
(2) 聴講者に緊張感のある積極的な聴講を促すとともに,的確な質問やコメントを行うための能力を養うこと

全体ゼミでの発表と聴講は自分の力を高めるための絶好の機会であり,はじめは戸惑うと思いますが1年後には必ずその成果が表れます.
発表者は得点率80%以上の優秀発表を目指して,また聴講者は鋭く有意義なコメントができるよう,互いにリスペクトと思いやりの気持ちを忘れることなく真摯に取り組むとよいでしょう.

今年度も優秀発表者表彰を目指してがんばってください!!

第689回 全体ゼミ議事録&コラム2023

2023.05.12

生体システム論研究室では,前期/後期の授業期間中,研究室メンバー全員が参加可能なセミナー「全体ゼミ」を毎週行っており,その内容を「広島大学生体システム論研究室:議事録」としてメールマガジン形式で配信しています.

議事録の内容は,研究室のニュースやお知らせ,各研究会の今後の予定,研究発表者の発表内容まとめと質疑応答メモ,発表評価アンケート結果などです.また,議事録冒頭に記載した研究室ニュースや研究トピックスなどに関する話題は,研究室ホームページのコラムやトピックスにアップしています.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news_list/column
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news_list/topics

全体ゼミ議事録やコラム,トピックスから,生体システム論研究室の現在の活動概要を知っていただくことができます.特にコラムは連載開始から今日で第689回となり,卒業生・修了生の中にもこのコラムを定期的にチェックしている人がたくさんいるようです.

過去のコラムから,参考になりそうないくつかの記事をピックアップしておきます.

■生体システム論研究室って?:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10624
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10625

■サイバネティクスを超えて:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10740
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10741

■論文投稿のすすめ:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10647
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10648
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10649

■魅力的な発表のためのチェックリスト:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10725

■英語論文の作成:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17024
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17497

■インパクトファクター,被引用回数,h指数,g指数:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/14596
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/14609
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15203
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15935

■博士学位への道:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15530
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15541
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15571
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15966
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15986

■広島大学大学院リサーチフェローシップ:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17240

2023年度も全体ゼミ議事録とコラムを通じて,さまざまな研究室情報を発信していければと思います.

第688回 広島大学選抜助教

2023.04.28

広島大学では,2023年度から新たに「選抜助教」(特任助教,フルタイム)を新設しました.これは,博士課程後期修了後の若手研究者を雇用し育成するための制度で,若手研究者にとっては新たなキャリアパスの一つと考えることができます.

本研究室の博士課程後期修了生の許 自強君が2023年4月1日付で,広島大学 大学院先進理工系科学研究科 電気システム制御プログラムに選抜助教として採用されました.任期は2年間で,任期終了時に広島大学育成助教等に応募することができます.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/people/faculty-members/16103
https://www.ziqiangxu.com/

許先生,おめでとうございます!益々のご活躍を期待しています!

第687回 生体システム論研究室ホームページ2023

2023.04.21

新メンバーを迎え,研究室ホームページを2023年度バージョンに更新しました.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/

研究室ホームページの最上部と最下部には,以下に示す7つのメニュー項目が用意されています.

■研究室概要:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/about
生体システム論研究室とは
研究室の特色
5つの研究テーマ
研究グループ
研究業績
共同研究
倫理委員会承認済み研究
■メンバー:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/people
教員
協力教員
秘書
共同研究者
博士課程後期
博士課程前期
学部生
■研究紹介:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research
最近の代表的な研究の紹介
■研究業績:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications
国際学術雑誌
国内学術雑誌
国際会議
国内講演会
著書(英語)
著書(日本語)
解説
博士学位論文
修士論文
卒業論文
招待講演
受賞
記事
放送
展示会・見学会
特許
所属学会
学会等委員・役員
■プロジェクト:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/project
現在進行中のプロジェクト
過去のプロジェクト
■ニュース:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news
更新履歴
トピックス
コラム
■スケジュール:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/cal

生体システム論研究室ではホームページから研究室に関する情報をできるだけ多く発信したいと考えており,授業期間中に実施している全体ゼミのあとに掲載内容の更新を行っています.昨年度に引き続き研究室ホームページの管理・運営は,許 自強先生が担当してくれています.全体ゼミ議事録でお知らせしたニュースのうち公開可能な情報は許先生がホームページにアップしてくれ,ホームページ全体が研究室のインターネットアーカイブとして機能しています.

特に,研究業績のページではこれまでに発表した研究論文(学術雑誌論文,国際会議発表論文),解説,記事,book chapterなどの情報を閲覧することが可能で,生体システム論研究室の過去の研究成果の全貌をオンラインで参照することができます.一部の研究論文についてはPDFをダウンロードすることもできますので,研究室に新加入したメンバーにとっては自分の研究テーマに関連する過去の論文を調べるときにたいへん便利です.また,右上にある検索窓を使ってキーワードで検索すれば,そのキーワードを含むすべての研究業績情報を一覧することができます.研究室外の方も自由に閲覧可能で,生体システム論に関連した研究に取り組んでおられる方々の参考になればと思っています.

生体システム論研究室ホームページに関してお気づきの点,修正点等の情報がありましたらぜひお知らせください.今年度もさまざまな研究室情報を発信できればと思っています.

第686回 令和4年度(2022年度)生体システム論研究室卒業式/修了式

2023.04.14

令和4年度(2022年度)広島大学学位記授与式(卒業式,修了式)は,2023年3月23日11時から東広島運動公園にて行われました.2022年度の卒業・修了生は,学部2,391人,専攻科11人,大学院1,209人,合計3,611人(うち留学生256人)でした.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/75911

午後からはまず広島大学サタケメモリアルホールにおいて,工学部第二類(電気電子・システム情報系)・大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム合同の学位記授与式が行われました.その後,広島大学ミライクリエにおいて生体システム論研究室の学位記授与式を行いました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/memorialhall/about
https://miraicrea.hiroshima-u.ac.jp/

生体システム論研究室の学位記授与式では,卒業生,修了生に卒業証書/修了証書を手渡すことができ,和やかな雰囲気で卒業式/修了式を行うことができました.新築されたミライクリエ1階の多目的スペースは洗練されたデザインで,生涯忘れられないような特別な一日になったのではと思います.
https://miraicrea.hiroshima-u.ac.jp/commu-confe/

お祝いの花束を贈ってくださった本研究室修了生の鈴木芳代さん(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構),会場の準備を一手に引き受けてくださった野口友枝さん,豊田紀子さんに感謝します.
卒業生,修了生のみなさんがそれぞれの道で活躍されることを祈っています!

第685回 生体システム論研究室,2023年度(令和5年度)のキックオフ!!

2023.04.07

広島大学生体システム論研究室は2023年度全体ゼミを開始しました.3年間続いたCOVID-19によるパンデミックもようやくほぼ終息し,世界は活気を取り戻しつつあるようです.今年度はコロナ以前の活動に少しずつ戻しながら,研究室メンバー全員で力を合わせて研究・教育活動に取り組んでいきたいと思っています.

2023年3月23日に令和4年度(2022年度)広島大学学位記授与式(卒業式)が行われ,本研究室から博士課程前期12名,学部10名の計22名が修了・卒業しました.

まず,博士課程前期修了生には修士(工学)の学位が授与されました.修了生の池田 開君,岡田 航介君,兼折 美帆さん,金本 拓馬君,楠 崚斗君,熊谷 遼君,黒田 悠太君,立原 蒼生君,玉井 太一君,陳 崧志君,橋本 悠己君,増永 准也君は,就職のためそれぞれの勤務地に旅立ちました.

次に学部卒業生の上田 達也君,岡田佑太君,河本 啓吾君,篠原 大晟君,竹田 悠真君,中川 康太君,中西 大樹君,幡 祐輔君,藤田 真稔君,米井 陸也君の10名には学士(工学)の学位が授与されました.岡田君は就職のため東広島を離れましたが,あとの9名は本学大学院先進理工系科学研究科博士課程前期に進学し,引き続き生体システム論研究室で研究を継続します.

研究室を離れた人たちとちょうど入れ替わるようにして,新しいメンバーが本研究室に加入しました.
まず博士課程後期に畑元 雅璃君(株式会社NTTドコモ)が入学しました.畑元君は2021年度博士課程前期修了生(筋電グループ)で,引き続き睡眠脳波に関する研究で博士学位の取得を目指します.

博士課程前期には井上 侑香さん(和歌山大学卒業),李 昊南君(中国東北大学卒業),岩本 英憲君(徳山高専専攻科修了),NESMA MOHAMED EZZATさん(エジプト ナイル大学卒業)が入学しました.井上さん,李君は筋電グループ,岩本君,EZZATさんはヒューマンモデリンググループに所属して研究を開始します.また,ドイツでインターンシップを行っていた上田 怜奈さんも無事に帰国し,筋電グループで研究を再開します.

そして11名の学部4年生が研究室に配属されました.工学部第二類からは井上 勝矢君,大本 僚輝君,岡部 陸君,木吉 達哉君,斎藤 颯君,野中 啓太郎君,藤原 幸多朗君,宮崎 裕貴君,山本 侑樹君の9名です.また,医学部医学科から桒田 遼太君,福田 亮真君の2名が医学研究実習を行うため研究室に配属されました.

また博士学位取得後,2022年10月から本研究室の研究員を務めていた許 自強君が2023年4月3日に大学院先進理工系科学研究科の選抜助教(特任助教)に採用されました.今後2年間,生体システム論研究室において研究・教育活動を続けます.

2023年度も素晴らしいメンバーが研究室に集まってくれました.最初はいろいろと戸惑うこともあるかと思いますが,臆することなく何事にも積極的に取り組んでいくとよいでしょう.研究生活を通じて,新しい経験が力となって蓄積されていくことを実感できると思います.各研究グループのみなさん,共同研究者のみなさん,サポートをよろしくお願いします.

2023年度の研究室メンバー構成は,教員4名,協力教員2名,秘書2名,博士課程後期学生12名,博士課程前期学生25名,工学部生9名,医学研究実習生2名の計56名となりました.今年度もメンバー全員が切磋琢磨しながらオリジナリティに溢れた魅力的な研究に取り組み,少しでも世の中の役に立つような研究成果を発信していければと思っています.

本年度もどうぞよろしくお願いします!

第684回 2022年度全体ゼミは今日で終了しました

2023.02.28

2023年2月13日(月)に卒業論文発表会,2月21日(火)に修士論文発表会が終了し,今日の全体ゼミが2022年度最終回となりました.

#卒業論文発表会,修士論文発表会については以下のページをご覧ください.
卒業論文発表会:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17515
修士論文発表会:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17519

卒業生,修了生のみなさんには心からの祝福を送ります.研究室でのみなさんの成長には,若い力の限りない可能性を感じました.これからも視野を広く持ってさらなる挑戦を続けていってください.想定外の困難にも負けない強い意志で素晴らしい未来を切り拓いていかれることを祈っています.

2022年度は地政学的なリスクが急激に高まり,世界的なインフレーションや長引くCOVID-19の影響で先が読めないような激動の一年となりました.このような状況下でも生体システム論研究室としては例年通り順調に活動することができ,就職活動,入試などの学生の活動も充実した年になりました.研究室メンバーや研究協力者の皆様をはじめ,生体システム論研究室の運営に関わってくださったすべての方々に改めて厚く御礼申し上げます.

今日で2022年度全体ゼミは終了しましたが,2023年度卒業研究テーマ説明会が3月9日(木)に,研究室公開が3月10日(金)に予定されています.また,3月14日(火)10:00には新しい4年生が研究室に配属され,新年度に向けての活動を開始します.4月7日(金)からは2023年度の全体ゼミを開始する予定です.

2023年度も引き続き,どうぞよろしくお願いします!

第683回 2022年度修士論文発表会

2023.02.21

2022年度広島大学大学院先進理工系科学研究科先進理工系科学専攻電気システム制御プログラム修士論文発表会が2月21日に行われ,本研究室から12名のM2が発表を行いました.全員,非常に魅力的な研究内容で,M2の最後を飾るにふさわしい素晴らしい発表でした.質疑応答の内容もよかったと思います.発表者と研究題目は以下のとおりです(発表音順).

立原 蒼生
Horizontal and Vertical Dynamic Visual Acuities: A Multidirectional Measurement System and Training Effects
(上下・左右方向の動体視力:多方向動体視力計測システムとトレーニング効果)

陳 崧志
Analysis of the relationship between brain activity, autonomic nervous activity, and subjective evaluation of heptanal odor
(ヘプタナール臭に対する脳活動,自律神経活動,主観評価の関係解析)

黒田 悠太
Effects of Sound Feedback Associated with Accelerator Pedal Operation on Human Brain Activity
(アクセルペダル操作に伴うサウンドフィードバックが脳活動に与える影響:fMRI研究)

楠 崚斗
Machine Learning-based Identification of Mood Disorders Based on Cognitive and Motor Function Tests and Brain Injury Sites in Stroke Patients
(脳卒中患者の認知・運動機能,脳損傷部位に基づく機械学習による気分障害の識別)

岡田 航介
Three-Dimensional Measurement of Subjective Vertical and Body Sway for Evaluation and Rehabilitation of Trunk Function in Stroke Patients
(脳卒中患者の体幹機能の評価とリハビリテーションに向けた自覚的垂直位と身体動揺の3次元計測)

兼折 美帆
Evaluation of Cognitive Motor Function in Stroke Patients by iPad Version of Trail Making Test
(iPad版Trail Making Testによる脳卒中患者の認知運動機能評価)

熊谷 遼
A Myoelectric Prosthetic Hand Capable of Reproducing Human Tremor and Evaluation of Its Biomimetic Properties
(振戦を再現可能な筋電義手の開発と生体模倣性の評価)

橋本 悠己
Spatio-temporal Graphormer for Pose-based Assessment of Infant General Movements
(Spatio-temporal Graphormerを用いた姿勢ベース乳児運動解析)

池田 開
Influence on kinesthetic illusion by simultaneous visual and force feedback for finger movement rehabilitation
(手指リハビリテーションに向けた視覚と力覚の同時提示による運動錯覚への影響)

玉井 太一
Consideration of the Effect of Vibration Presentation on the Perception of Assist Force during Isometric Wrist Extension Motion
(振動提示が等尺性手首伸展動作に対するアシスト力の知覚に与える影響の考察)

増永 准也
Consideration of the Influence of Machine Switching on Loading Operation in Remote Operation of Hydraulic Excavators and Design of a Method to Reduce the Influence
(油圧ショベルの遠隔操作における機体切り替えが積み込み作業に与える影響の考察と低減手法の考案)

金本 拓馬
A Proposal of Height Map Image Generation Method with Desired Tactile Feeling Based on Image Features
(画像特徴量に基づく所望の触感をもつハイトマップ画像生成手法の提案)

各研究テーマは来年度以降も継続して取り組んでいく予定です.各自,研究内容をもう一度よく整理し,研究室を離れる人は引き継ぎ資料をしっかりまとめておくとよいでしょう.

修論発表会,おつかれさまでした!!

第682回 2022年度卒業論文発表会

2023.02.13

2022年度広島大学工学部第二類電気システム情報プログラム卒業論文発表会が2月13日に行われ,本研究室からは4年生10名が1年間の研究成果を発表しました.

発表者と研究題目は以下のとおりです(発表順).

上田 達也
遠隔油圧ショベルの旋回操作難易度が操作者のストレスに与える影響

中西 大樹
ハイトマップ画像特徴量と対象者属性情報に基づく表面テクスチャの触感推定

中川 康太
視覚と力覚の同時介入による階段後段感覚の提示

河本 啓吾
人工筋を用いた足首への外乱付与によるバランストレーニング機器の開発

竹田 悠真
運動意欲向上のための体操支援モバイルアプリの開発と効果検証

米井 陸也
非負値行列因子分解を用いた乳児運動解析によるASDリスク評価

幡 祐輔
機械学習による脳卒中患者の脳損傷部位と嚥下障害の関係解析

岡田 佑太
高周波末梢血管剛性に基づく人間の自律神経活動解析

篠原 大晟
生分解圧電センサによる連続血圧推定と末梢血管剛性計測への応用

藤田 真稔
生体電気信号を用いたゼブラフィッシュの運動と呼吸の同時推定

4年生全員,研究内容もプレゼンテーションも質疑応答もすべて素晴らしく,最高レベルの卒論発表会だったと思います.もちろん,いろいろな課題が残った人もいると思いますので,各自,自分自身の研究内容や質疑応答をよく精査し,プレゼンテーションや研究内容に関する今後の課題を明確にしておくとよいでしょう.次の研究発表の機会にはさらに良い発表ができると思います.

これまで日々指導をしてくださった各グループの先生方や先輩たちに感謝しつつ,自分の研究に自信と誇りを持ち,より高いレベルの卒業論文完成を目指して引き続きがんばってください.

卒業論文発表会,おつかれさまでした!!

第681回 2022年度論文発表会

2023.02.10

2023年もあっと言う間に約1ヶ月が過ぎ,卒業・修了の季節が近づいてきました.
2022年度の卒業論文発表会は2月13日(月)に,修士論文発表会は2月21日(火)に開催される予定です.

■卒業論文発表会:10名発表
場所:Teams
日時:2月13日(月) 10:00-11:50

■修士論文発表会:12名発表
場所:Teams
日時:2月21日(火) 13:00-16:00

卒業論文発表会については学部3年生も聴講可能ですので,研究室配属の参考になると思います.また,生体システム論研究室研究室メンバーは広大アカウントでログインすればすべての発表会を聴講可能ですので,ぜひご参加ください.

発表準備を行う際には,
・研究の意義,目的
・従来研究とその問題点
・自分の研究のセールスポイント(独創性・新規性・有用性):どのような工夫を行ったのか
・研究結果:何ができたのか
・今後の課題
などについて整理し,簡潔に説明できるようまとめておきましょう.
また発表スライドを作成する際には,発表のストーリが分かりやすくかつ魅力的で説得力があるかどうか,グループゼミ等でよく確認しておくとよいでしょう.

学生生活の総決算にふさわしい内容の論文発表会となるよう,ラストスパートでがんばってください!健闘を祈ります.

第680回 特許情報更新2023

2023.02.03

特許とは「発明」を保護するための制度で,発明をした者に対して国が特許権という独占権を与えることでその発明を保護すること,さらに出願された発明の技術内容を公開して利用を促進し産業全体の発展に寄与することを目的としています.

生体システム論研究室では,2000年頃から特許出願を開始しました.特許権を取得するためには,特許庁に特許出願し特許査定されることが必要です.特許査定されると,出願人がその発明についての特許権を取得し,原則として出願日から20年間,当該発明の利用を独占することができます.

2023年2月の時点で,これまでに生体システム論研究室から出願した特許情報を整理,更新しました.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications/patents

2022-2023の更新情報は以下の5件です.
————————————————————————
■以下の特許が登録されました.

56. 生体信号解析装置及び生体信号解析方法
日本国特許出願 2018-231225 特開 2020-092753 特許第7161756
辻 敏夫, 曽 智, 古居 彬, 大西 亮太, 秋山 倫之, 竹内 章人
2018年12月10日出願, 2020年6月18日公開, 2022年10月19日登録

58. 生体計測システム及び方法
日本国特許出願 特願2019-192398, 特開2021-65393, 特許第7181533
西村 彩子, 敦森 洋和, 舟根 司, 神鳥 明彦, 中村 泰明,小幡 亜希子, 小松 佑人, 濱 聖司, 辻 敏夫
2019年10月23日出願, 2021年4月30日公開, 2022年11月22日登録

■以下の特許が公開されました.

60. 血管剛性推定方法、血管剛性推定装置及びプログラム
日本国特許出願 特願2020-105880 特開2022-000065
辻 敏夫, 古居 彬, 曽 智, 棟安 俊文, 笹岡 貴史, 山脇 成人
2020年6月19日出願, 2022年1月4日公開

64. 情報処理システム
日本国特許出願 特願2021-34537 特開2022-134989
敦森 洋和, ストコ ステファニー, 小幡 亜希子, 西村 彩子, 舟根 司, 神鳥 明彦, 辻 敏夫, 濱 聖司
2021年3月4日出願, 2022年9月15日公開

■以下の特許を出願しました.

66. 血液循環システムの制御装置、制御方法及びプログラム
日本国特許出願 特願2022-207247
辻 敏夫, 曽 智, 木下 拓矢, 高橋 秀暢
2022年12月23日出願
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2023年2月現在の特許関連件数は以下のようになります.
・特許出願:66件(国内54件,国際12件)
・取得特許:41件(国内32件,国際 9件)

特許の対象となる「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と特許法2条1項に定義されています.今後も「高度な技術的思想の創作」につながるような研究を進めていければと思っています.

第679回 英語論文の作成

2023.01.27

2023年もあっという間に1月下旬となり,修士論文の提出締め切りが近づいています.修士論文の作成時や学術雑誌,国際会議への論文投稿時には,論文を英語で執筆することが必要になります.もちろん,自力で英語論文を執筆する能力を身に着けることが大切なのは言うまでもありませんが,とはいえいきなり英語論文を執筆するのはかなりの困難を伴うと思います.

最近,deep learningに基づく優秀な機械翻訳アプリ,英文校正アプリを手軽に利用することが可能になりました.これらのアプリをうまく使いこなせば,結果的に自らの英語能力の向上につながりますし,先生方に英語原稿を提出する前に英文のクオリティをアップすることが可能になります.

すでによく知られているとは思いますが,以下にいくつかのアプリと関連記事を引用しておきます.
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1.機械翻訳アプリ

■DeepL翻訳:科学技術論文に強く,微妙なニュアンスのある翻訳ができるという評価を受けているスタンダードアプリ.有料版も比較的安価に設定されており,また30日間無料(いつでもキャンセル可能)なので,手軽に利用することができそうです.
https://www.deepl.com/ja/translator

・DeepLを使ったPDFやWordベースの自動翻訳プログラムも公開されています.
https://qiita.com/Cartelet/items/9506dfb5776346c570ae?utm_campaign=popular_items&utm_medium=feed&utm_source=popular_items

■Google翻訳:よく知られている機械翻訳アプリ.無料です.
https://translate.google.co.jp/?hl=ja

・Google Scholarを利用すれば,特定の言い回しや単語が他の学術論文で使われているかどうかを手軽にチェックすることができます.Googleの検索演算子やワイルドカードを使えばさまざまな検索が可能です.
https://scholar.google.com/
https://www.siteengine.co.jp/blog/content-marketing/google-search-command/

2.英文作成・校正アプリ

■DeepL Write:DeepLベースの英文校正アプリです.まだβ版ですが,英語(アメリカ)を選べばかなり使えそうです.
https://www.deepl.com/write

・DeepLベースのAI添削アプリもあります.
https://englister.yunomy.com/

■ChatGPT:人間の発話をシミュレートしてユーザと自然なやり取りをするチャットボットのモデルで,最近,マイクロソフトの巨額投資で注目を集めているオープンAIによって開発されました.
https://openai.com/blog/chatgpt/
https://www.btcc.com/ja-JP/academy/crypto-basics/what-is-chatgpt

■Grammarly:優れた自動校正アプリとして有名です.Wordに埋め込むこともできます.
https://app.grammarly.com/
https://www.path-to-success.net/grammarly

■AI校正の比較
https://eibun-hikaku.net/topics/ai_checker.html

3.参考情報

・以下の記事では,DeepLとGrammarlyを利用した英語論文作成法が紹介されています.
https://eanesth.exblog.jp/240618090/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000090606.html

・英文の要約文を作成するアプリもいろいろ使えそうです.
https://www.ntt.com/shines/posts/b-t_20201111.html

・「最近ものすごく優秀な修士就活生が増えている」
https://togetter.com/li/1758185
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以上をまとめると,

もとの日本語論文の文章作成(自分の研究と流れが似ているような英語論文を参考にしながら執筆&推敲)
⇒DeepLで英文変換
⇒機械翻訳で日本語に戻したときに意味が通じるように元の日本語論文を修正
⇒DeepL WriteやGrammarlyなどで校正
⇒専門用語や言い回しをGoogle Scholarでチェック(日本人しか使っていないような言い回しは避け,native speakerが使用しているような言い回しを使う)

というような流れで作業を進めていけば,(自力で英作文するより)容易に英語論文を作成することが可能です.学術雑誌投稿論文についても,研究室内の英語能力の高い人が最終チェックをすれば,高額の英文校正サービスは不要になりそうです.

もちろん,機械翻訳アプリや英文校正アプリによって提示された英文が適当かどうか判断できるだけの基本的な科学英語力を身に着けていることが必須条件で,そのためには普段からできるだけ多くの英語論文を読んでおくことが大切です.また,英語化よりも研究内容の新規性/独創性を明確にすること,日本語論文のストーリ/文章構成の完成度が高いことなどがはるかに重要であることは言うまでもありませんが,便利なアプリを上手に,そして正しく利用して英語論文の作成を進めるとよいでしょう.

第678回 令和4年度広島大学エクセレントスチューデントスカラシップ

2023.01.20

令和4年度広島大学エクセレントスチューデントスカラシップ成績優秀学生にD1の城明 舜磨君が選ばれました.表彰状授与式は2022年12月21日に行われました.おめでとうございます!
https://www.hiroshima-u.ac.jp/adse/news/74681

広島大学エクセレントスチューデントスカラシップは平成18年度から開始された広島大学独自の奨学制度です.学生の勉学意欲の向上,優秀な人材の輩出などを目的とし,学業成績,学術活動等において優秀と認められる学生を成績優秀学生として表彰するもので,前年度の研究業績が評価の対象となります.「研究業績」とは,学術雑誌掲載論文,国際会議発表,国内学会発表,著書,受賞,特許などを指し,これらを点数化することによって上位得点者が選出されます.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/ilife/student/ess

これまでの生体システム論研究室のエクセレントスチューデントスカラシップ受賞者を以下にまとめておきます(敬称略).

平成18年度成績優秀学生: 糠谷 優之,谷口 早矢佳,朴 宗仁
平成19年度成績優秀学生: 羽田 昌敏,島 圭介,朴 宗仁
平成20年度成績優秀学生: 島 圭介
平成21年度成績優秀学生: 曽 智,寺脇 充
平成22年度成績優秀学生: 芝軒 太郎
平成23年度成績優秀学生: 小島 重行
平成25年度成績優秀学生: 竹村 和紘,平野 博大
平成26年度成績優秀学生: 西川 一男, 平野 博大, 早志 英朗
平成27年度成績優秀学生: 西川 一男, 早志 英朗
平成28年度成績優秀学生: 岡原 重幸,中村 豪
平成29年度成績優秀学生: 古居 彬
平成30年度成績優秀学生: DAS SWAGATA
令和元年度成績優秀学生: 岸下 優介,THAKUR CHETAN PRAKASH
令和 2年度成績優秀学生: 飯島 直也,今岡 恭司
令和 4年度成績優秀学生: 城明 舜磨
(数年前から,博士課程前期及び博士課程後期在学中それぞれ1度のみの授与という制限が設けられました.)

一つの研究室から延べ27名もの受賞者を輩出しているのは,おそらく生体システム論研究室だけだと思います.引き続き,優れた学生を育成していければと思います.

第677回 2023年,今年もよろしくお願いします!

2023.01.13

今日から2023年(令和5年)の全体ゼミを開始しました.

今年も2月下旬まで,博士論文,修士論文,卒業論文の作成と各論文発表会が予定されており,研究室は一年でもっとも忙しい時期を迎えます.各自,体調に十分に気をつけながら,余裕をもったスケジュールで論文作成や発表準備を進めていくとよいでしょう.国際的なトップジャーナルに掲載されるような魅力にあふれた研究論文の完成を目指して,ラストスパートでがんばってください!

昨年末からコロナ第8波の感染拡大が爆発的に進んでいます.引き続き,一人一人が感染予防に努めながら,研究・教育活動を可能な限り継続していければと思っています.今年の後半には世界的な問題が少しずつ解決され,徐々に普通の生活を取り戻せるようになることを祈っています.

本年もどうぞよろしくお願いします!

第676回 Happy Xmas 2022

2022.12.23

2022年の生体システム論研究室全体ゼミは,12月23日開催の第29回が最後となりました.来週,研究打ち合わせをいくつか予定していますが,2022年の活動は今日でほぼ終了です.

今年はCOVID-19のパンデミックに加えて,ウクライナ危機,世界的インフレ,異常気象など次々と大きな悪い出来事が続き,世界は歴史的な岐路に直面しているように思います.それでも,私たち生体システム論研究室は今年もイタリア工科大学のピエトロ・モラッソ先生の「this horrible year that, on the other hand, gave us the gift of extra time for reading, thinking and writing」という教えを守り,ほぼ例年通りの活発さで研究,教育に取り組むことができました.

以下に2022年の生体システム論研究室の研究業績をまとめておきます.

国際学術雑誌論文: 7編(インパクトファクタ合計値30.09)
国際会議論文: 7編
国内学会発表: 13件
著書(book chapter): 1編
解説論文: 1編
博士学位論文: 1編
受賞: 14件(学生の各種受賞を含む)
招待講演: 3件
記事: 1件
特許: 登録2件, 公開2件, 出願2件

昨年からインパクトファクタ10以上の雑誌への論文投稿を続けてきましたが,残念ながら今年も掲載には至りませんでした.それでも7編のSCI論文を発表し,インパクトファクタ合計値は30以上と高いレベルの研究活動を継続することができました.学生たちの受賞件数が多かったのもよかったと思います.

■過去5年間の年間インパクトファクタ合計値:
2021: 48.442
2020: 46.312
2019: 44.131
2018: 28.520
2017: 17.371

このような研究成果をあげることができたのは,研究室スタッフ,学生諸君,多くの共同研究者・研究協力者の皆様をはじめ,本研究室を支えてくださったすべての人たちのおかげです.ここに改めて御礼申し上げます.

本研究室に関わってくださっているすべてのみなさんにとって,2023年が素晴らしい年になることを祈っています.来年もどうぞよろしくお願いします!

We wish you all a very merry Christmas and a happy new year!

第675回 血管弾性研究会20周年

2022.12.16

血管弾性研究会は,2002年に当時の広島大学大学院医歯薬保健学研究科 麻酔蘇生学教室の河本 昌志先生(現在JR広島病院 院長,広島大 名誉教授)と佐伯 昇先生(広島大学大学院医系科学研究科 准教授)とともに第1回研究会を広島大学西条キャンパスで開催し,その活動を開始しました.血管平滑筋の機能的なかたさ変化をリアルタイムで非侵襲計測する技術を確立し,交感神経遮断術中の診断支援に応用しようという目的で,当初は半年に1回くらいのペースで研究会を行なっていました.その後,研究が進むにつれて徐々に開催頻度が上がり,最近は年に3回のペースでTeamsによるリモート研究会を開催しています.

2002年の第1回研究会から20年が経過し,2022年11月21日(月)に第77回血管弾性研究会を開催しました.この間,研究テーマもひろがり,現在は,自律神経活動モニタリングや自動血圧計を利用した血管内皮機能評価法,疼痛計測法の提案とfMRI研究,非観血血圧計測技術の開発,体表脈波計測技術と体調急変予測法の提案,高次脳機能評価法の開発など多くの研究テーマに取り組んでいます.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15299

2022年11月21日に開催した第77回血管弾性研究会では,M1の干場 滉太君,B4の岡田 佑太君,篠原 大晟君,幡 祐輔君の4名が研究発表を行いました.

岡田 佑太:高周波末梢血管剛性に基づく人間の自律神経活動解析
篠原 大晟:生分解圧電センサによる末梢交感神経活動のモニタリング
干場 滉太:脳卒中患者の損傷部位,認知・身体機能と運転適性の関係解析
幡 祐輔:脳卒中患者の嚥下機能評価と脳画像の関係解析

血管弾性研究会は,研究室の内外から支えてくださっている多くの共同研究者の方々のお陰で成立しています.すべての研究会メンバーに感謝しつつ,今後も研究会活動を通じて広島大学における産学連携・医工連携研究を推進していければと思います.

第674回 第4回新しい運動機能研究会「Hitachi Sports Summit 2022」

2022.12.09

生体システム論研究室では2004年頃から(株)日立製作所との共同研究を開始し,基礎研究センタ主管研究長の神鳥 明彦さんの研究グループとともに,生体信号計測と高次脳機能評価に関する研究を行ってきました.神鳥さんは広島市のご出身で,工学と医学の2つの博士学位を取得されています.

2022年11月21日に日立製作所 基礎研究センタ主催で,第4回新しい運動機能研究会「Hitachi Sports Summit 2022」が開催され,生体システム論研究室・(株)日立製作所・マクセル(株)・信愛会日比野病院・広島大学病院の共同研究グループから8件の研究発表を行いました.本研究室からは,D2の阪井 浩人君,M2の岡田 航介君,兼折 美帆さん,立原 蒼生君の4名がそれぞれの研究成果を発表してくれました.

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リーチング軌道生成モデルに基づくTrail Making Test 中のペン先軌道解析
阪井 浩人,古居 彬,濱 聖司,柳川 亜紀子,久保 晃紀,森迫 優太郎,立石 佳純,水口 寛彦,敦森 洋和,西村 彩子,神鳥 明彦,辻 敏夫

iPad版Trail Making Testによる脳卒中患者の認知運動機能評価
兼折 美帆,阪井 浩人,古居 彬,濱 聖司,柳川 亜紀子,久保 晃紀,森迫 優太郎,折野 佑樹,立石 佳純, 水口 寛彦, 敦森 洋和, 西村 彩子, 神鳥 明彦, 辻 敏夫

脳卒中患者の体幹機能評価に向けた自覚的垂直位と身体動揺の3次元計測
岡田 航介, 古居 彬, 阪井 浩人, 城明 舜磨, 濱 聖司, 鈴木 貴拡, 佐藤 大介, 水口 寛彦, 敦森 洋和, 西村 彩子, 神鳥 明彦, 辻 敏夫

多方向動体視力検査装置の開発と視標追従能力の評価
立原 蒼生, 曽 摯, 水口 寛彦, 敦森 洋和, 西村 彩子, 神鳥 明彦, 濱 聖司, 辻 敏夫

バイパス術前後の血行力学的脳虚血とSpeed-accuracy trade-off との関係性
濱 聖司,下永 晧司,古居 彬,神鳥 明彦,敦森 洋和,柳川 亜紀子,山脇 成人,松重 俊憲,辻 敏夫

病院と在宅での足圧センサを用いた視覚フィードバックによる歩行改善
鈴木 貴拡,濱 聖司,佐藤 大介,島岡 卓弘,中山 龍太朗,梶川 望,廣政 圭祐,志田原 千晶,河野 志乃,神鳥 明彦,敦森 洋和,西村 彩子,石橋 雅義,辻 敏夫

推定脳画像を用いたリハビリ評価項目の回復予測について
小幡 亜希子, Stephanie Sutoko, 敦森 洋和, 西村 彩子, 舟根 司, 神鳥 明彦, 下永 晧司, 濱 聖司, 辻 敏夫

脳梗塞患者におけるTrail Making Test Part-B のパフォーマンスと梗塞部位との関係
西村 彩子, Stephanie Sutoko, 木口 雅史, 敦森 洋和, 小幡 亜希子, 舟根 司, 神鳥 明彦, 水口 寛彦, 下永 皓司, 濱 聖司, 辻 敏夫
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今後は本共同研究グループで培ってきた医工連携研究成果の社会実装を加速し,世界的に普及させていけるよう研究活動を継続していきたいと思います.

第673回 卒業アルバム用写真撮影2022

2022.12.02

2022年11月18日に卒業アルバム用の写真撮影を行いました.2023年3月発行予定の広島大学卒業アルバムには,研究室の集合写真,個人写真などが掲載される予定です.
卒業/修了の季節が近づいてきたことを感じさせるイベントでした.幹事を務めてくれたB4の篠原 大晟君,ごくろうさまでした!

#卒業アルバム「研究室紹介」コーナーが掲載されるかどうか不明ですが,生体システム論研究室の紹介を以下に記載しておきます.

◆研究室紹介:
生体システム論研究室
進化のプロセスを通じて自然界に育まれた生体には,現在の工学技術では実現できないような極めて巧みで高度な生体機能が備わっています.生体システム論研究室では,生体機能の秘密に迫るというサイエンティストの目と人間の役に立つ機械を開発するというエンジニアの目という2つの目で,生体機能の特徴にもとづく新たなシステムやアルゴリズムの開発に取り組んでいます.

◆研究室の歴史:
生体システム論研究室は辻 敏夫教授が2002年4月1日に着任してその活動を開始し,現在は辻 敏夫教授,栗田 雄一教授,曽 智助教の教員3名と,本研究室修了生の平野 陽豊講師(藤田医科大),古居 彬助教(広島大学情報科学プログラム)の協力のもと教育研究活動を行っています.
2022年度の研究室メンバーは教員3名,協力教員2名,研究員1名,秘書2名,博士課程後期11名,博士課程前期24名,学部4年生10名,研究生1名で,2021年度までの卒業生・修了生は学部卒業生190名,博士課程前期修了生184名,博士課程後期修了生33名で,博士学位取得者は39名に上ります.
研究室ホームページ:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/

第672回 2022年度広島大学大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム 修士論文中間発表会(M1)

2022.11.25

2022年11月11日,18日の2日間,M1の修士論文中間発表会を行いました.

2020年度に設置された広島大学大学院先進理工系科学研究科では,M1の修士論文中間発表が義務付けられています.中間発表の目的は,入学後の早い時期に研究のゴールを明確にするとともに,自分の研究の意義,特徴,新規性,独創性などをわかりやすく説明できるようにすることにあり,M1にとっては修士研究を進めていくうえでのマイルストーンとなります.また,今後の就職活動に向けて,自分の研究のセールスポイントを整理する絶好の機会にもなると思います.

今年度は,M1の8名が発表を行いました.全員,素晴らしい研究内容で,非常にレベルの高いM1修士論文中間発表会となりました.もう少しで学術雑誌に論文投稿ができそうな新規性,独創性の高い研究発表が多く,よかったと思います.それぞれの今後の課題をよく整理し,一つずつ課題を解決していくとよいでしょう.

M1のみなさん,おつかれさまでした!

第671回 2022年度広島大学大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム 修士論文中間発表会(M2)

2022.11.18

11月15日(火)に電気システム制御プログラムの修士論文中間発表会が行われ,生体システム論研究室からはM2の12名が研究発表を行いました.

今年度もコロナ禍でMicrosoft Teamsによるリモート開催となりましたが,全員,非常に魅力的な研究内容で,充実した修論中間発表会となりました.全体ゼミでの発表練習から発表内容が大きく改善した人が多く,修士論文全体のストーリの整理という意味でも有意義な中間発表会だったと思います.また,質疑応答に関してもほぼ的確な回答が行えており,堂々とした発表態度もよかったと思います.

研究の進捗状況はそれぞれで異なりますが,今回の予稿・発表スライドの作成作業を通じて自分の修士論文の完成形をはっきりイメージすることができたのではと思います.今後は修士論文の早期完成を目指し,以下の点を改善していくとよいでしょう.

(1) 新規性・独創性を明確にし,従来研究との差異を強調するような工夫を強化する
(2) 論文のストーリを明確にし,必要に応じて従来研究のサーベイを追加する
(3) 実験やシミュレーションを追加して研究の有用性をさらに明確にし,従来研究との比較結果を示す
(4) 残された課題を箇条書きにし,具体的に解決策を検討する

早いもので2022年も残すところあと約一月半となりました.体調に十分に気をつけながらラストスパートでがんばってください.
修論中間発表会,おつかれさまでした!!

第670回 広島大学の名講義2022

2022.11.11

広島大学工学部では,各学期の終了時に受講生に対して授業改善アンケートを実施しています.2008年度後期からこの授業改善アンケートに,
「この講義を広島大学の名講義として推薦しますか」
という項目が設けられ,回答結果から毎期上位10科目程度が『広島大学の名講義』として選出されウェブサイトで公表されています(ただし,演習や実習,受講者の少ない講義は除く).
https://www.hiroshima-u.ac.jp/eng/faculty/f_education/f_lecture

先日,2022年度前期のアンケート結果が公表され,「生体電気工学」が「広島大学の名講義」として選出されました(工学部全講義中,第1位).
https://www.hiroshima-u.ac.jp/eng/faculty/f_education/s_lecture2019_1

以下に過去の受賞歴をまとめておきます.
今後も,研究や学問に対するモチベーションを高めるような講義を目指していければと思います.

■広島大学の名講義(工学部)

2009年度前期:回路理論II(辻 敏夫)
(2010年度以降,「回路理論II」は担当者変更)
2010年度前期:人間工学(辻 敏夫)
(2011年度以降,「人間工学」は「生体システム工学」に名称変更)
2011年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
2012年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
(2013年度前期の「生体システム工学」は開講せず)
2014年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
2015年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
2016年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
(2017年度以降,「生体システム工学」は「生体電気工学」に名称変更)
2018年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)
2019年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)
(2020年度前期はコロナ禍で中止)
2021年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)
2021年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)
2022年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)

第669回 生体システム論研究室:最近の取り組み

2022.11.04

先日,生体システム論研究室における2022年度のニュースや特色ある取り組みをまとめる機会がありました.以下に,辻・曽・古居グループの取り組みを紹介しておきます.

2022年も残り約2か月,気を引き締めて研究活動に取り組んでいきたいと思います.

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■これまでに165編の国際学術雑誌論文,182編の国内学術雑誌論文,37編の解説論文,337編の国際会議論文などを発表し,Web of Science (Thomson Reuters)でのh-indexは23,g-indexは44,総引用回数は2,672,Google Scholarでのh-indexは39,i10-indexは204,総引用回数は8,075である(2022年11月1日現在).
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications

■2022年は7編のSCI論文を発表した.インパクトファクタ合計値は30.09である(2022年11月1日現在).なお,過去3年間の年間インパクトファクタ合計値は以下に示す通りである.
2021: 48.442(SCI論文11編)
2020: 46.312(SCI論文12編)
2019: 44.131(SCI論文 8編)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications/international-journal-papers

■上記の研究業績をベースに以下の3つのプロジェクトに取り組んでいる.

(1) 科研費基盤研究(A)(2022~2026年度)に採択され,研究代表者として取り組んでいる.
研究題目「非侵襲マイクロニューログラフィ法の創出:血管力学モデルから末梢交感神経活動を復元」
研究代表者:辻 敏夫(大学院先進理工系科学研究科)
研究分担者:曽 智,古居 彬(大学院先進理工系科学研究科)
配分予定額:41,730千円 (間接経費を含む)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17261

(2) 科学技術振興機構 A-STEP(育成型)に採択され,主要な研究分担者として参加している.
研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP
令和4年度産学共同(育成型)(2022~2024年度)
研究題目:脳生体ダイナミクスを捉える摂食嚥下機能リモート評価訓練システムの開発
研究代表者:濱 聖司(広島大学大学院医系科学研究科脳神経外科)
研究分担者:辻 敏夫,曽 智,古居 彬(大学院先進理工系科学研究科)
配分予定額:37,500千円(間接経費含む)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17357

(3) COIプログラム令和4年度加速課題に採択され,主要な研究分担者として参加している.
COIプログラム令和4年度加速課題「Well-Being 社会に貢献する感性統合解析パッケージDXの社会実装」
課題代表者(PI):笹岡 貴史(広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 准教授)
テーマ3サブリーダ:辻 敏夫(大学院先進理工系科学研究科)
2022年度配分額:4,000千円
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17233

第668回 【研究紹介】自由遊泳中のゼブラフィッシュ成魚の呼吸数は カフェイン暴露により変化する

2022.10.28

広島大学生体システム論研究室では,感性ブレイン(旧A-life)グループの曽 智先生を中心にメダカやゼブラフィッシュといった小型魚類の生体信号計測に関する研究に取り組んでおり,独自に開発した呼吸波計測法を用いてカメラレス遊泳運動解析や情動評価の研究を行ってきました.

Unconstrained and Noninvasive Measurement of Bioelectric Signals from Small Fish
Mitsuru Terawaki, Akira Hirano, Zu Soh and Toshio Tsuji
Artificial Life and Robotics, Vol. 14, No. 3, pp. 342-347, 2009. (SCI, IF=0.84)

小型魚類の生体電気信号を利用したバイオアッセイシステムの提案
寺脇 充, 曽 智, 平野 旭, 辻 敏夫
計測自動制御学会論文集, Vol. 47, No. 2, pp. 119-125, 2011.

呼吸波計測に基づく小型魚類遊泳行動の非接触・非拘束計測
来山 茂央,曽 智,平野 旭,辻 敏夫,滝口 昇,大竹 久夫
計測自動制御学会論文集, Vol. 48, No. 3, pp. 151-158, 2012.

小型魚類の水質汚染監視用バイオアッセイシステムの開発
曽 智,宮本 健太郎,平野 旭,辻 敏夫
電気学会論文誌 C(電子・情報・システム部門誌), Vol. 133, No. 8, pp. 1616-1624, 2013.

Bioassay System Based on Behavioral Analysis and Bioelectric Ventilatory Signals of a Small Fish
Zu Soh, Shigehisa Kitayama, Akira Hirano, and Toshio Tsuji
IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement, Vol. 62, No. 12, pp. 3265-3275, 2013 (SCI, IF=1.710).

Force and Motion Analysis of larval zebrafish (Danio rerio) using a body dynamics model
Naohisa Mukaidani, Zu Soh, Shinichi Higashijima, and Toshio Tsuji
Journal of Robotics, Networking and Artificial Life, Volume 4, Issue 3, pp. 183-190, DEC 2017 (ESCI)

Real-time Cameraless Measurement System based on Bioelectrical Ventilatory Signals to Evaluate Fear and Anxiety
Zu Soh, Motoki Matsuno, Masayuki Yoshida, and Toshio Tsuji
Zebrafish, Vol. 15, No. 2, doi.org/10.1089/zeb.2017.1491, Published Online: 1 Apr 2018. (SCI, IF=2.242)

Measurement of Emotional States of Zebrafish through Integrated Analysis of Motion and Respiration Using Bioelectric Signals
Zu Soh, Motoki Matsuno, Masayuki Yoshida, Akira Furui, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 11, Article number: 187, doi.org/10.1038/s41598-020-80578-6, Published online: 08 January 2021. (SCI, IF=3.998)

今回新たに,自由遊泳中のゼブラフィッシュ成魚の呼吸数がカフェイン暴露により変化することを見い出し,Scientific Reports誌に論文が掲載されました.

Pharmacological Effects of Caffeine on the Ventilation in Adult Zebrafish Under Free-swimming Conditions
Yuki Harada, Zu Soh, Shin Wakitani, Masayuki Yoshida, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 12, Article number: 17649, doi.org/10.1038/s41598-022-22681-4 , Published online: 21 October 2022. (SCI, IF=4.996)
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-022-22681-4
PDF: https://www.nature.com/articles/s41598-022-22681-4.pdf

この論文は,吉田 将之先生(広島大学大学院統合生命科学研究科准教授),脇谷 伸先生(広島大学大学院先進理工系科学研究科准教授)との共同研究で,2021年度修了生の原田 祐希君の修士論文の一部です.今後は3次元遊泳運動計測や複数個体同時計測,情動評価に関する研究を進めていければと思っています.ひきつづきよろしくお願いします.

<論文内容>
The zebrafish is widely used as a model in biological studies. In particular, the heart rate and cortisol levels of zebrafish are commonly measured to elucidate the pharmacological effects of chemical substances. Meanwhile, although ventilation is also an important physiological index reflecting emotion-like states, few studies have evaluated the effects of chemicals on ventilation in adult zebrafish. In this study, we assessed whether it is possible to evaluate the pharmacological effects elicited by caffeine in adult zebrafish under free-swimming conditions. We measured the ventilation in adult zebrafish exposed to multiple concentrations of caffeine under restraint and free-swimming conditions and evaluated the pharmacological effects of caffeine using linear mixed model analysis. In addition, results of electrocardiogram analysis and swimming speeds were compared with those in previous reports to ensure that an appropriate dose of caffeine was administered. Under restraint conditions, caffeine significantly decreased heart rate and increased ventilation in a concentration dependent manner. Under free-swimming conditions, the ventilation rate significantly increased with increasing caffeine concentration. These results indicate that the pharmacological effects elicited by chemicals on ventilation can be evaluated in free-swimming zebrafish.

ゼブラフィッシュは、生物学的研究のモデルとして広く用いられている。特に、化学物質の薬理作用を解明するために、ゼブラフィッシュの心拍数やコルチゾールレベルを測定することが一般的である。一方、呼吸も情動的な状態を反映する重要な生理指標であるが、成魚のゼブラフィッシュで呼吸に対する化学物質の影響を評価した研究はほとんどない。そこで本論文では、カフェインがゼブラフィッシュ成魚に及ぼす薬理作用を自由遊泳条件下で評価することが可能であるかどうかを検討した。拘束状態および自由遊泳状態で複数濃度のカフェインを曝露したゼブラフィッシュ成魚の呼吸数を測定し、線形混合モデル解析を用いてカフェインの薬理効果を評価した。また、心電図解析や遊泳速度の結果を先行研究と比較し、カフェインの薬理効果を評価した。拘束条件下では、カフェインは濃度依存的に心拍数を減少させ、呼吸数を増加させた。自由遊泳条件下では、カフェイン濃度の上昇に伴い、呼吸数が有意に増加した。これらの結果は,化学物質が呼吸に及ぼす薬理作用を自由遊泳下のゼブラフィッシュ成魚で評価できることを示している.

第667回 【研究紹介】生後4ヶ月の乳児の自発運動は 生後18ヶ月時の自閉症傾向に相関する

2022.10.21

広島大学生体システム論研究室では筋電グループを中心に乳幼児の自発運動の解析と評価に関する研究に取り組んでおり,独自に開発したマーカレスビデオ解析法を用いてGeneral movementsやハイハイ運動などの乳幼児運動解析の研究に取り組んできました.

ビデオ画像を利用した新生児運動のマーカーレス・モニタリングシステム
島 圭介,大澤 裕子,ト 楠,辻 徳生,辻 敏夫,石井 抱,松田 浩珍,折戸 謙介,池田 智明,野田 俊一
計測自動制御学会論文集,Vol. 45, No. 4, pp. 224-232, 2009.

ビデオ解析による脳性麻痺児の自発運動の変化について
島谷 康司, 大澤 裕子, 島 圭介, 辻 敏夫, 沖 貞明, 大塚 彰
理学療法科学, Vol. 25, No. 2, pp.171-175, 2010.

新生児の自発運動評価を目的としたGeneral Movements診断支援システム
中島 翔太,右田 涼,早志 英朗,芝軒 太郎,島 圭介,島谷 康司,中塚 幹也,竹内 章人,中村 信,栗田 雄一,辻 敏夫
計測自動制御学会論文集,Vol.50,No.9,pp. 684-692,2014

動画像解析に基づく乳幼児行動マーカーレスモニタリングシステム
右田 涼, 島谷 康司, 芝軒 太郎, 栗田 雄一, 島 圭介, 辻 敏夫 発育発達研究,Vol. 2014,No. 65,pp. 1-7,2014

A Motor Behavioral Evaluation Method for Children with Developmental Disorders during Music Therapy Sessions: A Pilot Study
Zu Soh, Ryo Migita, Kayoko Takahashi, Koji Shimatani, Hideaki Hayashi, Yuichi Kurita, and Toshio Tsuji
Current Pediatrics Research, 20 (1& 2), pp. 103-117, 2016.

Markerless Measurement and Evaluation of General Movements in Infants
Toshio Tsuji, Shota Nakashima, Hideaki Hayashi, Zu Soh, Akira Furui, Tato Shibanoki, Keisuke Shima, and Koji Shimatani
Scientific Reports, volume 10, Article number: 1422, doi:10.1038/s41598-020-57580-z, Published online: 29 January 2020. (SCI, IF=4.011)

Video-based Evaluation of Infant Crawling toward Quantitative Assessment of Motor Development
Katsuaki Kawashima, Yasuko Funabiki, Shino Ogawa, Hideaki Hayashi, Zu Soh, Akira Furui, Ayumi Sato, Taiko Shiwa, Hiroki Mori, Koji Shimatani, Haruta Mogami, Yukuo Konishi, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 10, Article number: 11266, doi:10.1038/s41598-020-67855-0, Published online: 09 July 2020. (SCI, IF=4.011)

Longitudinal Assessment of U-shaped and Inverted U-shaped Developmental Changes in the Spontaneous Movements of Infants via Markerless Video Analysis
Naoki Kinoshita, Akira Furui, Zu Soh, Hideaki Hayashi, Taro Shibanoki, Hiroki Mori, Koji Shimatani, Yasuko Funabiki, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 10, Article number: 16827, doi.org/10.1038/s41598-020-74006-y, Published online: 08 October 2020. (SCI, IF=3.998)

Spontaneous movements in the newborns: a tool of quantitative video analysis of preterm babies
Chiara Tacchino, Martina Impagliazzo, Erika Maggi, Marta Bertamino, Isa Blanchi, Francesca Campone, Paola Durand, Marco Fato, Psiche Giannoni, Riccardo Iandolo, Massimiliano Izzo, Pietro Morasso, Paolo Moretti, Luca Ramenghi, Keisuke Shima, Koji Shimatani, Toshio Tsuji, Sara Uccella, Nicolo Zanardi, and Maura Casadio
Computer Methods and Programs in Biomedicine, Volume 199, 105838, pp.1-17, Available online 21 November 2020, February 2021 (SCI, IF=3.632)

今回新たに,生後4ヶ月の乳児の自発運動が生後18ヶ月時の自閉症傾向と有意に相関することを見い出し,Scientific Reports誌に論文が採択されました.

Prediction of autistic tendencies at 18 months of age via markerless video analysis of spontaneous body movements in 4-month-old infants
Hirokazu Doi*, Naoya Iijima*, Akira Furui*, Zu Soh, Rikuya Yonei, Kazuyuki Shinohara, Mayuko Iriguchi, Koji Shimatani, and Toshio Tsuji
Scientific Reports, volume 12, Article number: 18045, doi.org/10.1038/s41598-022-21308-y, Published online: 27 October 2022. (*Equal contribution, SCI, IF=4.996)
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-022-21308-y
PDF: https://www.nature.com/articles/s41598-022-21308-y.pdf

この論文は,土居 裕和先生(長岡技術科学大学),島谷 康司先生(県立広島大学)と共同で取り組んでいるコホート研究の成果で,土居 裕和先生と古居 彬先生が中心となって論文をまとめてくれました.2020年度修了生の飯島 直也君(筋電グループ)の修士論文の一部でもあり,筋電グループB4の米井 陸也君も解析を手伝ってくれました.

今後も臨床応用を意識した研究成果をまとめていければと思っています.ひきつづきよろしくお願いします.

<論文内容>
Early intervention is now considered the core treatment strategy for autism spectrum disorders (ASD). Thus, it is of significant clinical importance to establish a screening tool for the early detection of ASD in infants. To achieve this goal, in a longitudinal design, we analyzed spontaneous bodily movements of 4-month-old infants from general population and assessed their ASD-like behaviors at 18 months of age. A total of 26 movement features were calculated from video-recorded bodily movements of infants at 4 months of age. Their risk of ASD was assessed at 18 months of age with the Modified Checklist for Autism in Toddlerhood, a widely used screening questionnaire. Infants at high risk for ASD at 18 months of age exhibited less rhythmic and weaker bodily movement patterns at 4 months of age than low-risk infants. When the observed bodily movement patterns were submitted to a machine learning-based analysis, linear and nonlinear classifiers successfully predicted ASD-like behavior at 18 months of age based on the bodily movement patterns at 4 months of age, at the level acceptable for practical use. This study analyzed the relationship between spontaneous bodily movements at 4 months of age and the ASD risk at 18 months of age. Experimental results suggested the utility of the proposed method for the early screening of infants at risk for ASD. We revealed that the signs of ASD risk could be detected as early as 4 months after birth, by focusing on the infant’s spontaneous bodily movements.

現在、自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療戦略として、早期介入が重要であると考えられている。そのため、乳幼児のASDを早期に発見するためのスクリーニングツールの確立は、臨床的に重要な意味をもっている。この目的を達成するために、縦断的デザインで、生後4ヶ月乳児の自発運動を解析し、生後18ヶ月時のASD様行動を評価した。生後4ヶ月の乳児のビデオ録画された身体動作から、合計26の動作特徴を算出した。ASDリスクは、広く用いられているスクリーニング質問紙であるModified Checklist for Autism in Toddlerhoodを用いて、生後18ヶ月の時点で評価した。生後18ヶ月の時点でASDのリスクが高い乳児は、リスクの低い乳児に比べて、生後4ヶ月の自発運動パターンがリズミカルでなく、弱いことが示された。観察された運動パターンを機械学習ベースの分析にかけると、線形および非線形分類器は、生後4ヶ月の体動パターンに基づいて生後18ヶ月のASD様行動を実用に耐えられるレベルで予測することに成功した。本研究では、生後4ヶ月の自発的な体動と生後18ヶ月時のASDリスクとの関係を分析した。実験結果は、ASDリスクの早期スクリーニングに対する提案法の有用性を示唆するものであった。また、乳児の自発運動に着目することで、生後4ヶ月という早い時期からASDリスクの兆候を発見できることを明らかにした。

第666回 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP(育成型)

2022.10.14

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)は,大学等の基礎研究成果を企業との共同研究に繋げるまで磨き上げ,共同研究体制の構築を目指すための支援事業「研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP 産学共同(育成型)」(以下,A-STEP育成型)を実施しています.
https://www.jst.go.jp/a-step/koubo/2022_ikusei.html

筋電グループとMEグループが中心となって進めている濱 聖司先生(広島大学脳神経外科,医療法人信愛会 日比野病院)との共同研究が,令和4年度のA-STEP育成型に採択されました.

研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラムA-STEP
令和4年度産学共同(育成型)(2022~2024年度)
脳生体ダイナミクスを捉える摂食嚥下機能リモート評価訓練システムの開発

研究代表者:濱 聖司(広島大学,医療法人信愛会 日比野病院)
研究分担者:辻 敏夫,曽 智,古居 彬(広島大学)
研究費合計:3,750万円(間接経費含む)

URL: https://www.jst.go.jp/pr/info/info1575/index.html
プレスリリース: https://www.jst.go.jp/pr/info/info1575/pdf/info1575.pdf

本研究課題では,タブレットを利用した高次脳機能評価,末梢血管剛性計測に基づく自律神経機能評価,動画像や重心動揺計測に基づく主観的垂直認知機能評価,脳画像解析に基づく脳損傷度解析などを組み合わせ,これまでにない画期的な嚥下機能評価システムを開発します.臨床で医師や患者の助けになる新たな嚥下機能評価システムの実現を目指し,研究に取り組みたいと思います.
どうぞよろしくお願いします.

課題概要:
超高齢化に伴い誤嚥性肺炎による死亡者が急激に増加し,2030年には年間約13万人に到達すると予測されている.摂食嚥下は認知/運動/自律神経機能が絡み合った生体機能であり、嚥下障害の診断と治療には複数の診療科の連携が必要となるが,簡便に利用可能な検査訓練装置が存在せず,検査訓練の困難さが大きな社会問題となりつつある.本課題では,摂食嚥下時の運動/自律神経活動を同時計測し,脳画像や認知機能検査などの計測データと統合して障害を診断するシステム「Smart swallow」の構築を目指す.提案システムはポストコロナに対応可能なリモート機能を有しており,医師主導で摂食嚥下障害患者に適したリモート仕様も実現する.

第665回 2022年度後期全体ゼミを開始しました

2022.10.07

7月29日の第17回全体ゼミ(前期最終回)から約2カ月が過ぎ,10月7日から2022年度後期全体ゼミを開始しました.
この間,リモートオープンキャンパス,大学院入試,各種研究会,インターンシップなどいろいろな行事がありましたが,みなさん,有意義な夏休みを過ごせたでしょうか.

8月25,26日には2023年度大学院先進理工系科学研究科入学試験が行われ,博士課程前期4月入学生として最終的に11名(推薦入試9名,一般入試2名)が合格しました.研究室内のB4は全員推薦入試合格で,外部からは2名が合格しました.みなさん,おめでとうございます!

9月20日には令和4年度広島大学秋季学位記授与式が広島大学サタケメモリアルホールで行われ,博士課程後期D3の許 自強君に博士(工学)の学位が授与されました.おめでとうございます!
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/72985
許君は10月から生体システム論研究室の研究員となり,引き続きMEグループで研究活動を続けます.
医学部医学科4年の山根 陸斗君は生体システム論研究室での「医学研究実習」を終了し,医学部に戻りました.また,顧 岳桐君は研究生を修了し,引き続き東広島で日本語の勉強を続けます.
全員,それぞれの道で活躍されることを祈っています.

一方,10月から新しく李 昊南(Li Haonan)君が研究生として研究室に加わりました.李君は中国の東北大学制御工学研究科(秦皇島キャンパス)機械工学専攻の出身で,筋電グループに所属し脳波に関する研究を行いながら博士課程前期入学を目指します.みなさん,どうぞよろしくお願いします.

これから年末に向けて,修論中間発表会や各種学会・研究会での研究発表等,さまざまな行事が予定されています.
「広島大学生体システム論研究室ならでは」というオリジナリティに溢れた魅力的な研究成果を目指し,全員で協力しながら研究活動を継続していければと思います.

2022年度後期もよろしくお願いします!!

第664回 2022年度前期全体ゼミは終了しました

2022.07.29

7月に開催した卒論中間発表会,修論中間発表会も無事に終了し,生体システム論研究室2022年度前期全体ゼミは今日で終了しました.

今年もCOVID-19によるパンデミックの影響で引き続きリモート環境での全体ゼミとなりましたが,ほとんどの行事を問題なく実施することができ,充実した2022年度前期となりました.学生のみなさんはいろいろとたいへんだったと思いますが,M2,B4の就職活動も順調で早期に終了することができ,また今年度はB4の進学希望者9名全員が推薦入試合格という快挙を達成しました.M1, B4の新加入生も研究のスタートアップを順調に進めてくれ,いろいろな面で実りの多い2022年度前期となりました.

なお,2022年度の広島大学オープンキャンパスは8月19日(金)に規模を縮小して開催されることになりました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/oc
恒例のオープンラボは今年度も中止になり,昨年同様,ビデオによる研究室公開が行われる予定です.

このあと8月5日まで第2タームの授業は続きますが,全体ゼミは10月まで夏休みに入ります.夏休み期間中は各自の状況に合わせて,それぞれ有意義な時間を過ごすとよいでしょう.大学院博士課程入学試験を受験予定のみなさんは,8月26日,27日の大学院入試に向けてしっかりがんばってください!健闘を祈ります.

ではみなさん,引き続き感染予防に気をつけながら良い夏休みをお過ごしください!

第663回 博士論文発表会(公聴会)

2022.07.22

2022年6月からD3の許 自強君(MEグループ)の博士学位審査が始まっています.6月,7月に行われた博士論文作成着手審査と予備審査に合格し,現在,本審査に進んでいます.許君の博士学位論文審査会(公聴会)は以下の予定で開催します.

■博士論文発表会(公聴会)

氏名:XU ZIQIANG(許 自強)
学位論文題名:A Study on the Evaluation of Sympathetic Responsiveness of the Cardiovascular System and Related Applications
(心血管系の交感神経反応性の評価とその応用に関する研究)
日時:2022年8月8日(月) 13:30-14:30
場所:Teams「生体システム論研究室-teams」(「博士論文公聴会」チャネル)

許君の論文はこの2年間の研究成果をまとめたもので,素晴らしい内容の学位論文です.公聴会は一般公開しており,どなたでも聴講可能ですので興味のある方はぜひご参加ください.

■関連コラム:
第539回 博士学位への道 (その1)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15530
第540回 博士学位への道 (その2)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15541
第541回 博士学位への道 (その3)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15571
第566回 博士学位への道 (その4)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15966
第567回 博士学位への道 (その5)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15986
第652回 広島大学大学院リサーチフェローシップ
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17240

第662回 卒論中間発表会2022

2022.07.15

7月8日,15日の2日間,2022年度生体システム論研究室卒論中間発表会を開催しました.

生体システム論研究室では,毎年7月上旬に卒論中間発表会を行っています.4年生の卒論テーマが決まったのが4月で,実際に研究テーマに取り組み始めたのは5月頃ですので,7月上旬での中間発表会は時期的にはかなり早い(無茶な?)設定です.しかし,4年生前期の研究活動のマイルストーンとして,また8月の大学院一般入試受験者にとっては院試準備に向けてのひとつの区切りとして,あえてこの時期に中間発表会を設定しています.

今年度は,上田 達也君,岡田佑太君,河本 啓吾君,篠原 大晟君,竹田 悠真君,中川 康太君,中西 大樹君,幡 祐輔君,藤田 真稔君,米井 陸也君の10名が全体ゼミでの卒論中間発表会で発表してくれました.
(なお,医学部医学科4年の山根 陸斗君は7月4日に開催した第76回血管弾性研究会で研究発表を行ってくれました.)

今年度もCOVID-19の影響が続き新加入生の人たちは非常にたいへんだったと思いますが,全員,素晴らしい研究発表で,充実した卒論中間発表会となりました.全力で研究に取り組んだ成果が,研究結果としてだけでなく発表態度や話し方,質疑応答にも目に見える形で表れており,非常に感心しました!

新しいことに挑戦しわずかな期間でこれだけの成果を挙げることができるというのは,各自の能力がいかに高いかという事実を証明したことにほかなりません.自信を持って今後も研究に取り組んでいくとよいでしょう.ただ,各グループの先生や先輩たちの助けがなかったらこれだけの発表はできなかったのではと思います.指導をしてくれた人たちに感謝するとともに,今回の経験を次回の発表に活かせるよう引き続きがんばってください.

学部4年生から大学院にかけての数年間は,新しい知識をまるでスポンジのようにどんどん吸収することができる特別な時期だと思います.研究を始めたばかりの4年生にとっては新しい知識だけでなく,ものごとを進めていくのに必要な実行力を身につける絶好の機会でもあります.今後も,より高いレベルを目指して積極的に行動していくとよいでしょう.

4年生のみなさん,卒論中間発表,おつかれさまでした!

第661回 科学研究費2022

2022.07.08

生体システム論研究室では,広島大学から支給される運営費交付金だけでなく,学外から多額の研究費を頂いて研究活動を行っています.中でも,文部科学省と日本学術振興会の助成事業である科学研究費は専門家による審査(ピアレビュー)を経て採否が決定される重要な研究費です.
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/main5_a5.htm
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/

2022年度も各グループの研究テーマに関連して以下の科研費の交付を受けました.

<2022年度新規採択分>

■日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究 基盤研究(A)(一般)(R4~R8年度)
非侵襲マイクロニューログラフィ法の創出:血管力学モデルから末梢交感神経活動を復元
研究代表者:辻 敏夫,研究分担者:曽 智,古居 彬

■日本学術振興会科学研究費基盤研究(C)(R4~R6年度)
行動テストにおける生理指標の同時取得による魚類の情動状態の精密な評価
研究代表者:吉田 将之,研究分担者:曽 智

<継続分(2021年度以前採択分)>

■日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)(R3~R5年度)
人体モデルを用いた筋活性度推定と力覚介入によるオンライン運動感覚伝送
研究代表者:栗田 雄一

■日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)(一般)(R3~R5年度)
知識埋め込み型ベイズ深層学習の提案と希少データ解析への応用
研究代表者:早志 英朗,研究分担者:古居 彬

■日本学術振興会科学研究費基盤研究(B)(R2~R4年度)
超多チャネル生体信号計測と分布定数回路モデルに基づくゼブラフィッシュの情動評価
研究代表者:曽 智,研究分担者:辻 敏夫,吉田将之,松下光次郎

■日本学術振興会科学研究費基盤研究(C)(R2~R4年度)
連続血液粘度測定法に基づく人工心肺中のマイクロバブル発生予測のモデル化と臨床応用
研究代表者:宮本 聡史,研究分担者:辻 敏夫,岡原 重幸,古居 彬, 高橋 信也

■日本学術振興会科学研究費若手研究(R2~R4年度)
尺度混合確率モデルに基づく筋疲労の潜在特徴評価法の提案と適応的筋電義手制御の実現
研究代表者:古居 彬

■日本学術振興会科学研究費若手研究(R2~R4年度)
耳から動脈硬化を発見:確率ニューラルネットワークを用いた血管内皮機能評価法の提案
研究代表者:平野 陽豊

■日本学術振興会科学研究費基盤研究(C)(H31~R4年度)
咳嗽音を用いた新たな呼吸機能評価システムの確立
研究代表者:馬屋原 康高,研究分担者: 辻 敏夫,曽 智,関川 清一

■日本学術振興会科学研究費基盤研究(C)(H31~R4年度)
「血液粘度比」で人工肺不良の原因を検出する:連続評価可能な新指標と臨床応用
研究代表者:岡原重幸,研究分担者:辻 敏夫,曽 智,伊藤 英史,宮本 聡史

#過去の科研費採択情報
2021: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/16808
2020: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/16213
2019: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15647
2018: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/14921
2017: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10916
2016: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10885
2015: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10858
2014: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10833
2013: https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10799

厳しい経済情勢にもかかわらず,これらの研究費によってさまざまな実験装置や研究資材を購入したり,国内/国外の学会に参加することができるのはたいへんありがたいことです.私たちは,これらの研究費の原資が国民の税金で賄われていることを忘れずに,研究費を決して無駄にすることがないよう気を引き締めて研究に取り組んでいく責任があります.そして,これらの研究費に見合った新規性・独創性の高い研究成果を社会に還元するため,高いレベルの学術性と実用性を兼ね備えた研究を推進していきたいと考えています.

第660回 MICCAI2022

2022.07.01

The Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention (MICCAI) Societyは,2004年に設立された医用画像コンピューティングとコンピュータ支援介入の分野における専門組織です.https://en.wikipedia.org/wiki/The_MICCAI_SocietyこのMICCAIが主催するannual MICCAI conferenceは医用画像分野のトップカンファレンスとされており,医用画像処理,医用ロボット,コンピュータ治療支援を取り扱う国際会議として有名です.2022年のThe 25th International Conference on Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention (MICCAI 2022)は9月18~22日にシンガポールのResort World Convention Centreで開催されますが,このカンファレンスに筋電グループの橋本 悠己君,古居 彬先生の論文が採択されました.https://conferences.miccai.org/2022/en/Automated Classification of General Movements in Infants Using Two-stream Spatiotemporal Fusion NetworkYuki Hashimoto*, Akira Furui*, Koji Shimatani, Maura Casadio, Paolo Moretti, Pietro Morasso, and Toshio TsujiThe 25th International Conference on Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention, Resort World Convention Centre, Singapore, September 18th to 22nd, 2022.  (accepted, *Equal contribution)この論文は県立広島大学の島谷 康司先生,イタリア工科大学のピエトロ・モラッソ先生,ジェノバ大学のマウラ・カサディオ先生,ガスリーニ病院のパオロ・モレッティ先生らと共同研究を続けてきた新生児General Movementsに関する研究成果です.MICCAI2022の論文採択率は31%で,世界最高レベルの医用画像研究として認められたことになります.橋本君,古居先生,おめでとうございます!発表もがんばってください!!

第659回 先輩交流アワー

2022.06.24

広島大学同窓会は各学部等の同窓会をまとめた組織で,工学部の卒業生は広島大学工学同窓会に所属することができます.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/dousou/gaiyou/sosiki
https://hiro-kogyokai.com/

この工学同窓会から卒業生を招待し,在学生に企業のことや社会のこと,就職のことなどを先輩から学んでもらおうという取り組みが『先輩交流アワー』です.

2022年6月3日,KATO OMOSHIRO LAB(旧 おもしろラボ)において第8回先輩交流アワーが開催され,生体システム論研究室の卒業生の右田 涼君(2012年度工学部第二類卒業,2014年度大学院工学研究科博士課程前期修了,現在株式会社NTTドコモ所属)が講演を行ってくれました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/eng/news/71344

日時:2022年6月3日(金) 16:45~18:00
講師:右田 涼
株式会社NTTドコモ
マーケティングプラットフォーム推進部
データ戦略マーケティング基盤担当

右田君には「広島大学客員講師」の称号が授与されました.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%A2%E5%93%A1

これまでに生体システム論研究室から多くの卒業生,修了生を社会に送り出しています.みなさんの益々のご活躍をお祈りします.

■学部卒業生
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications/bachelor-theses
■博士課程前期修了生
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications/master-theses
■博士課程後期修了生
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications/ja-doctoral-dissertations
注:2002年度以降のみ掲載

第658回 M2の進路2022

2022.06.17

政府は2022年度(2023年3月)卒業・修了予定者(学部生,修士学生)の就職・採用活動について,従来と同様に以下のように定めています

・広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
・採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降

2022年6月上旬,生体システム論研究室大学院博士課程前期M2の就職活動は,採用選考活動開始日の直後に終了しました.

今年度も新型コロナウィルス感染症による混乱の中での就職活動となりましたが,リモートインターンシップやリモート面接というこれまでに経験したことがないような事態に直面しながら就職活動を続けてきたみなさんは本当にたいへんだったと思います.このような厳しい状況にもかかわらず,しっかりと準備を進め,早い時期に全員の進路が決定しました.

■企業就職:12名
内々定先: エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社,鹿島建設株式会社,株式会社島津製作所,株式会社東芝,BIPROGY株式会社(旧:日本ユニシス株式会社),パナソニックホールディングス株式会社(2名),マツダ株式会社,三菱電機株式会社,ヤフー株式会社(2名),ヤマトシステム開発株式会社

内々定先はいずれも日本を代表する有名企業で,素晴らしいと思います!

研究開発職を希望することが多い理系大学院生の就職活動において,最も評価される点は間違いなく研究室で取り組んできた研究活動です.クラブやサークルでの課外活動やアルバイト経歴などはよほどの特徴がない限り,ほとんど考慮されないと言ってよいでしょう.また,コミュニケーション能力は重視されますが,話の内容が論理的かつ魅力的でしっかりしていれば,少しくらい喋りが下手でも大きな問題ではありません.

採用面接で重視される点は,
・学部生/大学院生のときに,研究に真剣かつ自分の問題として能動的に取り組んできたか,
・独創的で新規性のあるアイデアや研究を進めるうえでの工夫を自発的に発想することができるか,
・研究上の困難を自身の力で乗り越えるだけの情熱と精神的な強さを備えているか,
・研究内容をわかりやすく,おもしろく,元気よく,情熱をもって説明することができるか,
・魅力的な特徴や能力を備えているか
といった点だと思います.

来年度の就職活動に向けてM1の皆さんの活動も少しずつ始まっているようです.M1だけでなくB4の人たちも,いまのうちにM2の先輩たちの体験談を聞いておくといいですね.

M2のみなさん,本当におつかれさまでした.そして,おめでとうございます!!

第657回 はじめての全体ゼミ発表

2022.06.10

2022年6月3日,6月10日に開催したリモート全体ゼミで,4年生10名がはじめて研究発表を行いました.

今年度もCOVID-19の影響で行動制限が続いており,研究室に配属されたばかりの4年生にとっては研究をスタートすることがかなりたいへんだったと思います.さまざまな困難にもかかわらず,全員,はじめての全体ゼミ発表とは思えないほど堂々とした発表態度で素晴らしい発表を行ってくれ,全力で発表準備に取り組んだ成果がよく表れていたと思います.

全体ゼミで発表を行う目的は以下の点にあります.

◆研究発表の組み立て方を学ぶこと
◆プレゼンテーション用スライドの作成法を学ぶこと
◆プレゼンテーションでの話し方を学ぶこと
◆人に説明できるレベルにまで研究テーマの理解度を深めること
◆発表できるレベルまで研究を進めること
◆大勢の前で評価されながら研究発表を行うという経験を積むこと
◆予想していないような質問にも臨機応変に対応できる力を養うこと

今年度もすべての研究発表を録画してTeamsにアップロードしています.この発表動画を見ながら,上記の各項目に対する自身の到達度を自己評価しておくとよいでしょう.次回の発表準備をするときにも非常に役立つと思います.

研究発表において最も大切なことは,研究に対する熱意を示すことと自分の能力の高さをアピールすることだと思います.
いずれ聴衆の前で研究発表を行う機会があると思いますが,大きな声で聴衆に語りかけるような発表態度や充実した研究結果,準備に手間をかけたきれいで分かりやすいスライドなどには発表者の熱意を感じます.また,発表内容や質疑応答の中に深い考察や新しいアイデアが含まれているような人には大きな魅力を感じます.発表評価アンケートのコメントも参考にしながら,次回以降もより高いレベルの発表を目指して少しずつ改善していくとよいでしょう.

卒論中間発表会に向けて,引き続きがんばってください!!

第656回 非侵襲マイクロニューログラフィ法の創出:血管力学モデルから末梢交感神経活動を復元

2022.06.03

本研究室のMEグループを中心に取り組んできた末梢血管剛性に関する研究が日本学術振興会科学研究費補助金(以下,科研費) 基盤研究(A)に採択されました.

科研費は,人文学,社会科学から自然科学までの全ての分野にわたり,基礎から応用までのあらゆる「学術研究」を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」であり,ピアレビューによる審査を経て独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです.
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/03_keikaku/index.html

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2022年度日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究 基盤研究(A)(R4~R8年度)
研究課題名「非侵襲マイクロニューログラフィ法の創出:血管力学モデルから末梢交感神経活動を復元」
■研究代表者:辻 敏夫
■研究分担者:曽 智,古居 彬, 吉野 敦雄,岡田 芳幸,岩瀬 敏, 濱 聖司
■配分額(予定):41,730千円 (間接経費を含む)

■研究概要:
交感神経は自律神経の一つであり,様々な臓器や組織の機能調節に関与している.なかでも,末梢の自律神経活動を司る末梢交感神経には,自律神経機能や脳機能の異常/障害に起因する異常信号が現れることが知られており,その計測・評価は臨床上,極めて重要である.しかしながら,末梢交感神経活動の計測においては,無麻酔下で経皮的に微小針を患者の神経束内に刺入するマイクロニューログラフィ法を用いる必要があり,侵襲的かつ熟練した手技を要するため一般の臨床には普及していない.そこで本研究では,世界で初めて非侵襲かつ簡便に末梢交感神経活動を計測可能な新手法の創出を目指す.まず,(1)研究代表者が独自に開発した末梢血管力学特性計測法と生体信号分散分布確率モデルに基づき,非侵襲計測可能な末梢血管剛性から末梢交感神経電気活動を復元する新理論「非侵襲マイクロニューログラフィ法」を確立する.次に,(2)fMRIによる脳活動と末梢交感神経活動の同時計測を行い,疼痛刺激に対する因果ネットワークモデルを同定する.さらに,(3)交感神経機能の計測・評価が困難とされている脳卒中患者を対象とした自律神経機能検査法を新たに開発する.
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-22H00197/
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現在,MEグループで取り組んでいるいくつかの研究テーマを包括するような研究内容になっています.可能な限りスピードアップして研究を進め,最終的には臨床現場で患者さんの役に立つような革新的な技術を確立したいと思っています.
みなさん,どうぞよろしくお願いします.

第655回 Bsys研究会2022

2022.05.27

生体システム論研究室では,研究分野ごとの研究会を定期的に開催しています.
研究会では,各グループメンバーだけでなく共同研究者の方々を交えてディスカッションを行います.共同研究者は他学部・他大学・病院などの先生方や企業・公的研究機関等の研究者で,その専門分野も電気システム情報分野にとどまらず,医学,脳科学,心理学,保健福祉,生物学など多岐にわたっています.

2022度は主に8つの研究会を開催します.

■筋電義手・バイオリモート研究会
■血管弾性研究会
■COI研究会(末梢血管剛性関連,匂い関連)
■脳波関連研究会
■高次脳機能研究会(生体機能計測関連,脳機能評価関連)
■乳幼児発達研究会
■ゼブラフィッシュ電気生理研究会(旧小型魚類研究会)
■picoleaf研究会(new)

筋電義手・バイオリモート研究会は発足当時のバイオリモート研究会時代から数えて通算83回(筋電義手研究会は53回),血管弾性研究会は75回開催しています.COI研究会(末梢血管剛性関連と匂い関連に分けて開催),脳波関連研究会,高次脳機能研究会,乳幼児発達研究会,ゼブラフィッシュ電気生理研究会は通算回数は不明ですが,ほぼ毎月開催しています.

今年度は,研究テーマ数が増加している高次脳機能研究会を生体機能計測関連,脳機能評価関連の2つに分割し,それぞれ月1回の開催を予定しています.また,脳波関連研究会と乳幼児発達研究会はいくつかの研究テーマを統合し,新たなメンバーで開催することにしました.さらに,村田製作所との共同研究打ち合わせをpicoleaf研究会として再編しました.

上記の研究会だけでなく,他にも研究テーマごとに定期的な研究打ち合わせを行っており,いずれも各分野の専門家の先生方と交流ができ,研究会を通じて学界や社会に関する最新の情報を得ることもできる貴重な機会です.

研究会で発表する際には,研究室外の方にもわかりやすく説得力のあるストーリーを組み立てる必要があり,研究発表の良い訓練になります.4年生のみなさんは最初は緊張すると思いますが,慣れれば必ず落ち着いて発表できるようになります.各分野の専門家の先生方と堂々とディスカッションできるようになれば自分に力がついた証拠であり,そのことが自信につながっていくと思います.

各研究会とも学問領域の境界を超えた学際的な研究に取り組んでおり,産学連携や医工連携活動を通じて有意義な研究成果を世の中に発信していければと考えています.

第654回 全体ゼミ議事録&コラム2022

2022.05.20

生体システム論研究室では,前期/後期の授業期間中,研究室メンバー全員が参加可能なセミナー「全体ゼミ」を毎週行っており,その内容を「広島大学生体システム論研究室:議事録」としてメールマガジン形式で配信しています.

議事録の内容は,研究室のニュースやお知らせ,各研究会の今後の予定,研究発表者の発表内容まとめと質疑応答メモ,発表評価アンケート結果などです.また,議事録冒頭に記載した研究室ニュースや研究トピックスなどに関する話題は,研究室ホームページのコラムやトピックスにアップしています.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news_list/column
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news_list/topics

全体ゼミ議事録やコラム,トピックスから,生体システム論研究室の現在の活動概要を知っていただくことができます.特にコラムは連載開始からすでに650回以上となり,卒業生・修了生の中にもこのコラムを定期的にチェックしている人がたくさんいるようです.

過去のコラムから,参考になりそうないくつかの記事をピックアップしておきます.

■生体システム論研究室って?:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10624
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10625

■サイバネティクスを超えて:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10740
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10741

■論文投稿のすすめ:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10647
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10648
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10649

■魅力的な発表のためのチェックリスト:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10725

■英語論文の作成:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17024

■インパクトファクター,被引用回数,h指数,g指数:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/14596
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/14609
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15203
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15935

■博士学位への道:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15530
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15541
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15571
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15966
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15986

■広島大学大学院リサーチフェローシップ:
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17240

2022年度も全体ゼミ議事録とコラムを通じて,さまざまな研究室情報を発信していければと思います.

第653回 発表評価アンケート2022

2022.05.13

生体システム論研究室では,毎週開催している全体ゼミで学部4年生と大学院博士課程前期学生が研究発表を行っています.

昨年度に引き続き今年度もMicrosoft Teamsによるリモートで全体ゼミを開催しており,毎週金曜日に発表者がプレゼンテーションを行っている様子を研究室内のゼミ室からライブ配信しています.発表者はPowerPointで作成したスライドにより,研究目的,内容,進捗状況,結果,考察などを説明し,聴講者はMicrosoft Formsによりそのプレゼンテーションを評価します.

評価方法はアンケート形式で,Formsの評価項目は以下のとおりです.

1. 視聴覚・情報機器の使い方は効果的でしたか
2. 発表者の声,話し方は聞き取りやすかったですか
3. 理解すべき重要な箇所が強調されるなど,発表の説明はわかりやすかったですか
4. 発表に対する発表者の熱意を感じましたか
5. 研究内容は興味深いものでしたか
6. 前回の発表からの進展に満足しましたか
7. 総合的に判断して,この発表に満足しましたか
8. コメント(自由記述)

1~7の項目に対しては5点,4点,3点,2点,1点の5段階評価としていますので,最高点は35点,最低点は7点です.全体ゼミ終了後,全員のアンケート結果をFormsにより自動集計して,発表者を除く全評価者による評価合計点の平均点を計算し,これを各発表者の総合得点としています.また,総合得点35点を100%,7点を0%として得点率を算出しています.

オール4点が得点率75%ですので,得点率80%以上を優れた発表の目安としています.発表者には総合得点および得点率とともに,記入者名を削除したアンケート結果をフィードバックします.また発表内容をまとめた全体ゼミの議事録の中で,高得点を獲得した優秀発表者を学年ごとに表彰しています.

聴講者による発表評価アンケートを行う目的は大きく分けて以下の2点です.

(1) 発表者に聴講者の感想や意見をフィードバックし,発表内容,研究内容を改善するための手掛かりを与えること
(2) 聴講者に緊張感のある積極的な聴講を促すとともに,的確な質問やコメントを行うための能力を養うこと

全体ゼミでの発表と聴講は自分の力を高めるための絶好の機会であり,はじめは戸惑うと思いますが1年後には必ずその成果が表れます.
発表者は得点率80%以上の優秀発表を目指して,また聴講者は鋭く有意義なコメントができるよう,互いにリスペクトと思いやりの気持ちを忘れることなく真摯に取り組むとよいでしょう.

今年度も優秀発表者表彰を目指してがんばってください!!

第652回 広島大学大学院リサーチフェローシップ

2022.05.06

広島大学では,将来の我が国の科学技術・イノベーション創出の重要な担い手となる博士後期課程進学者をサポートするため,「広島大学大学院リサーチフェローシップ制度」,「広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム」,「広島大学女性科学技術フェローシップ制度」をそれぞれ創設しました.
https://fellowship.hiroshima-u.ac.jp/

■大学院リサーチフェローシップ制度
1学年53名の博士課程後期学生を支援
https://fellowship.hiroshima-u.ac.jp/research/

■創発的次世代研究者育成・支援プログラム
全学年で199名の博士課程後期・博士課程学生を支援
https://fellowship.hiroshima-u.ac.jp/next-gen/

■女性科学技術フェローシップ制度
博士課程前期学生4名,博士課程後期学生4名を支援
https://www.hiroshima-u.ac.jp/diversity_stem/fellowship

広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラムに応募していたD1の城明 舜磨君が,広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム「次世代フェロー」に採用されました.おめでとうございます!

城明 舜磨
広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム 次世代フェロー(2022)

すでにD3の許 自強君は広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム,D2の阪井 浩人君は大学院リサーチフェローシップ制度に採用されています.

また,授業料相当額が支給される広島大学大学院先進理工系科学研究科研究奨学金制度も用意されており,博士課程の学生が安心して研究に集中できる環境が整えられています.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/adse/syougakukin

大学院博士課程への進学を考えている人にとっては非常に良い制度です.博士課程進学希望者は参考にするとよいでしょう.

第651回 COIプログラム:令和4年度加速課題

2022.04.22

生体システム論研究室が参加していた文部科学省平成25年度革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」は2021年度(令和3年度)末に終了しましたが,2022年度(令和4年度)は新たにCOIプログラム令和4年度加速課題「Well-Being 社会に貢献する感性統合解析パッケージDXの社会実装」に取り組むことになりました.

国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)は,COIプログラム令和4年度加速支援(以下,COI加速支援)について募集を行い8件の課題を採択しました.
https://www.jst.go.jp/coi/
https://www.jst.go.jp/coi/etc/kadai_kasoku.pdf

COI加速支援では,COI拠点で得られた成果の最大化に向けた活動を推進し,ウィズ/ポストコロナ時代における社会変革に貢献するとともにCOI拠点の更なる飛躍に資する取組を促進します.広島大学COI拠点からは以下の課題が採択されました.

■COI 加速課題名称:
Well-Being 社会に貢献する感性統合解析パッケージDXの社会実装
・中核機関名:広島大学
・参画機関(大学等):広島市立大学,静岡大学,千葉大学,産業技術総合研究所
・参画機関(企業等):株式会社 OKEIOS,株式会社アドダイス,広島ガス株式会社,株式会社明治
・COI 加速課題代表者(PI):笹岡 貴史(広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター 准教授)
・テーマ3サブリーダ:辻 敏夫(広島大学 大学院先進理工系科学研究科 教授)

研究期間は1年間と短いですが,末梢血管剛性を感性統合解析パッケージに実装・実用化することを目指して研究を進めていければと思います.
どうぞよろしくお願いします.

第650回 生体システム論研究室ホームページ2022

2022.04.15

新メンバーを迎え,研究室ホームページを2022年度バージョンに更新しました.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/

研究室ホームページの最上部と最下部には,以下に示す7つのメニュー項目が用意されています.

■研究室概要:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/about
生体システム論研究室とは
研究室の特色
5つの研究テーマ
研究グループ
研究業績
共同研究
倫理委員会承認済み研究
■メンバー:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/people
教員→各教員の個人ページ
秘書
共同研究者
博士課程後期
博士課程前期
学部生
■研究紹介:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research
最近の代表的な研究の紹介
■研究業績:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications
国際学術雑誌
国内学術雑誌
国際会議
国内講演会
著書(英語)
著書(日本語)
解説
博士学位論文
修士論文
卒業論文
招待講演
受賞
記事
放送
展示会・見学会
特許
所属学会
学会等委員・役員
■プロジェクト:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/project
現在進行中のプロジェクト
過去のプロジェクト
■ニュース:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news
更新履歴
トピックス
コラム
■スケジュール:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/cal

生体システム論研究室ではホームページから研究室に関する情報をできるだけ多く発信したいと考えており,授業期間中に実施している全体ゼミのあとに掲載内容の更新を行っています.昨年度に引き続き研究室ホームページの管理・運営は,D3の許 自強君が担当してくれています.全体ゼミ議事録でお知らせしたニュースのうち公開可能な情報は許君がホームページにアップしてくれ,ホームページ全体が研究室のインターネットアーカイブとして機能しています.

特に,研究業績のページではこれまでに発表した研究論文(学術雑誌論文,国際会議発表論文),解説,記事,book chapterなどの情報を閲覧することが可能で,生体システム論研究室の過去の研究成果の全貌をオンラインで参照することができます.一部の研究論文についてはPDFをダウンロードすることもできますので,研究室に新加入したメンバーにとっては自分の研究テーマに関連する過去の論文を調べるときにたいへん便利です.また,右上にある検索窓を使ってキーワードで検索すれば,そのキーワードを含むすべての研究業績情報を一覧することができます.研究室外の方も自由に閲覧可能で,生体システム論に関連した研究に取り組んでおられる方々の参考になればと思っています.

生体システム論研究室ホームページに関してお気づきの点,修正点等の情報がありましたらぜひお知らせください.今年度もさまざまな研究室情報を発信できればと思っています.

第649回 令和3年度(2021年度)生体システム論研究室卒業式/修了式

2022.04.08

令和3年度(2021年度)生体システム論研究室卒業式/修了式

令和3年度(2021年度)広島大学学位記授与式は,2022年3月23日11時から東広島運動公園にて行われました(式典の様子はYouTubeで配信されました).2021年度の卒業・修了生は,学部2,369人,専攻科16人,大学院1,244人,合計3,629人(うち留学生283人)でした.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/69913

午後からはまず広島大学サタケメモリアルホールにおいて,工学部第二類(電気電子・システム情報系),大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム,大学院工学研究科システムサイバネティクス専攻合同の卒業式/修了式(学位記授与式)が3年ぶりに行われました.その後,広島大学東図書館3Fセミナー室において生体システム論研究室の学位記授与式を行いました.
https://www.media.hiroshima-u.ac.jp/services/pc-room/

生体システム論研究室の学位記授与式では,約100名が入れる大きな部屋で卒業生,修了生に卒業証書/修了証書を手渡すことができ,和やかな雰囲気の卒業式/修了式を行うことができました.コロナ禍でさまざまな行動制限が課されたなかでの式典でしたが,結果的には生涯忘れられないような特別な一日になったのではと思います.

お祝いの花束を贈ってくださった本研究室修了生の鈴木芳代さん(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構),会場の準備を一手に引き受けてくださった野口友枝さん,豊田紀子さんに感謝します.

卒業生,修了生のみなさんがそれぞれの道で活躍されることを祈っています!

第648回 生体システム論研究室,2022年度(令和4年度)のキックオフ!!

2022.04.01

今日から2022年度(令和4年度)が始まり,広島大学生体システム論研究室では2022年度全体ゼミを開始しました.COVID-19によるパンデミック,ロシアによるウクライナ侵攻,燃料や原材料費の高騰に伴うインフレーションなどなど地球規模の危機はまだまだ続きそうですが,私たちは今年度も研究室メンバー全員で力を合わせて研究・教育活動に取り組んでいければと思います.先週の2022年3月23日に令和3年度(2021年度)広島大学学位記授与式(卒業式)が行われ,本研究室から博士課程後期2名,博士課程前期10名,学部9名の計21名が修了/卒業しました.まず,博士課程後期修了生の坂本 一馬君,関塚 良太君には博士(工学)の学位(博士号)が授与されました.二人とも今後は所属企業において,研究開発業務に取り組んでいく予定です.次に博士課程前期修了生には修士(工学)の学位が授与されました.修了生の穴井 怜志君,今岡 恭司君,大川 夢月君,奥村 拓海君,坂川 俊樹君,畑元 雅璃君,原田 祐希君,李 佳琪さん,脇村友紀さんは,就職のためそれぞれの勤務地に旅立ちました.城明 舜磨君は博士課程後期に進学し,博士号取得を目指して研究を続けます.また学部卒業生の上田 怜奈さん,金子 健太郎君,木村 友哉君,小濵 遼平君,福田隼也君,干場 滉太君,松浦 詩乃さん,丸子 紗季さん,森田将大君の9名には学士(工学)の学位が授与されました.森田君は佐賀県庁に就職のため東広島を離れましたが,あとの8名は本学大学院先進理工系科学研究科博士課程前期に進学し,引き続き生体システム論研究室で研究を継続します.研究室を離れた人たちとちょうど入れ替わるようにして,新しいメンバー13名が本研究室に加入しました.まず博士課程前期には齋藤 環希さん(群馬高専専攻科修了),松瀬 亮汰君(宮崎大学卒業)が入学しました.齋藤さんはMEグループ,松瀬君は筋電グループに所属して研究を開始します.そして11名の学部4年生が研究室に配属されました.工学部第二類からは上田 達也君,岡田佑太君,河本 啓吾君,篠原 大晟君,竹田 悠真君,中川 康太君,中西 大樹君,幡 祐輔君,藤田 真稔君,米井 陸也君の10名です.また,医学部医学科から山根 陸斗君が7月下旬まで研究実習を行います.なお,栗田研究室の特任助教を務めておられたSwagata DAS先生は就職のため3月末で広島大学を退職されました.2022年度も素晴らしいメンバーが研究室に集まってくれました.最初はいろいろと戸惑うこともあるかと思いますが,臆することなく何事にも積極的に取り組んでいくとよいでしょう.研究生活を通じて,新しい経験が力となって蓄積されていくことを実感できると思います.各研究グループのみなさん,共同研究者のみなさん,サポートをよろしくお願いします.2022年度の研究室メンバー構成は,教員3名,秘書2名,博士課程後期学生13名,博士課程前期学生23名,工学部生10名,研究生1名,医学研究実習生1名の計53名となりました.今年度もメンバー全員が切磋琢磨しながらオリジナリティに溢れた魅力的な研究に取り組み,少しでも世の中の役に立つような研究成果を発信していければと思っています.本年度もどうぞよろしくお願いします!

第647回 2021年度全体ゼミは今日で終了しました

2022.03.01

2022年2月14日(月)の卒業論文発表会,2月15日(火)の博士論文発表会,2月21日(月)の修士論文発表会という3つの論文発表会が無事に終了し,今日の全体ゼミが2021年度最終回となりました.

博士学位論文発表会では,坂本 一馬君,関塚 良太君がこれまでの研究成果をまとめた博士学位論文の最終発表を行いました.二人とも独創性と新規性に富んだ素晴らしい研究内容で,博士学位にふさわしい充実した発表会でした.博士学位取得,おめでとうございます!

坂本 一馬(主指導教員:辻 敏夫教授)
A Study on Connectome-based Neural Network Models of Motion Generation in Caenorhabditis Elegans
(コネクトームに基づく線虫の運動生成神経回路モデルに関する研究)

関塚 良太(主指導教員:栗田 雄一教授)
Development of Operation Training System and Improvement of Operation Interface for Improving Operators’ Skills of Hydraulic Excavators
(油圧ショベルのオペレータの操作スキル向上を目的とした操作トレーニングシ ステムの開発と操作インターフェースの改善)

卒業論文発表会,修士論文発表会については以下のページをご覧ください.

卒業論文発表会:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17068
修士論文発表会:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/17115

今日で2021年度全体ゼミは終了しましたが,2022年度卒業研究テーマ説明会(オンライン)が3月8日(火)に,研究室公開(対面)が3月9日(水)に予定されています.また,3月15日(火)10:00には新しい4年生が研究室に配属され,新年度に向けての活動を開始します.4月1日(金)からは2022年度の全体ゼミを開始する予定です.

2021年度も長引くCOVID-19の影響で激動の一年となりましたが,研究室としては教育,研究活動は例年通り順調で,就職活動,入試などの学生の活動も充実した年になりました.
研究室メンバーや研究協力者の皆様をはじめ,生体システム論研究室の運営に関わってくださったすべての方々に改めて厚く御礼申し上げます.

2022年度も引き続き,どうぞよろしくお願いします!

第646回 2021年度修士論文発表会

2022.02.21

2021年度広島大学大学院先進理工系科学研究科先進理工系科学専攻電気システム制御プログラム修士論文発表会が2月21日に行われ,本研究室から10名のM2が発表を行いました.全員,非常に魅力的な研究内容で,M2の最後を飾るにふさわしい素晴らしい発表でした.質疑応答の内容もよかったと思います.                                                                  発表者と研究題目は以下のとおりです(発表順).

穴井 怜志
Transient Response Analysis of Peripheral Arterial Stiffness to Electrical and Cold Noxious Stimuli
(電気・寒冷侵害刺激に対する末梢血管剛性の過渡応答解析)

今岡 恭司
An Evaluation Method of Tactile Feeling by Using the Subband Height Map Based on Discrete Wavelet Transform
(離散ウェーブレット変換に基づくSubband Height Mapを用いた触感推定)

大川 夢月
Superimposition of the Predicted Attachment Positions Based on a Dynamic Model of Hydraulic Excavator Represented by a Second-Order Delay System
(二次遅れ系で表現した油圧ショベル動特性モデルに基づくアタッチメント予測位置の重畳)

奥村 拓海
Development of Stair Climbing Training System Using Visual Virtual Reality Display
(視覚VR提示による階段昇降トレーニングシステムの開発)

坂川 俊樹
Autonomic Response Analysis of Peripheral Arterial Stiffness during Transcutaneous Auricular Vagus Nerve Stimulation
(経皮的耳介迷走神経刺激に対する末梢血管剛性の自律神経性応答解析)

城明 舜磨
A Wearable Finger-Tapping Motion Recognition System Using Biodegradable Piezoelectric Film Sensors
(生分解圧電フィルムセンサを用いたウェアラブルな指タップ動作識別システムの開発)

畑元 雅璃
Proposal of Skew Scale Mixture Model of EEG Signals and Its Application to Non-Gaussianity Analysis of Sleep EEG
(脳波信号の歪尺度混合確率モデルの提案と睡眠脳波の非ガウス性解析への応用)

原田 祐希
Pharmacological Effects of Caffeine on the Ventilation in Adult Zebrafish Under Free-swimming Conditions
(自由遊泳条件におけるゼブラフィッシュ成魚に対するカフェインの薬理効果)

李 佳琪
Biomimetic Myoelectric Prosthetic Hand Capable of Voluntary Opening and Closing of Five Fingers
(5指随意開閉動作が可能な生体模倣筋電義手の開発)

脇村 友紀
Unconstrained Body-movement Assessment of Infants Using a Sheet Type Acoustic Sensor
(シート型音響センサを用いた乳児の非拘束体動評価法)

各研究テーマは来年度以降も継続して取り組んでいく予定です.各自,研究内容をもう一度よく整理し,研究室を離れる人は引き継ぎ資料をしっかりまとめておくとよいでしょう.
修論発表会,おつかれさまでした!!

第645回 2021年度卒業論文発表会

2022.02.14

2021年度広島大学工学部第二類電気システム情報プログラム卒業論文発表会が2月14日に行われ,本研究室からは4年生9名が1年間の研究成果を発表しました.

発表者と研究題目は以下のとおりです(発表順).

丸子 紗季
移流拡散方程式に基づくゼブラフィッシュの遊泳運動と呼吸周波数の同時推定

金子 健太郎
快臭に対する主観評価と自律神経活動応答の関係解析

木村 友哉
ハンドル操舵時の脳活動,末梢血管剛性,主観評価の相関解析:fMRI研究

干場 滉太
脳卒中患者の脳損傷部位と運転適性の関係解析

上田 怜奈
ASDリスク評価を目的とした動画計測に基づく新生児自発運動解析

福田 隼也
脳波の尺度混合モデルに基づく快・不快感性の定量評価

小濵 遼平
人工筋を用いた力覚介入による重り保持時の努力感の操作

松浦 詩乃
運動計測に基づく高齢者の身体機能とFIM値の関係の考察

森田 将大
心的回転による認知負荷を軽減するための遠隔操作用レバー操作インタフェースの開発

4年生全員,研究内容もプレゼンテーションも質疑応答もすべて素晴らしく,最高レベルの卒論発表会だったと思います.もちろん,いろいろな課題が残った人もいると思いますので,各自,自分自身の研究内容や質疑応答をよく精査し,プレゼンテーションや研究内容に関する今後の課題を明確にしておくとよいでしょう.次の研究発表の機会にはさらに良い発表ができると思います.

これまで日々指導をしてくださった各グループの先生方や先輩たちに感謝しつつ,自分の研究に自信と誇りを持ち,より高いレベルの卒業論文完成を目指して引き続きがんばってください.

卒論発表会,おつかれさまでした!!

第644回 特許情報更新2022

2022.02.10

特許とは「発明」を保護するための制度で,発明をした者に対して国が特許権という独占権を与えることでその発明を保護すること,さらに出願された発明の技術内容を公開して利用を促進することで産業全体の発展に寄与することを目的としています.

生体システム論研究室では,2000年頃から特許出願を開始しました.特許権を取得するためには,特許庁に特許出願し特許査定されることが必要です.特許査定されると,出願人がその発明についての特許権を取得し,原則として出願日から20年間,当該発明の利用を独占することができます.

2022年2月の時点で,これまでに生体システム論研究室から出願した特許情報を整理,更新しました.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/publications/patents

現時点での特許関連件数は以下の通りです.

特許出願:65件(国内53件,国際12件)
取得特許:39件(国内30件,国際 9件)

今回の更新は以下の5件です.

■以下の特許が登録されました.

53. 脳血流状態判定方法及びその装置
日本国特許出願 2017-030739, 特開2018-134230, 特許第6885541号
岡本 宜久, 竹村 和紘,吉田 敏宏,岸 篤秀,西川 一男,農沢 隆秀,辻 敏夫, 笹岡 貴史,曽 智,山脇 成人
2017年2月22日出願, 2018年8月30日公開, 2021年5月17日登録

■以下の特許が公開されました.

57. 情報処理システム
日本国特許出願 2019-173257, 特開2021-49064
舟根 司, 敦森 洋和, 神鳥 明彦, 小幡 亜希子, 西村 彩子, 小松佑人, 沼田 崇志, 濱 聖司, 辻 敏夫
2019年9月24日出願, 2021年4月1日公開

58. 生体計測システム及び方法
日本国特許出願 特願2019-192398, 特開2021-65393
西村 彩子, 敦森 洋和, 舟根 司, 神鳥 明彦, 中村 泰明,小幡 亜希子, 小松 佑人, 濱 聖司, 辻 敏夫
2019年10月23日出願, 2021年4月30日公開

59. 交感神経活動推定装置・交感神経活動推定方法及びプログラム
日本国特許出願 特願2020-027888, 特開2021-129896
辻 敏夫, 古居 彬, 曽 智, 坂川 俊樹, 笹岡 貴史, 山脇 成人, 吉栖 正生, 佐伯 昇, 中村 隆治, 岡田 芳幸
2020年2月21日出願, 2021年9月9日公開

■以下の特許を出願しました.

65. 測定装置
日本国特許出願 特願2022-8023
辻 敏夫, 古居 彬, 許 自強, 森田 暢謙
2022年1月21日出願

特許の対象となる「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と特許法2条1項に定義されています.今後も「高度な技術的思想の創作」につながるような研究を進めていければと思っています.

第643回 2021年度論文発表会

2022.02.04

2022年もあっと言う間に約1ヶ月が過ぎ,卒業・修了の季節が近づいてきました.

2021年度の卒業論文発表会は2月14日(月)に,修士論文発表会は2月21日(月)に,博士論文発表会は2月15日(火)にそれぞれ開催されることになりました.

■卒業論文発表会:9名発表
場所:Teams
日時:2月14日(月) 10:00-11:30

■修士論文発表会:10名発表
場所:Teams
日時:2月21日(月) 13:00-15:30

■博士論文発表会(公聴会):1名発表
場所:Teams
日時:2月15日(火) 10:00-11:00

卒業論文発表会については学部3年生も聴講可能ですので,研究室配属の参考になると思います.また,生体システム論研究室研究室メンバーは広大アカウントでログインすればすべての発表会を聴講可能ですので,ぜひご参加ください.

発表準備を行う際には,
・研究の意義,目的
・従来研究とその問題点
・自分の研究のセールスポイント(独創性・新規性・有用性):どのような工夫を行ったのか
・研究結果:何ができたのか
・今後の課題
などについて整理し,簡潔に説明できるようまとめておきましょう.
また発表スライドを作成する際には,発表のストーリが分かりやすくかつ魅力的で説得力があるかどうか,グループゼミ等でよく確認しておくとよいでしょう.

学生生活の総決算にふさわしい内容の論文発表会となるよう,ラストスパートでがんばってください!

第642回 2022年度博士課程後期学生フェローシップ

2022.01.28

2022年4月から支援開始予定のフェローシップの募集要項が公開されました.

■創発的次世代研究者育成・支援プログラム
・第634回コラム:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/16941

・募集情報:https://www.hiroshima-u.ac.jp/gcdc_yr/news/68601

■大学院リサーチフェローシップ
・第618回コラム:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/16786

・募集情報
新規:https://www.hiroshima-u.ac.jp/gcdc_yr/news/68594
後任補充:https://www.hiroshima-u.ac.jp/gcdc_yr/news/68605

これらの募集は今後も継続される予定ですので,大学院博士課程後期への進学を考えている人にとっては非常に良い制度だと思います.参考にするとよいでしょう.

第641回 英語論文の作成

2022.01.21

2022年もあっという間に1月下旬となり,修士論文の提出締め切りが近づいています.修士論文の作成時や学術雑誌,国際会議への論文投稿時には,論文を英語で執筆することが必要になります.もちろん,自力で英語論文を執筆する能力を身に着けることが大切なのは言うまでもありませんが,とはいえいきなり英語論文を執筆するのはかなりの困難を伴うと思います.

最近,deep learningに基づく優秀な機械翻訳アプリを手軽に利用することが可能になりました.これらのアプリをうまく利用すれば,結果的に自らの英語能力の向上につながりますし,先生方に英語原稿を提出する前に英文のクオリティをアップすることが可能になります.

すでによく知られているとは思いますが,以下にいくつかのアプリと関連記事を引用しておきます.

■DeepL:科学技術論文に強く,微妙なニュアンスのある翻訳ができるという評価を受けているスタンダードアプリ.有料版も比較的安価に設定されており,また30日間無料(いつでもキャンセル可能)なので,手軽に利用することができそうです.
https://www.deepl.com/ja/translator

・DeepLを使ったPDF自動翻訳プログラムも公開されています.
https://qiita.com/Cartelet/items/9506dfb5776346c570ae?utm_campaign=popular_items&utm_medium=feed&utm_source=popular_items

・DeepLベースのAI添削アプリもあります.
https://english.yunomy.com/

■Google翻訳:よく知られている機械翻訳アプリ.無料です.
https://translate.google.co.jp/?hl=ja

■Google Scholarを利用すれば,特定の言い回しや単語が他の学術論文で使われているかどうかを手軽にチェックすることができます.Googleの検索演算子やワイルドカードを使えばさまざまな検索が可能です.
https://scholar.google.com/

■Grammarly:優れた自動校正アプリとして有名です.MS Wordに埋め込むこともできます.
https://app.grammarly.com/

・以下の記事では,DeepLとGrammarlyを利用した英語論文作成法が紹介されています.
https://eanesth.exblog.jp/240618090/

・「最近ものすごく優秀な修士就活生が増えている」
https://togetter.com/li/1758185

以上をまとめると,

もとの日本語論文の文章作成(自分の研究と流れが似ているような英語論文を参考にしながら執筆&推敲)
⇒DeepLで英文変換
⇒Google翻訳で日本語に戻したときに意味が通じるように元の日本語論文を修正
⇒Grammarlyで校正
⇒専門用語や言い回しをGoogle Scholarでチェック(日本人しか使っていないような言い回しは避け,native speakerが使用しているような言い回しを使う)

というような流れで作業を進めていけば,(自力で英作文するより)容易に英語論文を作成することが可能です.学術雑誌投稿論文についても,研究室内の英語能力の高い人が最終チェックをすれば,高額の英文校正サービスは不要になりそうです.

もちろん,英語化よりも研究内容の新規性/独創性を明確にすること,日本語論文のストーリ/文章構成の完成度が高いことなどがはるかに重要であることは言うまでもありませんが,便利なアプリを上手に,また正しく利用して英語論文の作成を進めるとよいでしょう.

第640回 2022年,今年もよろしくお願いします!

2022.01.14

今日から2022年の全体ゼミを開始しました.

今年も2月下旬まで,博士論文,修士論文,卒業論文の作成と各論文発表会が予定されており,研究室は一年でもっとも忙しい時期を迎えます.
各自,体調に十分に気をつけながら,余裕をもったスケジュールで論文作成や発表準備を進めていくとよいでしょう.国際的なトップジャーナルに掲載されるような魅力にあふれた研究論文の完成を目指して,ラストスパートでがんばってください!!

昨年末からオミクロン株の感染拡大が爆発的に進んでおり,しばらくは収まりそうにありません.しばらくの間,一人一人が感染予防に努めながら,研究・教育活動を継続していければと思っています.きっと今年の後半には,徐々に普通の生活を取り戻せるようになるでしょう.それまでしっかりがんばりましょう.

本年もどうぞよろしくお願いします!

第639回 Happy Xmas 2021

2021.12.24

今年の生体システム論研究室全体ゼミは,12月24日開催の第30回が最後となりました.来週,研究打ち合わせをいくつか予定していますが,2021年の生体システム論研究室の活動はこれで終了です.

今年もCOVID-19の世界的流行は続き,新たなオミクロン株の出現で世界はまだ混乱の真っただ中にあるようです.でも,ジェノバ(イタリア)のピエトロ・モラッソ先生の「this horrible year that, on the other hand, gave us the gift of extra time for reading, thinking and writing」という教えを守り,今年も例年以上の活発さで研究,教育に取り組むことができました.

以下に2021年の生体システム論研究室の研究業績をまとめておきます.

国際学術雑誌論文: 12編(掲載決定を含む.インパクトファクタ合計値48.442)
国際会議論文: 10編
国内学会発表: 14件
著書(分担執筆): 1編
受賞: 10件(学生の各種受賞を含む)
招待講演: 1件
記事: 9件
特許: 登録1件, 公開3件, 出願1件

今年は学生の各種受賞が多かったのが特徴と言えるでしょう.また,世界の一流ジャーナルに積極的に挑戦し,残念ながらインパクトファクタ10以上の雑誌に論文を掲載することはできませんでしたが,12編のSCI論文を発表することができました.生体電気信号と機械学習,末梢血管剛性とブレインサイエンス,神経回路と生物工学など,各研究分野に関する研究成果をバランス良く論文発表することができました.SCI論文12編のインパクトファクタの合計値も高得点を維持することができました.

■過去5年間の年間インパクトファクタ合計値:
2017: 17.371
2018: 28.520
2019: 44.131
2020: 46.312
2021: 48.442

過去3年間のインパクトファクタの合計は138.885点となり,生体工学分野において世界最高レベルの研究業績を達成することができたと思います.このような研究成果をあげることができたのは,研究室スタッフ,学生諸君,多くの共同研究者・研究協力者の皆様をはじめ,本研究室を支えてくださったすべての人たちのおかげです.ここに改めて御礼申し上げます.

COVID19の世界的流行も,来年は緩やかに収束に向かうでしょう.研究室メンバーにとって,また本研究室に関わってくださっているすべてのみなさんにとって,来年が素晴らしい一年になることを祈っています.2022年もどうぞよろしくお願いします.

We wish you all a very merry Christmas and a happy new year!

第638回 Taichi Meets Motor Neuroscience

2021.12.17

ピエトロ・モラッソ先生の新しい著書が出版されました.
https://www.cambridgescholars.com/product/978-1-5275-7464-9

Taichi Meets Motor Neuroscience: An Inspiration for Contemporary Dance and Humanoid Robotics
Pietro Morasso and Martina Morasso
ISBN: 1-5275-7464-4
ISBN13: 978-1-5275-7464-9
#アマゾンでも購入できます
https://www.amazon.co.jp/dp/1527574644

モラッソ先生は人間のリーチング運動時の手先速度がベル型になることを発見した世界的に有名な研究者で,私がジェノバ大学において在外研究を行っていたときの先生です.
https://sites.google.com/site/pietromorasso/
https://scholar.google.co.jp/citations?user=w6CqLWYAAAAJ&hl=ja

マルチナさんはモラッソ先生とプシケ・ジャノーニ(Psiche Giannoni)先生の一人娘で,ドイツを中心に活躍するコンテンポラリーダンスのパフォーマ兼指導者で,choreographerもされています.プシケ先生はイタリアで有名な理学療法士で,理学療法士を育成する学校(the ART Education and Rehabilitation Centre in Genoa)を設立し,長い間,責任者を務めておられました.3人とも私にとってはイタリアの家族のような存在です.

この本は父であるモラッソ先生と娘であるマルチナさんの専門を融合したもので,モラッソ先生にとってもこれまでの長い研究者としての道のりを総括したような内容になっています.

お二人から依頼を受けて,この本の冒頭に紹介文を書かせていただきました.私にとっても感慨深く,またイタリアと日本の間でやりとりしながらの楽しい執筆作業となりました.モラッソ先生とは,引き続きTime Base Generator(TBG)モデルの研究や乳幼児の運動評価などの研究を一緒に進めていきたいと思っています.

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A short commentary on “Taichi meets Motor Neuroscience” by Pietro Morasso and Martina Morasso”
Toshio Tsuji, Hiroshima University, Hiroshima, Japan

This book is the first comprehensive discussion of Taichi and motor neuroscience together, providing inspiration for the future of contemporary dance and humanoid robotics.

The first author, Pietro Morasso, is recognized internationally as a leading scholar and thought leader in the field of motor neuroscience, and has investigated the neural control of movement, sensorimotor learning, rehabilitation engineering, anthropomorphic robotics and biological neural computation for over half a century. Importantly, he discovered the bell-shaped velocity profile in human reaching movements in 1981, stimulating numerous subsequent studies on the modeling of human movements.

The second author, Martina Morasso, is a choreographer and ballet master, teacher of performing arts, and university lecturer. She is the daughter of Pietro Morasso and Psiche Giannoni, a well-known Italian physiotherapist and the former director of the ART Rehabilitation and Educational Centre of Genoa, a school for post-graduate physiotherapists and medical doctors. Martina Morasso is well-versed in the performing arts of eastern cultures, including the Japanese arts of Butoh, Bunraku, and Noh.

As the starting point of this story, Martina Morasso adopted Taichi Chuan as a practice method around two decades ago. She later began to apply the practice for structuring choreographies and performances, in addition to training for herself and other professional dancers. Pietro Morasso told me that he initially considered this interest to be a fascination with a kind of “exotic flavor”, considering the popularity of eastern culture in many western countries, including yoga, martial arts, acupuncture, reiki, and sushi. Later, he began to understand that Taichi is a serious and deep practice if taken seriously, relating to a foundational pillar of many eastern cultures.

The book consists of six parts, beginning with Prolegomenon. Prolegomenon provides an overview to the background of the book from a philosophical point of view. The Equilibrium chapter discusses still stances (Ding Shi) and transitions in Taichi Chuan, comparing them with equilibrium control in motor neuroscience. Next, the Motion chapter explores the simple transition of equilibrium to the passive motion paradigm, including humanoid robotics and human-robot symbiosis. The Dance chapter proposes that Taichi Chuan has played a crucial role in the rejuvenation and innovation of contemporary and modern dance, and the Health chapter describes wide-ranging evidence that the practices of Taichi and Qigong are beneficial for general wellness in elderly populations, and for a variety of specific pathological conditions of the body, and discusses the basic “purification” of the mind-body linkage through increased awareness of the body. Finally, the Conclusion chapter summarizes five topics surrounding the Taijitu (the graphic symbol of Taiji) in which the authors investigate possible east-west points of contact and cross-inspiration: philosophy, neuroscience, robotics, dance, and health. The five elements may be a modern version of Yin-Yang Wu-Xing Thought, and the authors conclude that the choice of Taiji may provide a master key to open five different doors related to crucial aspects of culture.

Interestingly, the authors describe an analogy between the Taoistic “road” and the philosophical “river” evoked in the pánta rheî aphorism attributed to Heraclitus in Prolegomenon. Ancient Greek philosophers reached the limits of dualistic thinking, and were placed in a situation similar to postmodernism. Heraclitus’ approach to transcending dichotomy can be linked to the concept of “déconstruction” against logocentrism in Derridean thought. Taijitu does not mean dualism of yin and yang. Rather, its visual representation looks like a combination of black and white magatama (comma-shaped beads). In China, the representation of this concept is likened to the shape of two fish, called yin-yang fish. The black fish represents yin, and means falling on the right side, whereas white represents yang, and means rising on the left. The expansion of the area from the fish tail to the fish head shows how each spirit is born and gradually becomes more active, and eventually the yin tries to swallow the yang and the yang tries to swallow the yin. The yin then changes into the yang, and the yang changes into the yin. A fish eye-like white dot in the center of the yin indicates the yang in the yin, indicating that, no matter how strong the yin becomes, there is a yang in the yin, which then turns into the yang. The central point of the yang also indicates the yin in the yang; no matter how strong the yang becomes, there is a yin in the yang, which later turns into the yin. The Taijitu indicates that this process is infinitely repeated. This concept of black and white fish may have useful future-oriented implications for race-related conflict occurring in the modern world. Black and white fish are intertwined with each other to build a perfect circle. There is no dichotomy, and the two fish behave like the front and back of the Mobius strip.

Tao is always present, and is called “do” in Japan. Almost all Japanese martial arts, including ju-do, ken-do, and karate-do, as well as performing arts, such as sa-do (tea ceremony), ka-do (flower arrangement), and sho-do (calligraphy) include “do”. Taichi involves different properties of yin and yang while balancing. This book will prompt the reader to consider that there is always Taichi in their body and mind, which can potentially affect human movement, dance and health.
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第637回 精神的価値が成長する感性イノベーション拠点公開シンポジウム  ~ 最新脳科学による感性の可視化への挑戦 ~

2021.12.10

生体システム論研究室は,文部科学省平成25年度革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」に参加しています.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/10815

2021年12月8日(水),東京国際フォーラムにおいて9年間の事業成果を発信するための公開シンポジウムが開催されました.
https://kansei-dx.jp/symposium/

生体システム論研究室からは,6件の研究発表を行いました.
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脳波の尺度混合確率モデルに基づく快・不快感性の定量評価
福田 隼也,古居 彬,熊谷 遼,畑元 雅璃,水落 亮平,町澤 まろ,辻 敏夫
内容:独立成分の頭皮上電位分布を入力としたGMMによるクラスタリングをした 後,各クラスタにおいて分散と非ガウス性(分散のゆらぎ)に快と不快の間で有 意差があるか検定を行った.

電気侵害刺激に対する指尖・耳血管剛性の関係解析
坂川 俊樹,許 自強,曽 智,古居 彬,平野 陽豊,笹岡 貴史,吉 野 敦雄, 山脇 成人,辻 敏夫
内容:被験者に電気的な侵害刺激を与え,指尖血管剛性と耳垂血管剛性を同時計 測し,イベントごとにこれらの間の関係性について相関解析を行った.

電気侵害刺激に対する末梢血管剛性の過渡応答解析
穴井 怜志,許 自強,曽 智,古居 彬,平野 陽豊,笹岡 貴史,吉 野 敦雄, 山脇 成人,辻 敏夫
内容:伝達関数モデルを用いて電気的な侵害刺激に対する末梢血管剛性と発汗波 の過渡応答を解析した.

疼痛予期時の末梢血管剛性と脳活動の関係解析:fMRI研究
黒田 悠太,曽 智,古居 彬,平野 陽豊,笹岡 貴史,吉野 敦雄,山脇 成人,辻 敏夫
内容:fMRI環境下で同時計測された電気刺激に対する末梢血管剛性の応答と脳活 動について,疼痛予期時(刺激前)に着目して相関解析を行い,末梢血管剛性が 疼痛や予期に関する脳領野の活動を反映するか検証した.

不快臭刺激に対する末梢血管剛性と主観評価の関係解析
陳 崧志,曽 智,笹岡 貴史,峯松 優,百瀬 陽,松井 恵子,道田 奈々江,西川 一男,農澤 隆秀,辻 敏夫
内容:不快臭刺激に対する末梢血管剛性の応答とRusselの円環モデルに基づいて 計測した主観評価について線形混合モデルを用いた関係解析を行った.

不快臭刺激に対する末梢血管剛性と脳活動の関係解析:fMRI研究
曽 智,松下 虎弥太,陳 崧志,笹岡 貴史,峯松 優,百瀬 陽,松井 恵子,道田 奈々江,西川 一男,農澤 隆秀,辻 敏夫
内容:fMRI環境下計測した不快臭刺激に対する末梢血管剛性と脳活動の応答につ いて相関解析を行い,末梢血管剛性が匂い関連領野の活動を反映するか検証した.
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感性イノベーション拠点は最終年度となりますが,自動車操縦や疼痛刺激,匂い刺激に伴う脳活動,末梢血管剛性,主観評価の同時計測と相関解析を加速し,脳科学に基づく新たな感性工学「感性ブレイン工学」の確立に向けて引き続き研究を進めていければと思います.

第636回 ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ (VinE)

2021.12.03

ヴルカヌスまたはウルカヌス(Vulcanus)は古代ローマの「火の神」,「鍛冶屋の神」で,火山を意味する英語のvolcanoやフランス語のvolcanの語源です.「ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ (VinE)」は一般財団法人 日欧産業協力センターが実施している日本の理工系学生を対象とした一年間の奨学金付プログラムで,「鉄は熱いうちに打て」という格言に従って将来の日欧関係を担う若者を育成するため1996年に創設されました.欧州での4ヶ月間の語学研修と8ヶ月間の欧州企業におけるインターンシップからなっています.
https://www.eu-japan.eu/ja/VIE-outline

本研究室B4の上田 怜奈さん(筋電グループ)が2022年度派遣生に採用されました.おめでとうございます!!

上田 怜奈
「ヴルカヌス・イン・ヨーロッパ (VinE)」2022年度派遣生
https://www.eu-japan.eu/ja/training-young-scientists-engineers

上田さんは,ドイツの企業で生体認証システムの応用に関する研究開発に携わる予定です.ヨーロッパでの1年間は,日本では絶対に得られない貴重な経験になると思います.くれぐれも気をつけながらいろいろなことにチャレンジしてくるとよいでしょう.

第635回 M1修士論文中間発表会

2021.11.26

2021年11月12日,19日,26日の3日間,M1の修士論文中間発表会を行いました.

2020年度に設置された広島大学大学院先進理工系科学研究科では,M1の修士論文中間発表が義務付けられています.中間発表の目的は,入学後の早い時期に研究のゴールを明確にするとともに,自分の研究の意義,特徴,新規性,独創性などをわかりやすく説明できるようにすることにあり,M1にとっては修士研究を進めていくうえでのマイルストーンとなります.また,今後の就職活動に向けて,自分の研究のセールスポイントを整理する絶好の機会にもなると思います.

今年度は,池田 開君,岡田 航介君,兼折 美帆さん,金本 拓馬君,楠 崚斗君,熊谷 遼君,黒田 悠太君,立原 蒼生君,玉井 太一君,陳 崧志君,橋本 悠己君,増永 准也君の12名が発表を行いました.全員,素晴らしい研究発表で,非常にレベルの高いM1修士論文中間発表会となりました.M1のみなさんは今後の課題をよく整理し,一つずつ課題を解決していくとよいでしょう.

M1のみなさん,おつかれさまでした!

第634回 広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム

2021.11.19

科学技術振興機構は2021年度から「次世代研究者挑戦的研究プログラム」を開始しました.この事業は,大学の研究科や研究室などの既存の枠組みを越えて優秀な博士後期課程学生の選抜等を行う事業統括を選定し,優秀な博士後期課程学生に対する様々な支援を実施・展開する大学の取組を国として支援するものです.
https://www.jst.go.jp/jisedai/outline/index.html

広島大学は実施機関として採択され,2021年10月に「広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム」を創設しました.これは,博士課程後期学生を「次世代フェロー」として採用し,安心して研究に集中できる環境を整え,将来の日本の科学技術・イノベーションの基盤となり国際社会の持続的な発展に貢献できる博士人材の育成を推進することを目的としています.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/gcdc_yr/nextgen

本研究室D3の許 自強君(MEグループ)が,広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラムの「次世代フェロー」に採用されました.許君は次世代フェローの中でも「上位フェロー」に選ばれており,生活費相当の研究専念支援金として月額15万円,さらに年額60万円以内(2021年度は30万円以内)の研究費が配分されます.許君,おめでとうございます!

許 自強
広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラム 次世代フェロー(上位フェロー)

広島大学創発的次世代研究者育成・支援プログラムは,本研究室D1の阪井 浩人君(筋電グループ)が採用された広島大学大学院リサーチフェローとともに,来年度以降も継続される予定です.募集要項は以下のページに公開されていますので,来年度以降に大学院博士課程後期に入学予定の人は応募を検討するとよいでしょう.

https://www.hiroshima-u.ac.jp/gcdc_yr/news/66517
https://www.hiroshima-u.ac.jp/gcdc_yr/news/63516

第633回 2021年度広島大学大学院先進理工系科学研究科電気システム制御プログラム 修士論文中間発表会

2021.11.12

11月9日(火)に電気システム制御プログラム第1期生の修士論文中間発表会が行われ,生体システム論研究室からは10名のM2が研究発表を行いました.

今年度もコロナ禍でMicrosoft Teamsによるリモート開催となりましたが,全員,非常に魅力的な研究発表で,充実した修論中間発表会となりました.全体ゼミでの発表練習から発表内容が大きく改善した人が多く,修士論文全体のストーリの整理という意味でも有意義な中間発表会になりました.また,質疑応答に関しても的確な回答が行えており,堂々とした発表態度もよかったと思います.

研究の進捗状況はそれぞれで異なりますが,今回の予稿・発表スライドの作成作業を通じて自分の修論の完成形をはっきりイメージすることができたのではと思います.今後は,修士論文の早期完成を目指して,以下の点を改善していくとよいでしょう.

(1) 新規性・独創性を明確にし,従来研究との差異を強調するような工夫を強化する
(2) 論文のストーリを明確にし,必要に応じて従来研究のサーベイを追加する
(3) 実験やシミュレーションを追加して研究の有用性をさらに明確にし,従来研究との比較結果を示す
(4) 残された課題を箇条書きにし,具体的に解決策を検討する

早いもので2021年も残すところあと約50日となりました.体調に十分に気をつけながらラストスパートでがんばってください.

修論中間発表会,おつかれさまでした!

第632回 広島大学の名講義2021

2021.11.02

広島大学工学部では,各学期の終了時に受講生に対して授業改善アンケートを実施しています.2008年度後期から授業改善アンケートに「この講義を広島大学の名講義として推薦しますか」という項目が設けられ,回答結果から毎期上位10科目程度が『広島大学の名講義』として選出されウェブサイトで公表されています(ただし,演習や実習,受講者の少ない講義は除く).
https://www.hiroshima-u.ac.jp/eng/faculty/f_education/f_lecture

先日,2021年度前期のアンケート結果が公表され,「生体電気工学」が「広島大学の名講義」として選出されました(工学部全体で第2位).
https://www.hiroshima-u.ac.jp/eng/faculty/f_education/s_lecture2019_1

以下に過去の受賞歴をまとめておきます.
今後も研究や学問に対するモチベーションを高めるような講義を目指していければと思います.

■広島大学の名講義(工学部)

2009年度前期:回路理論II(辻 敏夫)
(2010年度以降,「回路理論II」は担当者変更)
2010年度前期:人間工学(辻 敏夫)
(2011年度以降,「人間工学」は「生体システム工学」に名称変更)
2011年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
2012年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
(2013年度前期の「生体システム工学」は開講せず)
2014年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
2015年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
2016年度前期:生体システム工学(辻 敏夫)
(2017年度以降,「生体システム工学」は「生体電気工学」に名称変更)
2018年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)
2019年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)
(2020年度前期はコロナ禍で中止)
2021年度前期:生体電気工学(辻 敏夫)

第631回 広島大学オンラインオープンキャンパス2021

2021.10.29

広島大学ではコロナ禍の状況を踏まえ,2021年度もオンラインでオープンキャンパスを開催しました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/oc/online

工学部のページでは,学部全体の紹介や類紹介,研究室紹介などが公開されました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/nyushi/oc/online/syoukai/kougaku

生体システム論研究室の紹介は曽智先生が担当し,YouTubeにビデオがアップされました.
https://www.youtube.com/watch?v=OMqyZXwvG6Q

来年度こそ,通常の対面式オープンラボに戻れるといいですね.
曽先生,関係者のみなさん,ごくろうさまでした!

第630回 博士論文発表会(公聴会)

2021.10.22

8月頃からD3の坂本 一馬君(感性ブレイングループ社会人Dr,ソニー)の博士学位審査が始まっています.先日行われた博士論文作成着手審査と予備審査に合格し,現在,本審査に進んでいます.博士学位論文審査会(公聴会)は以下の予定で開催します.

■博士論文発表会(公聴会)
氏名:坂本 一馬
学位論文題名:A Study on Connectome-based Neural Network Models of Motion Generation in Caenorhabditis elegans
(コネクトームに基づく線虫の運動生成神経回路モデルに関する研究)
日時:2021年10月25日(月) 13:30-14:30
場所:Teams「生体システム論研究室-teams」(「博士論文公聴会」チャネル)

坂本君の論文はこの数年間の研究成果をまとめたもので,素晴らしい内容の学位論文です.公聴会は一般公開しており,どなたでも聴講可能ですので興味のある方はぜひご参加ください.

■関連コラム:
第539回 博士学位への道 (その1)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15530
第540回 博士学位への道 (その2)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15541
第541回 博士学位への道 (その3)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15571
第566回 博士学位への道 (その4)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15966
第567回 博士学位への道 (その5)
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/news/15986

第629回 卒業アルバム用写真撮影2021

2021.10.15

2021年10月8日に卒業アルバム用の写真撮影を行いました.2022年3月発行予定の広島大学卒業アルバムには,研究室の集合写真,個人写真などが掲載される予定です.

卒業/修了の季節が近づいてきたことを感じさせる撮影会でした.幹事を務めてくれたB4の福田 隼也君,ごくろうさまでした!
#今年度は残念ながら,「研究室紹介」のコーナーは割愛されるようですので,以下に記載しておきます.

◆研究室紹介:
生体システム論研究室
進化のプロセスを通じて自然界に育まれた生体には,現在の工学技術では実現できないような極めて巧みで高度な生体機能が備わっています.生体システム論研究室では,生体機能の秘密に迫るというサイエンティストの目と人間の役に立つ機械を開発するというエンジニアの目という2つの目で,生体機能の特徴にもとづく新たなシステムやアルゴリズムの開発に取り組んでいます.

◆研究室の歴史:
生体システム論研究室は,辻 敏夫教授が2002年4月1日に着任してその活動を実質的に開始し,現在は辻 敏夫教授,栗田 雄一教授,曽 智助教,古居 彬助教(情報科学プログラム所属)の4名の教員により運営されています.2021年度の研究室メンバーは教員5名(特任助教1名含む),研究員1名,秘書2名,博士課程後期15名,博士課程前期25名,学部4年生9名,研究生1名,医学研究実習生2名の計60名で,2020年度までの学部卒業生は181名,博士課程前期修了生は174名,博士後期修了生は30名,博士学位取得者は35名に上ります.
研究室ホームページ:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/

第628回 古居先生のお祝いセレモニーを行いました

2021.10.08

古居 彬先生が10月1日付で,広島大学大学院先進理工系科学研究科の情報科学プログラム(情報科学部担当)にテニュアトラック助教として採用され,研究室を新たに立ち上げることになりました.このテニュアトラック助教のポストは,5年後の審査に合格すれば准教授への昇進が約束されています.これまでの育成助教のポストと比べて,非常に大きなステップアップとなりました.

また,9月15日の朝には第1子となる赤ちゃんが生まれました.女の子で,紀穂(きほ)ちゃんと命名されました.コロナ禍で非常にたいへんだったと思いますが,無事に誕生し本当によかったと思います!おめでとうございます!!

2つのお祝いを兼ねて,2021年10月1日の全体ゼミでお祝いのセレモニーを行いました.
古居先生,おめでとうございます!今後,益々のご活躍を期待しています!!

第627回 2021年度後期全体ゼミを開始しました

2021.10.01

7月30日の第17回全体ゼミ(前期最終回)から約2カ月が過ぎ,10月1日から2021年度後期全体ゼミを開始しました.
この間,リモートオープンキャンパス,大学院入試,各種研究会,インターンシップなどいろいろな行事がありましたが,みなさん,有意義な夏休みを過ごせたでしょうか.

9月17日には令和3年度広島大学秋季学位記授与式が広島大学サタケメモリアルホールで行われ,博士課程前期のPriyanka Ramasamyさん,Velika Wongchadakulさんに修士(工学)の学位が授与されました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/66571
Priyankaさんは,10月1日から博士課程後期に進学し,引き続き栗田先生のもとで研究活動を続けます.Velikaさんは就職のため東広島を離れました.
また,医学部医学科4年の杉森 智之君,玉置 俊介君の2名は生体システム論研究室での「医学研究実習」を無事に終了し,医学部に戻りました.
全員,それぞれの道で活躍されることを祈っています.

一方,永井 政樹さん(コベルコ建機共同研究講座助教)が博士課程後期に,Enrique Sastre Calderon君,Gunarajulu Renganatha君の2名が博士課程前期(グローバル人財育成プログラム)にそれぞれ入学し,ヒューマンモデリンググループに所属し研究活動を開始します.

また,2022年度大学院先進理工系科学研究科入学試験が行われ,博士課程前期4月入学生として10名(推薦入試7名,一般入試3名)が合格しました.研究室内の受験者は全員合格で,外部からは2名が合格しました.みなさん,おめでとうございます!

さらに10月1日付で,助教の古居 彬先生が広島大学大学院先進理工系科学研究科の情報科学プログラム(情報科学部担当)にテニュアトラック助教として採用され,新たに研究室を立ち上げることになりました.生体システム論研究室とは共同研究という形で,これまでと同様に研究活動を継続していく予定です.

これから年末に向けて,修論中間発表会や各種学会・研究会での研究発表等,さまざまな行事が予定されています.
「広島大学生体システム論研究室ならでは」というオリジナリティに溢れた魅力的な研究成果を目指し,全員で協力しながら研究活動を継続していければと思います.

では,2021年度後期もよろしくお願いします!!

第626回 2021年度前期全体ゼミは終了しました

2021.07.30

リモートで開催した卒論中間発表会,修論中間発表会も無事に終了し,2021年度前期全体ゼミは今日で終了しました.

今年もCOVID-19によるパンデミックの影響で,例年とは大きく異なる環境での全体ゼミとなりました.研究室に出入りできない期間も長く,学生のみなさんはたいへんだったと思いますが,M2の就職活動やB4の研究スタートアップ,前期の授業や研究会などもほぼ例年通りに行うことができ,研究面では実りの多い2021年度前期になりました.

これから夏休み期間に入りますが,2021年度の広島大学オープンキャンパスは8月16日(月)から8月22日(日)に「現地」と「オンライン」のハイブリッドで開催開催されることになりました.
https://www.hiroshima-u.ac.jp/nyushi/news/64552
残念ながら恒例のオープンラボは今年度も中止になり,昨年同様,ビデオによる研究室公開を行う予定です.

このあと8月5日まで第2タームの授業は続きますが,全体ゼミは9月末まで夏休みに入ります.夏休み期間中は各自の状況に合わせて,それぞれ有意義な時間を過ごすとよいでしょう.
大学院博士課程入学試験を受験予定のみなさんは,8月26日,27日の大学院入試に向けてしっかりがんばってください!健闘を祈ります.

ではみなさん,COVID-19に気をつけながら良い夏休みをお過ごしください!

第625回 【研究紹介】末梢血管剛性は痛み関連領野の脳活動と主観疼痛強度に正相関する

2021.07.16

生体システム論研究室では,ホームページの「研究紹介」というページで最近の研究トピックスの紹介をおこなっています.
https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research

MEグループでは末梢血管剛性による新しい交感神経活動評価法の研究に取り組んでいますが,Scientific Reportsに掲載された論文の内容を「研究紹介」ページにアップしました.この論文は,MEグループOBの有國 文也君(2016年度修了),隅山 慎君(2018年度修了),秋吉 駿君(2020年度修了)の研究内容をまとめたもです.MEグループのみなさん,おめでとうございます!

日本語:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research/medical-engineering-group/16632
英語:https://bsys.hiroshima-u.ac.jp/research/en-medical-engineering-group/16635

<論文内容>
過去数十年にわたり,数多くのPETやfMRI研究で痛覚に関連する脳活動が計測され,pain matrixという疼痛刺激に対して特異的に応答する脳ネットワークが発見されました.本研究では,22人の被験者に対して4段階の痛み刺激を与え,fMRI環境下で脳活動,生体信号(連続血圧,指尖容積脈波,心電位),および,主観評価を計測しました.そして,生体信号から末梢交感神経活動の指標である指尖の末梢血管剛性βartを求め,脳活動とβartが共変する脳領域をパラメトリックモジュレーション解析により同定しました.その結果,pain matrixに含まれる外側・内側前頭前野と腹側・背側前帯状皮質はβartと有意に相関する活動を示すことが明らかになりました.また,βartと刺激強度の間にはr = 0.44 (p < 0.001),βartと疼痛強度の主観評価の間にはr = 0.43 (p < 0.001)という中程度の有意な相関があることを発見しました.これらの結果は,末梢血管剛性により疼痛を客観評価できる可能性を示しています.

<関連文献情報>
Peripheral Arterial Stiffness During Electrocutaneous Stimulation is Positively Correlated with Pain-related Brain Activity and Subjective Pain Intensity: An fMRI Study
Toshio Tsuji, Fumiya Arikuni, Takafumi Sasaoka, Shin Suyama, Takashi Akiyoshi, Zu Soh, Harutoyo Hirano, Ryuji Nakamura, Noboru Saeki, Masashi Kawamoto, Masao Yoshizumi, Atsuo Yoshino, and Shigeto Yamawaki
Scientific Reports, volume 11, Article number: 4425, doi.org/10.1038/s41598-021-83833-6, Published online: 24 February 2021. (SCI, IF=3.998)