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ITが導く医の進化論

2012年9月6日の日経産業新聞に,筋電グループが中心となって開発しているバーチャル義手トレーニングシステムとバイオリモートが紹介されました.

以下に日経産業新聞の記事の内容を紹介します.
必要とされている方々にバーチャル義手トレーニングシステムやバイオリモートをご利用いただけるよう,実用化研究に取り組んでいければと思います.


生体電気信号を活用して動かす電動義手や義足は1960年代に実用化された。技術革新によって機能は年々、高度化している。現在はドイツのオットーボック、英タッチ・バイオニクスなどの製品が世界で先行する。日本ではナブテスコが空圧や油圧、電子制御などを組み合わせた次世代型義足ハイブリッドニーを販売している。
 ハイブリッドニーの場合、健康保険などの適用となるため、自己負担は数十万円。依然、患者の負担は大きいが、ビジネスの観点から見ると国内だけでは需要が限られ、事業が成り立ちにくい。年内にも筋電義手に参入する電気通信大学発ベンチャー、メルティンMMIは日本にとどまらず、海外展開も進める。
 アジア、アフリカなど紛争地域では義手・義足を必要としている人が比較的多い。ただし、途上国が多く、国の援助があったとしても購買力に制限がある。先端技術を盛り込みつつ、価格を引き下げることが電動で動く義肢では課題だった。
 メルティンの筋電義手は電通大の横井浩史教授の基本コンセプトを基に、司機工エンジニアリング(札幌市、清野栄司社長)とクラフトワークス(東京・大田、伊藤寿美夫社長)が実機を設計・製作した。市販品を買うと1個10万円ほどと高価な筋電センサーは自主開発する一方、モーターやワイヤは無線操縦用の安価な汎用品を活用するなど工夫をしている。
 サイバーダインの山海嘉之社長は、2014年に発売を目指す電動の義足、サイバ二ックレッグの主要な市場は米国になると考えている。戦地で地雷を踏むなどして脚を失った若者が少なくないからだ。日本と米国でほぼ同時の発売を目指す。従来品より大幅に安い価格で売り出す。
 広島大学の辻敏夫教授は、80年代から国内でいち早く筋電義手の研究に乗り出した研究者の一人だ。筋電義手を使用する人が操作を練習するためのソフトウエア開発などを手掛けている。
 練習する人は筋電センサーのみを腕に装着。ロボットハンドは装着しないので、義手を購入する前でも練習ができる。生体信号をコンピューターに送るとコンピューター内の仮想の筋電義手が動く。仮想義手をうまく動かして、カゴの中のボールを別のカゴヘと素早く正確に移す。この操作をゲーム感覚で何度も繰り返すことで、ロボットハンドをつけたときに早く操作に慣れるという。
 腕からの生体電気信号を活用すれば、マウスを動かしてコンピューターを操作したり、さまざまな家電のリモコン操作をすることもできる。辻教授は、そのための専用装置「バイオリモート」の開発にも取り組んできた。「バイオリモートを家電に取り付けるための支援制度の充実が普及のカギ。体に障害を持つ在宅療養患者や高齢者の自立支援にも役立つ」と辻教授は期待している。
(2012年9月6日 日経産業新聞)


2012/10/25